2023年版:有斐閣の編集者が新入生におすすめする本:商学・マーケティング
こんにちは、有斐閣書籍編集第二部です。
3年前に好評いただいたシリーズ記事「有斐閣の編集者が新入生におすすめする本」からずいぶん時間も経ったし、その続きを各分野の担当者に聞いていこうという企画、今回は商学・マーケティング分野から。
編集部のシバタに話を聞いていきます。
いま、新入生におすすめする1冊目
——前回(2020年)の記事から時間が経ちましたけど、いまあらためて新入生や初学者に「1冊目におすすめ」できる本はありますか?
シバタ:そうですね。まずお伝えしなければならないのは、前回挙げた『はじめてのマーケティング』『マーケティングをつかむ』『マーケティング戦略』が改訂されていることです。
――たしかに、ここ数年でどんどん改訂企画が進んだ印象ですね!
シバタ:それだけマーケティングは、新しいテーマや事例が生まれてきている領域だということになりますね。そこに、常に新しさがあるマーケティングの魅力があるといえそうです。この間、コロナ禍が継続しましたし。
――パンデミックのあいだも、企業もビジネスも動き続けていたわけですもんね。マーケティングはとりわけ具体的な社会の動きに対応して更新される印象をもちます。
シバタ:前回は挙げていなかったのですが、流通関連の書籍も改訂を行いました。『ベーシック流通と商業』(アルマ)と『はじめての流通』(ストゥディア)です。やはり、小売や卸売に関しても大きな変化の波に見舞われていますよね。そのうえに、コロナ禍が起こったので、状況が大きく変わりました。改訂が必要になってくるわけですね。じつは、コロナ禍になる前から、検討は進めていたのですが……。
――図らずも、後押しするきっかけになった面があるかもしれませんね。似たような話を別の分野でも聞きました。しかし、とすると、こうしたなかから「1冊目」を選ぶとすると…?
シバタ:あらためておすすめしたいのは、『マーケティングをつかむ(第3版)』ですかね。
各ユニットが架空のケースから始まっていて、楽しく読み始められます。本文の解説には、多くの実際の事例が盛り込まれていて、実感をもちながら読めるのではないでしょうか。みなさんがよく買っている商品やブランドが、至るところに出てきます。
そういえば、『マーケティングをつかむ』の著者のお一人、黒岩健一郎先生には『サービス・マーケティング』というテキストを出していただきました。こちらもおもしろいですよ。
――ストゥディアですね。何か大きな特徴があるんでしょうか?
シバタ:なんと一冊を通して、ストーリーが展開されていて、それを読みながら勉強できるように構成されています。画期的ですよね(笑)。でも、内容自体はしっかりとした教科書になっていて、サービスに関わるマーケティングがいかに重要であるか、順序だって解説されていきます。各章にケースも入っていて、興味深いです。こちらは、実際の企業などのケースですね。
――有斐閣のテキストの新時代を感じますね(笑)
シバタ:あと、この間に改訂しました『マーケティング戦略(第6版)』には、デジタル・マーケティングの章が追加されました。
日々、変貌を遂げているデジタル・マーケティングを明快なフレームワークに基づいて、いきいきと解説されています。すでにスタンダード・テキストとして圧倒的な地位を築いている定番書ですが、さらに新しい魅力が加わりました。読む価値があると思います。
こんな本が出ています
——どんどん新しい本が出ている分野ですが、今度は「1冊目」にかぎらず、「商学・マーケティングの本が読みたい」「これから勉強してみたい」という人に、何かおすすめしてもらえませんか?
シバタ:そうですね。前回挙げた世界的に著名なフィリップ・コトラーらの『マーケティング4.0』がまた新しくなり、『マーケティング5.0』が刊行されています。
『4.0』では、スマホが普及したなかでのマーケティングが議論されていたのですが、今回はAIなどのテクノロジーを活かしていかに価値をもたらすかが展開されています。今回も明確な枠組みが示されているので、わかりやすくなっていると思います。
――なるほど。この分野を象徴する本、といえるような書目ですかね。
シバタ:先ほど言ったことと同じですが、この本でも、新しさが追求されているわけですね。この「今」という時代がどのような特徴をもち、そこに向けて、いかにアプローチすべきかが常に探究されていることになります。未来を見通すということも行われています。やはり、そこにも、マーケティングを学ぶおもしろさがある気がしますね。
この本のここがおすすめ!
——ありがとうございました! 最後に、もうちょっと詳しくすすめたい「これは!」という本はありますか?
シバタ:この春に刊行された『マーケティングの力』をおすすめしたいですね。現代のマーケティングをとらえるために重要となる概念や理論枠組みについて、約90項目を抽出して、それぞれ3ページでコンパクトに解説されている本です。気鋭の先生方がご執筆くださっています。
——これはなかなか重厚な本ですね。でも、そのわりに一つひとつの項目は短いですし、便利に「使える」かもしれませんね。どんな読者に届けたいですか?
シバタ:マーケティングを学ぶ学生のみなさん、そしてこれから社会人としてビジネスの世界に入ろうとしている方々、そしてすでにマーケターやブランド・マネジャーとして働いているみなさんの「座右の書」となるでしょう。文献一覧や索引も充実していて、事典としても使えますので、長く親しんでいただけるのではないでしょうか。有用な本だと思います。