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【日本一周 京都・滋賀編33】 帰京


・メンバー

明石、尾道

・”””ニトリ”””   筆者:明石


 バスの出発する南草津駅まで、またもや深夜の国道沿いを歩いていった。KANA-BOON の「さくらのうた」を頭の中に流しながら惰性で歩いていると、突如として巨大なニトリの看板が現れた。すると、尾道が巨大な文字に対しての恐怖感を蕩々と語り出した。


 彼の話を聞くと、たしかに、深夜に身一つで対峙する巨大文字には、慄然とさせるなにかがあるように思えてくる。尾道いわく、特にニトリののっぺりとした無機質な字体は、恐怖心を増幅させるのだという。


 人間がつくったものでありながら、人間味を感じさせない異質で無表情な物体。残念ながら尾道の感受する恐れのすべてを解することはできなかったけれど、新たな感覚を認知することができて楽しかった。


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 にしても、こういった独自の感性だとか傾向を持っている人はずるい。一度こんな話をされると、これからニトリの看板を見るたびに薄く尾道を思い出してしまう。尾道が彼女じゃなくてよかった。


 南草津駅へ着いたが、まだバスの来る気配はない。寒空の下、来し方を想う。そんなに長い旅ではなかったけど、美術館で衝撃を受けたり、沖島に上陸したり、経験したことのない値段の昼食を食べたり、なかなか濃い3日だったなぁと、冬はつい感傷的になってしまう。はやく夏にならないものか。


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 やがてバスがやってきて、三種の神器によって眠りの海に沈んでいった。


 三種の神器については、、、



・ブルーピリオドでいうところの青い朝  筆者:明石


 朝7時、バスタ新宿着。それぞれの職場へと黙々と歩く人波を尻目に(この立場が有限であることを噛みしめながら)、なんとなく近くのスタバに入った。


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グッドなモーニング


 そこで少量ながらも洗練された朝食と、甘くて美味しい飲み物を食んだ。深夜バスで体力を回復した僕は上野の東博と科博行きを心に決め、尾道も誘ってみたが断固として断られた。


 許された朝だけに存在するぽーっとした空気に浸ったのち、「そろそろ行こっか」とおもい腰を上げた。池袋で山手線から吐きだされた尾道に手をふり、僕は単身上野へ向かった。


・おつかれさま  尾道


 出発の時間が来た。再び、先の記事に記した寂寥を抱きつつ、国道1号線を黙々と歩き続ける。


 30分ほど経ち、ようやくバスの出発地南草津駅に到着した。ここに来てようやく旅の終わりを確信し、同時に安堵も湧き上がる。今回の旅は、できるだけ多く寺社仏閣を周ろうとしたため、今までに比べ、タイトな移動が続いた。


 毎度、旅の出発に先んじて、交通ダイヤまで洗いざらい調べ上げた綿密な旅程を立てているが、今回に関してはそのタイトさゆえ、早々に計画に狂いが生じると覚悟していた。


 ただここに来て全体を振り返ってみると、行きたい箇所は全部押さえたうえに、美術館にも行ったわけだ。旅の経験に比例して、行動に機敏さと柔軟さが増しているように感じる。


帰りのバス


 何事においても、成長というものは、自分より先に他人に気づかれるものだと思う。傍から見たほうが、ビフォー/アフターがはっきりしているものだ。


 自身の成長を自覚できるということは、もうだいぶ成長を遂げているのかもしれない。なんて都合の良いことを考えつつバスに乗り込むのだった。


 疲労のあまりストンと眠りに落ち、車内アナウンスで起こされるころには、馴染みある新宿の街並みが車窓に広がっていた。急いでコンタクトレンズを付けると、景色はくっきりと立ち上がり、視界が情報で飽和した。東京は広告が多すぎて嫌になる。


 バスから降り、南口のスタバで朝食でも摂ろうか、と歩き出したその時、偶然にも以前から気になっていたSuicaペンギン像との邂逅を果たし、最後にほっこりできた。




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