『ムーンレスムーン』淡い世界、「プレイできるミュージックビデオ」
『ムーンレスムーン』クリアしました。
プレイ時間は全エンディング含めて3時間~4時間です。
ジャンルはテキストアドベンチャー/ビジュアルノベルです。
また、本作は音楽を中心に展開してきたKAMITSUBAKI STUDIOによる、音楽とインディーゲームを制作するプロジェクト「ANMC(アノマチ)」の第一弾として展開されています。
複数の歌い手/アーティストによる楽曲が提供され、さながら音楽×インディーゲームといった風合いの作品になっています。
■「プレイできるミュージックビデオ」
インタビュー記事等でも述べられている通り、本作は「プレイできるミュージックビデオ」というコンセプトのもとで制作されています。
そのコンセプトの通り、本作には主題歌、挿入歌、エンディング曲の3曲が用意されており、それぞれがゲーム中の要所でミュージックビデオの映像とともに流れます。
それらの曲と映像がとても良く、いずれも本作の淡い世界にとてもマッチしていました。
MVの映像はまだ公式には公開されておらず、ゲーム内でのみ観る事が出来ます。
そのうちMVだけでもYouTube等で観れるようになると良い(※)のですが、実際にプレイする中で挿入されるMVとして観るのも本作の醍醐味となります。
楽曲については8月7日~9月4日にかけて3曲ともリリース予定(※)のようです。
※2024年8月7日(水)にSad Sad Hot Latte feat. むト (youtube.com)が公開
また、通常のテキストパートについてもKazuhide Okaさんらしい繊細な文章と淡いビジュアルが描かれ、穏やかなBGMが流れます。そういった部分も含めて「プレイできるミュージックビデオ」なのでしょうね。
■RIDDLEパート
本作は基本的にテキストを読み進めるのみの内容になっていますが、途中に挿入される「RIDDLEパート」というパートがあります。
そのパートでは、テキスト内に表示される青い単語をクリックしてキーワードを入手し、そのキーワードを画面下部のテキスト内の空欄(□□□□)に正しく当てはめることで次の場面に進みます。赤い単語の箇所については、クリックするとその単語に紐づいたテキストが表示されます。
単語の入手率がSteam実績に関わっていたりなど、本作におけるゲーム性の部分はこのRIDDLEパートが担っています。
単にテキストを読むだけではゲームに求められる没入感がなくなってしまうので、こういったプレイヤーの操作を求めるパートは大事なのだと思います。
■込められたメッセージ。最後までのプレイを推奨
※微量のネタバレあり※
ムーンレスムーンのストーリーにはメッセージが込められており、終盤までプレイするとその内容が分かります。おそらく現代の人であれば多くの人たりが共感するのではないかなと思います。
現代の人間はみんな様々な世界で生きています。
家庭であったり、職場であったり、友人・知人との繋がりであったり、趣味の界隈であったり。はたまたネット上での世界であったり。
人はひとつの世界で生きているわけではない、むしろ一つの世界だけで生きていたら衝突が起きたり不和を感じたりしてしまう。だからこそいろんな世界があっていい。
そういったメッセージが込められています。
※インタビュー記事では「コミュニティへの"帰属意識”の肯定」という表現をしていました。
また、個人的な解釈ですが、いくつかの登場人物で描かれる「"変わっていくこと"への肯定」と「"変わらないこと"への肯定」も良いものでした。
■後記
『ムーンレスムーン』は全体的に、ゲームを楽しむというよりは作中の雰囲気やBGM、3つの楽曲のMV、ストーリーラインを味わうといった趣向になっています。「ゲームとしてのテキストアドベンチャーが好き!」という人向けというよりは、音楽や雰囲気を味わってもらうゲームだと感じました。
もちろん、物語についても「コミュニティへの"帰属意識”の肯定」といったメッセージが込められた内容になっているので、最後まで遊ぶと制作者のそういった想いを感じ取れる内容になっています。
普段あまりゲームをやらないけど音楽が好きな人、淡い雰囲気やBGMが好きな人、短編小説が好きな人、などなど。そういった人たちにもおすすめのゲームです。