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『溶鉄のマルフーシャ』黙って労働、笑顔で納税

「おめでとうございます。本日より給与から介護保険料を控除させていただきます。国家サービスの為に必要な税です。よく働きよく税を納めましょう」


『溶鉄のマルフーシャ』をクリアしました。

戦時中の国で国境の門を守る衛兵となり、迫りくる敵から門を守るゲームです。

控除されまくる給与と救われないエンディング、薄給の中でも慎ましく生きる女の子たちに心が痛くなるゲームでした。

全END到達、全実績解除までおおよそ12~13時間でした。

リリース日:2021年8月27日
開発/販売:hinyari9

■ストーリー

隣国は全て敵、徴兵されたマルフーシャは限られた給与で物資を調達しながら、自国「カゾルミア」の国境を守る任務に就きます。

どんどん控除される理不尽な給与額に、国から押し付けられる愛国心と労働への強制、そして戦況が悪化することをひた隠しにする上層部。

敵国の兵士は全て機械兵、対してマルフーシャたちは全員生身で銃を使って戦います。

この先行きが絶望的なカゾルミアでマルフーシャたちは幸せをつかむ事が出来るのか。

彼女たちの苦心の果てに待ち受ける運命とは…

■愛おしく個性的な仲間

主人公のマルフーシャ以外にも登場人物がおり、ストーリー中で一度にひとりまで仲間にする事が出来ます。

その仲間たちにはいずれも生い立ちや性格、バックボーンがあり、こんな子たちがこの苦しい世界で生きているのかと思うと少し胸が苦しくなりました。

主人公のマルフーシャ。徴兵される前はパン屋に勤務していた


上官のライカ。終盤で仲間にすることが出来るようになる。


仲間にしたキャラクターによって部屋に置かれるものが変わる。細かいところの変化が面白い。

■シューターとしての面白さ

ゲームとしては、ディフェンス系×2Dシューターといった構成で、画面右側から迫りくる機械兵を銃で倒していきます。

武器は最初はハンドガンのみですが、1ステージごとに発生するボーナスカード選択画面で武器を購入したり主人公の能力を向上させたりすることが出来ます。仲間を加える際もこのカード選択画面から行います。

仲間の雇用や武器の購入、能力アップが行える

今までやった事のないシューターでしたが、
敵を小気味よく倒していく感覚や仲間との連携が楽しいです。

また、キャラクターを強化していったり、仲間を強くして行ったりして段々と戦いやすくなってくるのも良いですね。

武器の種類も豊富です。特にサブマシンガン系の武器が強い。
銃を撃った時の効果音も一つ一つ違う音が使われており、しっかり作り込まれているのが分かります。

12種類の武器がある

■税金控除される給与~薄給~

1ステージをクリアすると日付が1日進むのですが、クリアするたびに給与が貰えます。

しかしその給与明細を見て愕然。給与のほとんどが税金で控除されるのでした。

序盤は税金控除されまくって手取りが"1"なんて日もあります。

基本給37+手当1-各種控除で総支給額が"1"

それでも、これはあくまで日給なんですよね、月給でこの額だったら恐ろしいのですが日給ならまあ大丈夫なのかな、なんて。

ゲームバランス的にはこれでも充分進められますが、主人公たちはこれで生活出来るのか?控除項目多くない?なんて思ったり。

さながら「薄幸の乙女」ならぬ「薄給の乙女」か?

でもよくよく見るといずれも現実にある税金や費用です。雇用保険だとか住民税だとか。

私たちも毎月給与からいろんなものを控除されているんだよなぁ、と世知辛さを感じます。

■救われないエンディング(微量のネタバレあり)

『溶鉄のマルフーシャ』はマルチエンディングですが、どのエンディングも救われない内容でした。

基本的にはどの仲間を加えた状態でエンディングを迎えるかで内容が変わるのですが、どの内容も救いがなく見ていて辛い内容です。

唯一、真エンドだけは主人公が生きているだけましなのかな、なんて。
痛々しい姿で義妹のもとへ帰るマルフーシャと、その義姉を迎えるスネジンカの姿が涙ぐましいです。

真エンドではタイトルの『溶鉄のマルフーシャ』の意味が分かるので、プレイする際はぜひ真エンドを見てほしいです。

マルフーシャとスネジンカ

■悪いのは敵国か自国か。時代に翻弄されるマルフーシャたち

自国の「カゾルミア」や敵国の軍隊、いずれも非人道的な事をしています。

カゾルミアは生身の人間を駒のように使い捨てるし、敵国も戦うのは機械兵で人間の命は犠牲にしないのかと思いきや、その機械兵の正体が実は…といった事がゲームを進めていくうちに判明していきます。

自国が悪者かと思いきや敵国も非人道的な事をしていたりと、この世界にはまっとうな国が無いように見えます。戦争をしている時代というのはどこの国もそんなものなのでしょうか。

そんな時代の中で戦わされ人生を奪われるマルフーシャたち。
こんな時代でなければもっと幸せに生きていけたのではないでしょうか。
そう思うと不憫でならないです。

■後記
『溶鉄のマルフーシャ』、共産主義国家や社会主義国家をモデルとしているようで、そういった方面の知識があればもっと深い感想が書けたのかな、なんて思います。

歴史に対する知識や教養というのは作品に深みを持たせるために必要なんだなぁ、と。

それはともかく、ゲームとしておすすめです。
安価なのに世界設定や登場人物の設定、ゲームシステムの作り込みがなされており、プレイしていて面白いです。

ただ、全ENDや実績を解除する為に何度も周回する事になるので、人によってはマンネリ化してしまうかもしれません。

なので、様々な戦い方をするのがおすすめです。

続編の『救国のスネジンカ』が既に発売されているので、そちらも手を付けたいですね。


以上。




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