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なぜ科学の声を素直に信じられない人がいるのか?〜 「人は科学が苦手」ブックレビュー

3歳男女双子子育て中のゆちです。

今回の本は、人によってはちょっとマニアックに感じるブックレビューかもしれません(笑)
とてもとても長くなってしまったのですが、もし興味を持って頂ける方がいらっしゃったら読んで頂けたら嬉しいです🙇‍♀️

🌿はじめに

プライベートではあまり人に話さないのですが実は、地球温暖化問題にとても危機感を持っていて、子供達が生きる未来を個人的に本気で心配しています。

そして、解決にむけては【科学の声を聞くこと】がとても大切だと思っていて、それは地球温暖化もそうですが医療などの他分野でも、科学の正しく正確な情報を知り、取り入れることで世の中をよくしていけると信じています。

ですが、世界には様々な懐疑的な声もあるのも事実で、それもあってなかなか問題解決に向けて十分なスピードで前に進んでいかないことに、もどかしさを日々感じています。

「人類にとって重大なことなのに、どうして科学の声が十分に尊重されないのか・・?」

この本には、そんな私の疑問へのヒントがあるかもしれないーー。そんな思いでこの本を手にしました。

🌿人は科学的に考えることが苦手?

「科学はデータに基づき、それぞれの人の考え方の違いや立場の違いを超えた事実を提供できるーー」

新聞社の科学記者としてアメリカで科学の取材を続けてきた著者は、そんな期待を持っていたけど、現実はとても厳しいものだったそうです。

そんな中、取材を繰り返すうちに
「人は科学的に考えることがもともと苦手なのではないか」

と、考えるようになったそうです。

人は自分の見たくないものは見ないし、
自分に都合よくデータを
解釈することもある。
正しい事実を提示するだけでは理解されず、
科学的な事実とは離れて、
それぞれの人の思いや感情に基づいて
判断されやすい。


🌿反科学的な主張と人々の思い

次にアメリカに主にある反科学的な意見を見ていきましょう。

創造論(神がこの世界を作った。進化論を否定)
フラットアーサーズ(地球を平らだと思っている人達。地動説を否定)
・聖書への信仰・信条に反する
地球温暖化懐疑派
・お金や政治などの利害関係
・規制などで自由な産業活動が制限されることを嫌う産業界の反発
・炭鉱労働者など、仕事の先行不安や生き方を否定されているように感じている
反ワクチンなど
ワクチンによる健康への不安や
自然な生き方を好む人にとっては、どんどん進んでいく科学技術に不安を覚える

ちなみに、地球温暖化懐疑論では「まだ科学者の間で議論が続いている」という印象を与え、対策を先送りにさせる手法があります。
この産業界の代弁者となる科学者達は、タバコや酸性雨、オゾン層の破壊、地球温暖化などテーマが変わっても、異議を唱える科学者の顔ぶれは同じだったそうです。

🌿なぜ人は科学的なデータや意見を信じられなくなるのか?

この本では、心理学や科学的検証データも用いて分析しています。

賢い愚か者(smart idiot)効果

人は自分の趣味や考え方に一致する知識を吸収する傾向があるので、知識が増えると考え方が極端になる

確証バイアス

人は自分の主義主張を後押しする情報を選びとる傾向がある。本人は気が付かない。
「見たいものだけ見える」
「見たくないものは見えない」

フィルターバブル現象

インターネットなどを通じて、その人が好む情報ばかり偏って集まってしまい、偏った情報ばかり触れてしまう現象。
本人は気が付かない。

その人の思いで判断能力が変わってしまう

人は自分のもっている「思い」や「偏見」の強さによって、計算能力にも影響を与える。
ある実験で人の計算能力を調べた時、自分の思いを確認できる計算は正答率があがり、自分の思いに合わないものは正答率が低くなる傾向があった。そして、事実とは違う結論を導き出してしまうことがある。
自分の思いに合うように都合よくデータを解釈してしまうわけではなく、無意識にそうなってしまう。

欠如モデル

「市民の知識レベルが低いから教育すればいい」という考え。受け取る側は「上から目線」に感じ、そう考えたくない人は拒否してしまう。

バックファイア効果

自分の考えと対立する話を聞いた時に、考えを変えるのではなくムキになって反論して、さらに自分の思いを強くする現象

脳の進化から考える

生物は環境に適応するように進化し、私たち人間の脳は現代社会の問題を解決するようにデザインされているのではなく、狩猟採集生活をしていた頃の問題を解決するようデザインされており、少人数の集団で進化してきた人類の脳は数百万人を超える集団をまとめる民主主義の政治にまだ適応しきれていないのだという。

その為、数百万規模の複雑なことをちゃんと想像できず、すぐに解決できるかのような単純なメッセージに惹かれてしまう

子供時代の影響

「大人の科学への抵抗は、子供時代に起源がある」
子供時代に親や身近な人などから教育を受けるなどして、
「直感に合う」「信頼のある人から教えられる」という2つの要素が揃えば、子供の頃に抱いた科学と違う考えは、大人になってもそのまま保たれる。

🌿人は「理性的」に判断するのではなく、「仲間の意見」や「自分の価値観」を重視する

人が何かを決める時に科学的な知識に頼ることは実際には少なく、
「仲間の意見や自分の価値観が重要な決め手になっている」という。

「私たちはみんな自分のことを、
知識に基づいて物事を決める理性的な存在だと思いたがっているのです。だから『みんなが言っているから』ではなく、何か科学的なものなどに基づいて自分で決めたと思いたいのです」
「人間が理性的な存在であり、何かを決める時に理性に頼るという『啓蒙主義』は18世紀から広がったもので、極めて最近のものです。批判も多く、私たちの姿を正確に映し出しているとは言えません。

私たちがふだんの生活で科学や証拠に基づいて行動を決めることなんて、ほとんどないでしょう。』

これは科学を信じる私には衝撃的でした・・😳!!私自身も理性ではなく感情的に科学を信じていた部分は確かにあるのかもしれません・・!

【余談】「車の定期点検」
これは本の内容ではなく、私が生活の中で体験したことです。
車の定期点検の知らせが届いたので、夫に定期点検について話すとこう言いました。

「出さなくていいよ。本当は必要なくても、この部品は交換が必要だとか言って料金上乗せされたりすると思う。点検は車検の時でいいよ。」 

私は驚きましたが、今考えれば車屋と信頼関係が築けていたわけではなかったし、過去に想定外の出費や車屋とのトラブルなどを経験したりしていると疑り深くなるのかもなと思いました。
もし、車屋が身内や友達だったり、過去にトラブルなど何もイヤな経験がなかったら、定期点検も部品交換を提案されても、すんなり応じていた可能性が高いように感じました。


🌿科学をどう伝えていくか

さて、科学がうまく伝わらない理由をたくさん見てきましたが、どうすれば科学を伝えられるのか。この本にはそのヒントが紹介されています。

事実を話すだけでは伝わらない

アリストテレスは演説に大切な3要素は「事実」「信頼」「共感」であり、この3つの要素が効果的なコミュニケーションに必要だ、と説いた。
科学的なデータ「事実」だけだと、「信頼」「共感」がないのでうまく伝わりずらい。

前向きな発信

リベラルな人達は悲観的なことをなんとかしたいと行動するが、保守的な人達は将来を楽観することで前向きに取り組む傾向がある。
「規制ではなく、市場原理に基づく競争によってクリーンエネルギーの技術革新が進めば、私たちは化石燃料に頼らなくても、より安定して低価格でエネルギーを得ることができる。」
こうしたメッセージを受け取ってもらうことができれば、前向きな気持ちで地球温暖化対策を進められるはずだと。
ただし、そもそもの懐疑論の疑いが晴れる必要があるが。

天気キャスターに天気予報と気候変動を絡めて紹介してもらう

天気キャスターは視聴者から厚い信頼がある。アメリカではこの取り組みに参加する天気キャスターが増えている。

相手を敵扱いしない

私たちはテーマごとに反対している人たちの思いを聞く必要がある。それぞれの人たちと話をして、理解しなければならない。それは易しいことではないし、うまくやる方法が今あるわけでもない。しかし、その目標に達するためには、まずは『科学への戦い』という言葉遣いを止める必要がある」

わかりやすい言葉で説明する

専門用語ばかりではなく、相手の年齢に応じた伝え方や、関心を持ってもらえるような伝え方ができているか。

🌿相手の話しを聞くことの大切さ

“お互いに敬意を持つことから始めて、少しでもお互いの理解が広がれば、と願いたい。科学が苦手な私たちが科学と付き合う時にも、そこに関わる人たちへの敬意が、まず一歩になるだろう。

反対してる人たちは何を心配しているのか。
自分はただ事実を押し付けるだけになっていないか。
お互いの心を結びつける何かを見つけ出せないか。

科学を巡るコミュニケーションでも、気持ちを大事にすることで誤解を解きほぐす道が開けるかもしれない。”

著者はそこに希望を託したいと言います。

私はコミュニケーションの目的とは

「相手に伝えること」ではなく
「相手に正しく伝わること」
そして、
「正しいことが相手に伝わり、
望ましい結果につながること

だと思います。

私自身もそれを実現する為の確かな答えがあるわけでも行動が伴っているわけでもないのですが、意見の隔たりがあったとしても

お互いの心を通わせ、信頼関係を築くことがまずは何よりも大切になってくるのではないか」と思うのです。

これは地球温暖化などを伝える科学コミュニケーションだけではなく、ビジネスやプライベートなど全ての場面で共通して言えることではないでしょうか。

🌿最後に、そんなことを思った私が一番印象に残ったメッセージを紹介します。
俳優の経験を通じて科学者に「伝え方」を教える挑戦を続けるアラン・アルダさん(発刊当時82歳)のメッセージです。

「必ずしも相手の考えに同意できなくても、その人がどうしてそのような結論に至ったのか、その考えの背景には何があるのかを聞くことで、私たちは何かを得て変わることができる」

🌿

「相手を愚かだと蔑んだり無知だと責めたりするような言い方はよくないということです。」

🌿

『お互いに敬意を持たなければ
私たちはいったい、
どこに行けるというのですか。』


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最後までお読み下さりありがとうございました✨



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