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リズミカルな色彩の曲芸|『マティス 色彩を奏でる』の鑑賞

銀座のポーラアネックスで開催中のマティスの展示を鑑賞したので、その感想を残します。
以下の公式ページから概要を確認できます。
https://www.po-holdings.co.jp/m-annex/exhibition/index.html

油彩

紫のハーモニー

情緒を反映するかのように動きのあるタッチ
優婉な色使いと太い芯の入ったような厚みが、「ハーモニー」という作品名と確かに照応するように調和している
甘い気だるさが香ってくるような魅惑的な油絵。

中国の花瓶

踊るような色彩の豪奢
軽妙に東洋を取り入れて調和させるマティスの手腕も伺える
対象がもつ色彩的なパワーが純度を増して迫ってくる
捨象と純化のアプローチが華やかに成就した佳品

室内:二人の音楽家

全体として絢爛なだけではなく、荘厳な空気を醸す後景の重いブラウンの効果もあってか、華やかであるとともに強度を放っている。
まるでフルコースを味わうかのような満ち足りた気持ちへとこちらを誘う。

引の撮影:冒頭の展示
襟巻の女

豪然さだけでなく、高潔と品威を確かに湛えている女性の姿態。
後景の補色のコントラストは、シンプルながらも普遍性をありありと示してくる。
有無を言わさない気品と魅惑を放つ。

リュート

絵姿の全てがはなやいでいる
心地よい電流のような美の調べがこちらを満たす
踊るような筆使い
愉悦のリズムが感情の乱舞を描いているかのよう。
リュートから作品全体に生命を流れるようなパワフルさ

『ジャズ』シリーズ

思えばマティスの切り絵は、『ジャズ』の名の通りリズムを刻んでいることが確かに感じられる「動」の作品もあれば、「余白」から静かに情動の波が広がっていくような「静」の作品もあると、今回の豊富な作品群を鑑賞して思った。

白い象の悪夢/馬・女曲芸師・道化師/狼/ハート

特に左下の『馬・女曲芸師・道化師』は色彩のリズムで作曲しているかのよう

右下の『ハート』は最も抽象的で、解けない幾何の謎のようだが、
不思議と胸を打つ。

少し前にマティスの『自由なフォルム』という展示があったが、それを前提にせずともそのフレーズが浮かんでくるような伸びやかな色使いをしている。

珊瑚

静かなる讃歌が聞こえてきそうな晴朗な色彩、フォルム。

『シャルル・ドレアン詩集』


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