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シロクマ文芸部参加

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シロクマ文芸部参加のショートストーリーです。
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2023年7月の記事一覧

真夏の夢  :  「書く時間」

真夏の夢 : 「書く時間」

書く時間は、人々が寝静まってから。

静寂の中、スマホの灯りだけが部屋を照らし出す。
キーボードを叩く音も、ファンが回る音もしない。
手の平に乗るスマホ一個で物語は生まれていく。宇宙誕生から、これまでの全てが物語になっていく。

「今日はどんな物語にしようかなぁ。」

小さく呟いた声が、まるで誰かが呟いたように響く。

DNAに組み込まれたバイオフォトンに、植物のバイオフォトンを移植してテレパシー

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ヘビ  :  「食べる夜」

ヘビ : 「食べる夜」

食べる夜。

あの夏の日、岩の間から現れたヘビを殺してから、毎夜毎夜、夜を食べている。

ヘビを殺すと、ヘビは殺した者の顔を眼に焼き付ける。
そして、夜になると、ヘビは蘇り、殺した者の弱き肌に牙をたて、猛毒を体に入れるのだ。

だから、あの蒸し暑い汗が肌を伝う夕暮れにヘビを殺した日から、夜を食べ続けているのだ。

もう、どれくらい夜を食べたろう?

腹は張り裂けそうに膨らんで、腹の皮は薄く薄く伸び

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やり直し  :  #「消えた鍵」

やり直し : #「消えた鍵」

消えた鍵…。
一体どこに消えたのか?

そう思って笑ってしまった。

そもそもが、
消えた鍵を使う家も消えてしまったんだから。

深夜の海へと続く国道は車もまばらで、
波の音だけが響いている。

浜辺に着くと、
乾いた砂に腰を下ろした。
昼間の熱を帯びた砂は
もう温もりを失って、
月明かりに照らされ繰り返す波は
何故か砂漠を思わせた。
砂漠に、魚を狙った海鳥が飛んでいる。

あの海鳥も帰る場所がな

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イマジン  :  #「私の日」

イマジン : #「私の日」

私の日。

七夕🎋公園でライブをやる。

と言っても、わたしに音楽なんて出来ない。
50年前に、名古屋城公園で見た、THE BOOMの野外ライブを映し出す。
50年前で記憶は怪しいから、かなりわたしのオリジナルバージョンになりそうだけど…。

宮に、こんな感じのライブをやりたいとイメージを送ったら、
「僕も行きますよ。」
と、返事が来た。
だから、きっと、完璧になるはず。

名古屋城公園のライブ

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