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【著作物とは?】先生教えて!学校で迷わないための著作権の話①

有斐閣公式キャラクターのろけっとぽっぽーは悩んでいました。

出版社の公式キャラクターたるもの、”学校”という場での著作権について正しく理解しておきたい。

でも、最近大きな法改正もあり、新型コロナウイルスの影響による特例もあり、なんだかわかるようでわからない。
細かいことを聞かれると自信がない……。

そこで、新刊『教育現場と研究者のための著作権ガイド』の著者のお一人、上野達弘先生(早稲田大学教授)に質問してきました!

上野先生似顔絵1

まずは、著作権の基本的な説明からお聞きしていきます。

著作権があるものとないもの

Q1.超基本的なことですが、たとえば誰かが描いた図を教材に使うときって、やっぱりほんとうは描いた人に許可を取らないといけないんですよね……?

許可がいらない場合もありますよ!

著作権法では、著作物は「思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」とされています(2条1項1号)。

したがって、創作性のある表現は著作物として保護されますが、そうでないものは保護されません。たとえば……

――ちょ、ちょっと待ってください!
最初から全然ついていけません。もうちょっとやさしくお願いします。
えーと、そ、「そうさくせい」……とは……??

ごめんごめん。つまり、創作性のない表現は、著作権が認められる著作物ではないので、許可なく自由に使えるんです。

「創作性」は、著作者の個性が何らかの形であらわれていれば認められます。プロの作品はもちろん、素人が作った詩や子供が描いた絵にも、その人の個性があらわれていますね。したがって、これらも創作性があり、著作権がある著作物です。

これに対して、誰がやっても同じようなものにならざるを得ない「ありふれた表現」は、個性があらわれているとはいえず、創作性が認められません。

――「ありふれた表現」? たとえば、どんなものですか?

たとえば、事実やデータをもとにした図表やグラフ、地図ですね。

客観的な事実やデータは、そもそも人が作り出したものではないので、創作性が認められませんが、それを一般的な手法で表現したに過ぎないものも、創作性が認められないことが多いです。

あとは、言葉の意味を短文で表した「定義」についても、誰がやっても同じような表現になるような場合は、作者の個性があらわれているとはいえず、創作性は認められません。

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――じゃあ、逆に、どんなものに創作性が認められるんですか?

代表的なものは、文章や絵画です。小説や詩などが分かりやすい例ですね。

表現の選択の幅があり、それなりに作者の個性があらわれているといえる限り、創作性が認められるでしょう。

したがって、客観的な事実やデータをもとにした図表やグラフであっても、情報の選択または配列に作者の個性があらわれているなら、創作性があり、編集著作物として保護されます(著作権法12条)。

地図も、色使いや装飾などの具体的な表現に一定の工夫がされていて、作者の個性があらわれているといえる場合は、創作性が認められます。

――なるほど。誰がやっても同じような表現になるか。ひっくり返すと、その表現にそれなりに作者の個性があらわれているかが、創作性のない/あるを分けるポイントなんですね。

著作権があっても自由に使えるもの

Q2.じゃあ、創作性のない表現は自由に使えるけれど、創作性のある表現には著作権があるから、許可を取らないと使えないってことですね?

創作性のある表現でも、以下の3つは自由に使えます!

著作権の消滅した著作物(パブリックドメイン)
著作権は、一定の期間が経過すると消滅します。

②法律、国や地方公共団体が発する告示・訓令・通達、裁判所の判例と、判例集のような公共の著作物
これらは著作権の対象にならないとされているので、自由に利用できます。

③フリー素材
著作者が一定の条件のもとで自由利用を認めているものです。教育現場にとっても便利ですが、利用する前に、利用規約等でライセンス条件について確認する必要があります。

――ライセンス条件?

著作者が、個別の許諾なしに利用を許可する条件のことです。

利用規約には様々なものがありますが、特に、クリエイティブ・コモンズ・ライセンス(CC ライセンス)は、ライセンス条件を分かりやすいマークで表示するもので、広く活用されています。

こんな画像を見たことはありませんか?

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――あ! 写真の素材のサイトで見かけたかも!

このマークは、著作物を改変しないこと(ND)と、クレジット(氏名、作品タイトル等)を表示すること(BY)を条件に、営利利用を含めて利用できる、という意味です。

CCライセンスには、4種類の条件を組み合わせた6種類のマークがあります。

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――条件さえ守れば自由に使っていいなら、学校でも利用しやすいですね。

特に、イラスト・写真・BGM 等のフリー素材については、無償で提供するウェブサイトが多数あります。

『教育現場と研究者のための著作権ガイド』の巻末資料に、フリー素材・パブリックドメインサイト集を付けておいたので、ウェブでも公開します!

原則として営利・非営利を問わず自由に利用でき、クレジット表記も不要のものが多いのですが、それぞれライセンス条件については必ず利用規約等を確認してくださいね。

――ありがとうございます! 著作権のこと、わかってきた気がします。

まとめると……

■誰かが作ったものを使うときは、
①まずは著作権があるか、確認する。
②著作権があるなら、ライセンス条件がどうなっているか、確認する。
ですね!

OKです。

さらに、著作物のライセンス条件が不明だったり条件を守るのが難しかったりしても、学校における利用の場合は、許諾なしに使える例外があります

次は教育機関の授業における利用について、今村哲也先生に教えてもらってきてはどうでしょう 。

――学校だけの例外があるんですか!? わかりました、聞いてきます!

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(第2回に続く)

*****

『教育現場と研究者のための著作権ガイド』では、創作性のある例・ない例を具体的な図表付きで解説しているほか、こんな問いにも答えています。

Q. 古い絵画や音楽などは、著作権が消滅しているというが、どのように判断すればよいのか。
Q. 授業で利用する教材の中で、授業の内容理解をより高めるための演出として、他人の著作物であるイラストを複製して掲載することは、必要と認められる限度に該当するか。
Q. 教育現場において、どのように「著作権教育」を行えばよいのだろうか。その際に気をつけるべきことは何だろうか。

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