糖尿病リスクについて、いくら言ってもわかってくれない人が多いこと
糖尿病とは、血糖値が高い状態が慢性的に続く疾患で、進行すると様々な合併症を引き起こす危険があります。日本でも非常に多くの方が糖尿病またはその予備軍であり、健康管理が必要とされる方が増えています。糖尿病は一度発症すると完治することが難しく、治療には生活習慣の改善が不可欠です。
そのため私たち看護師などの医療従事者は薬の治療だけでなく生活習慣の改善を常日頃から注意喚起していますが、当人であるはずの患者様にはなかなか響かず、改善に至らないことが多々あります。
糖尿病になりやすい人の特徴
糖尿病になりやすい人の特徴としては遺伝の要因が挙げられます。家族に糖尿病患者がいる場合、発症リスクは高まります。これは遺伝子による影響だけでなく、家族間で共有される食生活や運動習慣の影響も大きいです。さらに、肥満や運動不足、不規則な生活習慣も糖尿病のリスクを高めます。特に、脂肪が内臓に蓄積するタイプの肥満は、インスリンの働きを妨げ、血糖値が上がりやすくなります。また、過度のストレスや睡眠不足もリスク要因として挙げられ、生活の乱れが糖尿病の発症に大きく関わっています。
改善に至れない理由ベスト3
では、こういったリスクがある方に食生活や運動の改善を提案した時、なぜ聞き入れてもらえないことが多いのでしょうか。ここでは、糖尿病リスクが高い人に指導をしても耳を貸してもらえない理由をベスト3でご紹介します。
1. 「自分は大丈夫」という思い込み
最も多いのが、「自分はまだ大丈夫だ」という思い込みです。特に、実際に血糖値が高くても症状が出ない初期段階では、危機感を持つことが難しい人が多いです。私たちがいくら「このままだと将来的に危険です」と伝えても、本人は目の前に危険が迫っているという実感がないため、真剣に受け止めてくれないことがしばしばです。結果的に、症状が現れ始めた頃には既に進行してしまっていることが多く、早期の予防が難しくなります。
2. 「食生活を変えたくない」という抵抗感
次に挙げられるのが、「好きなものを制限されたくない」という抵抗感です。糖尿病の予防や改善には、食事内容の見直しが欠かせませんが、これに対する強い抵抗感を持つ方が少なくありません。特に、甘いものや揚げ物など、日常的に楽しんでいる食事を制限されることに強いストレスを感じ、提案を無視してしまうことがあります。健康のために何かを「我慢する」という行為に対して、ネガティブな感情が湧きやすいのです。
3. 「どうせ無理だ」という諦め
最後に、既に「どうせ自分は改善できない」と諦めてしまうケースです。特に、長年の不規則な生活や肥満が続いている方に多い傾向があります。健康改善に取り組むためには、継続的な努力が求められますが、これが大変だと感じる人ほど、最初から諦めてしまいがちです。たとえアドバイスを受けても「今さら変わっても無理だろう」と思い、行動に移すことを避けてしまいます。
では、こうした方々が聞き入れない場合、どのような未来が待っているのでしょうか。
残酷な未来
糖尿病を放置すると、視力障害や腎不全、心臓病、さらには足の壊疽(えそ)などの重篤な合併症が発生するリスクが高まります。これらの合併症は生活の質を著しく低下させ、最悪の場合、命に関わることもあります。例えば、糖尿病性腎症が進行すると人工透析が必要になり、週に数回の通院が生活の中心となります。また、糖尿病性網膜症によって視力が低下し、最終的には失明することもあります。このような状況になると、後悔しても遅いのです。
では、なぜ多くの方が正論を突きつけられても聞き入れてくれないのでしょうか。それは、情報や知識があっても、それを自分のこととして「実感」するまでに時間がかかるからです。日常生活に慣れきってしまっていると、健康のリスクに対して漠然とした不安は感じていても、具体的な行動には移せません。また、人は変化に対して恐怖心や抵抗感を抱きがちです。長年の習慣を変えることには、大きな勇気が必要であり、そのハードルが高いのです。
それでも、私たち医療従事者は粘り強く、リスクを伝え続けることが重要です。
相手が今すぐ行動を起こさなくても、将来的にその言葉が役立つ時が来るかもしれないと思い続けるしかありません。また、強制的に改善を促すのではなく、少しずつ無理のない範囲での変化を提案することも重要で、例えば完全に好きな食べ物を制限するのではなく、量を減らしたり、健康的な代替品を提案したりすることで、抵抗感を減らすことからはじめ、徐々に取組んで行けるように仕向けることでスタートが切りやすくなることもあるかと思います。
最後に
私たちは食事制限や生活習慣改善をうたってその方を苦しめる事が目的では決してありません。糖尿病をはじめとした人々を苦しめる様々な疾患が減ることを祈りつつ、これからも健康管理のお手伝いを続けていきたいと考えています。どんな小さな改善でも、それが大きな健康の一歩につながることを信じて、一緒に取り組んでいきましょう。