毎日超短話399「ラーメン」
たぶん淋しい理由は他にもあると思うけれど、いちばんは「肌寒い」ってことだけだと思う。昼間は暑くなるからと、油断して羽織るものを着てこなかった。だから、駅のホームのラーメンの湯気にこんなにも惹かれているのだ。
ねぎと海苔とメンマだけのシンプルな醤油ラーメン。なにも気取っていない、どこでもあるようなそれが、今は特別なものに思えて、思わず涙が出た。
スープまで飲み干してしまうと、器の底に「ありがとうございました」と書かれた文字が笑顔のように現れた。
淋しさはもうない。
やってきた電車に乗り込んで、帰り道を急ぐ。
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