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弓削保
2015年8月16日 01:38
言葉は酷く簡単に投げられ。 それが賽を投げる号令。 進めるべき駒は容易く動き、そして消費されていく。 地鳴りのような大軍の動く様は勇壮と言う他なく。 その最前を飾るのは、美麗と言うに値する華々しき将の雄姿。 都にうら生る白瓢箪にはない馬臭さが、寄せては返す波のように。 雄雄しき華を咲かす白刃が、鎧のぶつかり合う激しさを清々と斬り裂く。 馬蹄の跳ね上げる泥濘に、朱の雑じる臭気。
2015年8月16日 01:28
ふわり……ふぅわり、ふわり……… 穏やかに河原を撫でていく微風に、いくつものしゃぼん玉が儚い万華鏡を景色に添えた。陽の加減で、ほんの僅かの風の向きで、そしてその柔らかな面に写し取る景色の色で。様々に色を変える様は、二度と同じ模様のできない万華鏡とよく似ていた。 昼下がりの河原は子供達のはしゃいだ声が遠く近く響いている。その中を漂うように舞うしゃぼん玉は、彼女の幼かった頃の記憶をやさしく刺激し
2015年8月16日 01:14
派手さも華やかさもない、素朴な田舎の原風景。視界は随分と近くに見える標高の低い山に切り取られ、山の手前には普段は大人しい清流が。そして、狭いながらも視界手前には畑と農道を拡張しただけのような町道、静寂を好む民家があるきりだ。 秋特有の空は高く、冬のそれには及ばないながらも空気は澄んでいる。鮮やかな青に抱かれるヒトの営みは、けして溢れる程に物があるわけではない。しかし随分と穏やかに豊かに紡がれて