今、アイドルを語ろう
よく来たな。さっさと帰るといい。お前のためだ。
企画は動き出した。静かではあるが、空回りでもない。
目を離してはいけないが、張り詰めるほどではない。
だから私は物思いに耽る。アイドルについて。
特定の誰かでない<アイドル>だ。
アイドルはパルプと相性がいい。かつて私はメキシコでアイドル製の銃弾をこの身に受けたことがある。
銃弾は私の顎を貫通した。奴は勝ち誇り、振り返ることなく去っていった。
死に損なった私は荒野を彷徨った。より強力なアイドルが必要だった。
そして知る。自分の運命を。
『最後にして最初のアイドル』
『最後にして最初のアイドル』は純度 100 %のアイドルパルプだ。パルプのなんたるか、メキシコの荒野を生き延びた諸君らはご存知だろう。そうでない腑抜けは黙っていろ。そして知れ。これを読まずしてアイドルパルプを語ることは許されない。読め。そして目覚めろ<アイドル>に。
書き出しはこうだ。
" これは一人の少女が最高のアイドルになるまでを描いた小説である。 "
私はこの頃、アイドルについて考え続けている。そんな私がこの書き出しを読み、自分の運命を知った――知った気になったのもしょうがないと言える。私が知った気になった以上にこの小説は私の運命であり、冒頭だけ読んではしゃいでいた私は赤子のようなものだ。
私達はいわば二回この世に生まれる。一回目は存在するために、二回目はアイドルになるために。ルソーの言葉だ。
内容について多くは語らない。宇宙規模で展開されるアイドル活動は私の偏狭な知識を大いに更新してくれた。たとえ姿形、いや概念が二転三転し我々の知るアイドルとはかけ離れようと、アイドルはキラキラ燦然と輝くのだ。
アイドルとは一体何なのか
もし、パルプスリンガーではない素直な連中――例えば純粋なアイドルファンとか――が上の文章を読み、『最後にして最初のアイドル』を読んだとする。奴らはきっと怒るだろう。作中で真理に至ったというのに。
" アイドルに求められるのは完璧なダンスでも歌でも意識創造でもない、下手でも良いから努力する姿なのだ。 "
下手でも良いから努力してみろというのだ、全く。
とはいえ、このままではアイドルが一体何なのか分からないままだ。
せめてお前らにアイドルソングというのを手向けてやる。それで感じろ。
sora tob sakana は照井順政――ロックバンド、ハイスイノナサの照井順政だ――がサウンド・プロデュースを手がけるアイドルグループだ。
MV をみるとアイドルなんてものが一度も出てきてないのが分かる。要するに私はハイスイノナサが好きなだけかもしれない。
BiSH は楽器を持たないパンクバンドをテーマに掲げるアイドルグループである。サウンドは ONE OK ROCK にだって引けを取らない。もしかすると私は ONE OK ROCK のことが好きなだけかもしれない。
BABYMETAL はもはや新しいメタルジャンルと言っていい。ゴリゴリの演奏にめちゃめちゃ上手い女性ボーカルだ。当然、私はメタルも嫌いではない。
つまり私はアイドルのことが何も分かっていない
だから私には「響木アオというアイドルについて」なんてテーマは書けん。助けろ、マジで。あれはそういう企画でもある。
というか、サウンドの話からアイドルを分かった気になるなんて無理では?
下手でも良い。努力する、応援したくなる姿。それがアイドルの本質。
要するにスタイルではなくアティチュードだ。パンクやね。
ほんで皆が響木アオさんを応援する姿はこちら。これはアイドルですわ。
余談だが彼女のアイドルソングプレイリストはめちゃくちゃためになる。
バンドサウンドラバーにとって全く知らない世界だ。