『和階堂真の事件簿 TRILOGY DELUXE』短編ミステリーADV作品集
「最近ゲームをクリアしましたか?文庫本サイズのゲーム体験をあなたに」
『和階堂真の事件簿 TRILOGY DELUXE』をクリアしました。
「1時間でクリアできる推理アドベンチャー」をコンセプトに開発されたミステリーアドベンチャーです。
そのコンセプトの通り、収録されている4つのストーリーは1~2時間ほどでクリアできます。(私の場合はトータルで7時間ほどでした。)
元々はスマホ向けに3部作でリリースされており、本作の「TRILOGY DELUXE」ではSwitch/PC向けに移植し、新たに新規エピソード「指切館の殺人」を追加した内容になっています。
■遊びやすさやクリアのしやすさを意識したゲームシステム
このゲーム、ジャンルはミステリーADVですが、謎解きに苦労しながら進めていくというわけではありません。
もちろん、作中の謎は先の展開が気になるようなものばかりなのですが、ゲームの進め方としてはプレイヤーに攻略の苦労を強いるものではありません。
基本的なゲームの進め方としては下記の二つのパートを繰り返しながら事件の真相に近づいていくものになっています。
①登場人物や物的情報からヒントになる情報を集める調査パート
②集めた情報を一つずつ整理して事件の真相に近づいていく推理パート
①に関しては集めた情報を次にどこで活用するかが分かるようにある程度ガイドされており、それに沿って進めれば自ずとゲームが進行していきます。
②に関しては、情報を整理する過程で選択肢が提示されるものになっていますが、選択肢を間違えてもペナルティがあるわけではありません。
つまり、ある程度はガイドの通りに進めれば良く、途中の選択肢をミスった場合のリスクも無いということになります。
なので、ゲーム性(リスクや駆け引き、試行錯誤)に特化するよりはミステリーとしてのシナリオに集中できることを優先した作りになっていると言えます。
おそらく、普段あまりゲームをプレイしていない方でも、小説を読む感覚で、かつゲームらしい双方向性を感じられるようにプレイ出来ることを意識されているのではないでしょうか。
そう考えるとADVというよりはビジュアルノベルに近いのかもしれません。
その点ではゲーム性が足りないという理由で賛否が分かれそうです。
ただ、コンセプトとして前述した内容に舵を切っているのであれば、それはそれで一つのゲームとして成り立っているのだと思います。
また、敢えてゲーム性となる部分を挙げるとすれば、下記が挙げられます。
・作中の舞台を歩き回りながら情報を集める楽しさ
・集めた情報をゲーム内でメモし、その情報を活用して新たな情報を手に入れる楽しさ
・リスクは無いがある程度自分で考えながら選ぶ選択肢
こういった部分でゲームならではの没入感を演出しています。
必ずしも全てが受動的ではないということです。
■シナリオ
「TRILOGY DELUXE」ではシリーズ3部作+1のシナリオを楽しむ事が出来ますが、内容によって好みが分かれるかもしれません。シナリオの良し悪しではなく、個々人の好みの違いで。
個人的には1作目の【処刑人の楔】か新規シナリオの【指切館の殺人】が良かったかなと思います。
【指切館の殺人】についてはミステリーでは定番(?)の大雨の中の館が舞台なのでそれ自体が面白かった。
もちろん、2作目も3作目も良いです。特に3作目の叙述トリックがキマってました。
あとは、1作目~4作目を通して僅かに話が繋がっている要素があるのが面白いです。3作目で出てきたあの人たちはそんな過去があったのか、とか。1作目のあれがここで…とか。
手放しで全肯定したりはしませんが、いずれも刺さる人には刺さるシナリオだと思います。
ぜひ落ち着いた空間でじっくりプレイしてみてほしいです。
■ビジュアル
色数を抑えたドット絵がとても良く、ドット絵に関しては、開発元の墓場文庫のnoteでは「モノトーンぽい4階調+赤」と表現されています。
背景は敢えて薄くし、登場人物などの目立たせるべき存在は視認しやすい明るめの色で描かれているので、見やすいです。
薄い背景と黒く縁取りされた白い人物、そしてその分目立つ鮮明な血の色というのが『和階堂真の事件簿』の特徴的なビジュアルです。
「ファミコンよりもはるかに少ない色数」だそうで、色数が少ないからこそ『逆に「何をみせたいか?」に集中できるので相当効率的に制作ができた』との事でした。
■BGM
BGMはミステリーに合う不穏なものやジャジーなものがあります。
いずれも何度も聴きたくなるような耳に残る曲ばかりです。サントラが欲しい。
下記で一部の曲が途中まで聴けます。
■少し思った事
細かいところになりますが、登場人物が喋る時のダイアログにはビジュアルだけでなくキャラクター名も表示する仕様になっていれば、もう少し登場人物の名前も憶えやすかったのかなと思います。
シナリオにもよりますが登場人物が多いので名前を覚えるのが少し大変でした。もしかしたら画面上の制約とか技術的な制約があって実現できなかったのかもしれません。
ただ、その分メモ帳画面から各登場人物の見た目と名前が観れるようになっていました。
あとは、シナリオ進行上行けない箇所はそのエリアに入った後じゃなく、マップ上で選択した時点で入れない事を明示してくれたら、もう少しスムーズに進めてやり易かったかな、なんて。
■最後に
『和階堂真の事件簿』、手放しで全肯定できるゲームではなく好みが分かれるのですが、ADVやビジュアルノベル、またはミステリーが好きな人はぜひやってみてほしいです。それこそ1作品あたり1~2時間で終わるので。
以上、ここまで読んでくださりありがとうございました。