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アート系読書感想文[5]休館日の彼女たち
ホラウチリカが紹介されたアルバイトは美術館のヴィーナス像とのラテン語でのお喋りだった!? 英語版も話題の『空芯手帳』の著者が贈る奇想溢れる第二長編!
タイトルの「休館日」という言葉にビビッときて手に取って見たところ予想通り博物館が舞台の小説でした。(↑上の筑摩書房の紹介文だと「美術館」になってますが小説の中では「博物館」と書かれています。)
読み進めながら思ったのは「これはピュグマリオンだ」ということ。
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https://www.metmuseum.org/art/collection/search/436483
現実の女性に失望していたピュグマリオンは自ら作り出した彫刻に恋をしてしまい、アフロディーテがその様子を見て像に命を与え2人は結婚することとなる。というお話。
彫刻が生きてるという時点で連想するのは当然といえば当然ですが、人と関わることを避けがちな主人公がヴィーナスの彫刻と今はもうたいていの人が話すことのできないラテン語で会話をしながら関係性を構築していくのは、はちゃめちゃな設定のようでいて古典的だなと思ったのです。
そしてそう思って読み進めていくと物語はとってもオーソドックス。
でも博物館でヴィーナスと話しをする以外にも周りの登場人物や設定が夢かうつつかという感じ。(例えば大家のおばあちゃんは何故か「う」の発音をしない。そしてそのまま詩の朗読をしたりする)。
美術館で雷にうたれたような作品との出会いがあると主人公のような気分にもなると思うし、ひとつの作品との出会いがその人の全てを変えてしまうようなこともあるよなと思いました。
そういう点でもとっぴに思える設定をかくれみのにして普遍的な人間の感情を描いた小説でした。