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真夏の夢 : 「書く時間」
書く時間は、人々が寝静まってから。
静寂の中、スマホの灯りだけが部屋を照らし出す。
キーボードを叩く音も、ファンが回る音もしない。
手の平に乗るスマホ一個で物語は生まれていく。宇宙誕生から、これまでの全てが物語になっていく。
「今日はどんな物語にしようかなぁ。」
小さく呟いた声が、まるで誰かが呟いたように響く。
DNAに組み込まれたバイオフォトンに、植物のバイオフォトンを移植してテレパシーでコミュニケーションする話しにしようか?
やはり、移植は高価で、富裕層との二分化が大きくなるだろうか?
そんなんでは詰まらない。
ある何かを手に入れた者が、ネットワークで繋がれる方が、予測不能で面白い…。
じゃあ、ある何かって…。
考えていると、黒猫のミーが勝手にドアを開けて入って来て膝に乗った。
クーラーが効いているとは言え、ミーが乗った膝はあっという間に汗が吹き出した。
息が苦しい程の昼間の暑さは幾分和らぐけれど、夜になっても蒸し暑さは変わらない。
涼しい場所に落ち着くミーが、膝に乗るなんて珍しい。
「ミー、膝に乗るなんて珍しいね。暑くないの?」
と、ミーを撫でながら聞いてみた。
ミーは、撫でられながら、私をじっと見ている。
私もミーの黄緑の目をじっと見つめ返すと、
「暑いね。」
と、ミーの声が頭の中でした。
「暑いなら降りればいいのに。」
ミーが、笑った気がする。
「ミー、私が何を言ってるのか分かるの?」
「分かるよ。みんな分かる。」
やっぱり、頭の中にミーの声がする。
ミーは可愛い瞳で見つめている。
「ミーだけじゃないよ。みんな分かってる。分かってないと思うのは人間だけだよ。
草も木も、猫も犬も他の動物もみんな分かってる。」
ミーがとても賢い生き物に見えた。
宇宙全てが見えているような…。
「賢い生き物?
今頃、気付いたの?」
「え?」
「気付いてないの?」
「いったい何を?」
「ミーや他の生き物も、月や星を眺めているんだよ。地球の声も聞いている。」
「なんとなく、そんな気がしていたけど…。」
月が昇るとミーはいつも出窓で月を眺めていた。いつも一緒にテレビドラマだって見ているし…。
「うん。それも気付いてる。ねぇさんが何となくうっすら気付いているのも。
でも、それだけじゃない。
人間は一番愚かな生き物だよ。」
「愚か?」
「木も草も虫もミーたちも、みんなネットワークで繋がって共鳴出来る。でも、人間だけはネットワークに繋がってない。
繋がってないから、何でもやっちゃうんだよね。
ミーたちは、人間の番人みたいなものさ。どうして一緒にいるか考えたことある?」
いつも間にか、机に突っ伏していた。
クーラーが当たり続けた二の腕だけが冷たくなっている。
ドアをカリカリ掻く音がして、ミーが開けてと言っている。
はぁ、物語は一行も出来ていなかった。
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