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耳を澄ませば地響きが聞こえる本

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うなる本を読むと記録に残したくなる その時の自分なりの記録として
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旅の本とこころ残りと

旅の本とこころ残りと

 旅に出る前に本を選ぶのが好きだ。なるべく行き先に絡むものがよい。文化とか歴史とか。かといってエッセイじゃ軽すぎるし、物語は中に入れなかったときのことを考えると逡巡する。旅行記は持たない。物の見方に影響するから。読みかけで興がいってる本はすぐに読み終わってしまうからやめよう。長いフライトで本を切らした時の無為感はやるせない。でも哲学書なら高度進行中は眠り薬よりよく効く。ハードカバーは重いので文庫か

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小説「猫ちゃん印のコーヒー豆」

小説「猫ちゃん印のコーヒー豆」

 保護猫ちゃんが我が家にやってきて1週間が経つ。義弟の庭に迷い込んだ野良ちゃんが産んだ5匹中の2匹の子たちだ。3段式の大きなケージをを購入してリビングの窓際にセットした。人のいる時はケージを開ける。リビングと三階に続く階段が2人の遊び場だ。猫ちゃんたちとの初めての暮らし、わずか1週間で早くも世界の中心が変わってしまった。

私の朝はコーヒーと読書で始まる。
静けさの中で空間を独り占めすると世界が自

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言葉のラビリンスを巡るエトセトラ

言葉のラビリンスを巡るエトセトラ

先日1/12に開催した対談イベント「言語からの応答 野間秀樹&辻野裕紀」は大好評であった。

この度、期間限定で動画アーカイブを購入できるようになったので、進行役兼読者代表質問者としてお二人の一番近くで聴いていた私が、この対談のエッセンスをチラリと紹介したい。

言語学者のお二人の含蓄あるお言葉を素人のおまえが紹介していいのかなんて声も聞こえてきそうだが、いいんです、言葉はそもそも伝わらないものな

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読書ブログ更新。是枝監督は本も素晴らしい。「雲は答えなかった」
https://zhuangyuan.wordpress.com/2018/12/23/ナイーブでもいいじゃないか/

中国語原書会にオンラインで。
ブログ更新しました。

https://zhuangyuan.exblog.jp/28411604/

言葉パンデミック時代の羅針盤

言葉パンデミック時代の羅針盤

「言語 この希望に満ちたもの」
野間秀樹著 北海道大学出版会
https://amzn.to/3hWrG6V

本の扉を開けた瞬間にさまざまな言語で書名が載っている。言葉好きはうれしくなってしまう。

この短い書名を各言語に置きかえるとその意味するところは同じだろうが、各々の言語文化をバックにした訳し方のアプローチが変わってくる。それはおそらく訳した人にもよるだろうし、訳した場面やその目的でも、そ

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王が起こした革命

王が起こした革命

『[新版]ハングルの誕生 人間にとって文字とは何か』野間秀樹著(平凡社ライブラリー)

この大層な副題のついた名著を紹介する前に、私自身のハングルとに関わりと、そのもどかしさについて書いておきたい。

80年代
今ほど韓国が身近にない中高生の頃からNHK講座などでハングルにふれいて、ずいぶんとやさしい言葉だなと感じていた。大学に入ると先輩が韓国の貿易会社に就職し、バイトの斡旋などをしてもらったが、

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