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邪馬台国諸説いろいろ

何しろ流されやすく影響されやすい性格なので、読んだ本に影響されて、私の中で邪馬台国はどこかと言うのはコロコロ変わっている。


邪馬台国畿内説

日本人はまず畿内説を支持すると思う。
だって、大和朝廷と邪馬台国って名前が似てるし、日本の中心は近畿だったのだから、そこに邪馬台国があったと考えるのは自然じゃない?

何でも、日本書紀には卑弥呼らしき人物も出て来るし
(神功皇后)、古事記にも卑弥呼っぽい人物が出て来るらしい!(倭迹迹日百襲姫)

高校くらいまでは疑うこともなく畿内説だったかな。

今では根拠はもう少し補強されていて、世間一般的には優勢なくらいかな? NHKなどでも畿内説を有力視してるような番組作りをしている。

纒向遺跡の発掘が進み、邪馬台国時代に纏向が栄えていた証拠が次々に発見されてきているから。

ただし放射性炭素測定誤差の可能性も高いが。

また前方後円墳が大和政権のシンボル的存在なのだけど、箸墓で前方後円墳の形が決まる。これ以前は歪だった。
前時代の古墳もここにある。ホケノ山古墳などだ。ホケノ山古墳などは確実に卑弥呼の時代に重なる。
箸墓は後年にずれそうだが、死後まもなく作り始めてもすぐには出来上がらないだろうから築造年代が後でも問題ないというのが畿内説の主張だ。

伝説で箸墓に葬られているのは卑弥呼じゃないかとされる倭迹迹日百襲姫。
前方後円墳が王陵として全国に広がっていくことこそが、当時絶大な勢力を畿内が持っていた証拠であり、邪馬台国がここにあった証拠でもある。

確かに畿内説はとても魅力的なのだけど、私が最初にんん? と思ったのは、畿内説が根拠にしている記紀の記述そのものだった。

神武天皇が九州から来ているのだ。

そして、天照大神と豊受大神が卑弥呼と台与であるという説だ。

これはかなり説得力があった。
天孫は九州に降臨し、神武天皇は九州から大和入りする。
ならば元々九州にあったんじゃ?

それからこれはかなり重要なことなのだけど、奈良から大陸渡りの考古資料の発掘がとても少ない。
魏志倭人伝の記述から、かなり交流しているはずなのに、他地域と比べて段違いに少ない。
頼みの綱の鏡、三角縁神獣鏡も、魏から貰った鏡ではなく、日本製なのは間違いないようだ。

邪馬台国九州説

そこで九州説を考え始めるが、こちらの方は実に説得力がある。どれもこれも、そうかも! と思わせるものばかりで、色んな説を読むたびに私の中の邪馬台国の位置が変わった。

なんというか、歴史ミステリーで面白いよね邪馬台国。

「邪馬台国」はなかった

古田武彦氏が唱えたのがこの説。邪馬台国の台の字は一の字だったはずだから始まるこの説はなかなか説得力があって、なるほど邪馬台国(邪馬一国)は博多だ!
を支持するようになる。

大和以外に王朝があったという視点は目を開かされる思いがした。

博多湾にあったとしてもなかったとしても、大和朝廷が全国を支配するのはずっと後世のことで、記紀から始まる日本の史書は、支配するようになってから書かれたものだから盲信は出来ない。

古代日本正史

これは、トンデモ本の類いではあるのだけど、めちゃくちゃ面白い。
著者は原田常治。婦人生活社を創設した実業家で、退職後趣味の古代史研究に全国の神社を回られた。

さすがにこの方ほどの財力も時間もないので全国は回れないが、旅のついでに寄った神社でとんでもない名前を目にすることもあり、この方の目の付け所はすごいなと思う。

神社だけ信じてても、江戸のあたりでなんか古代史ブームが来ているのか? 胡散臭い古文書が作られていたりするので丸呑みには出来ないと言うことに注意すべきだけれども。

邪馬台国朝倉説

安本先生が唱えている説。安本先生は膨大な知識を持っていて、検討に検討を重ねて朝倉説を唱えている。
著書が大量なのでどれを勧めたらよいのかわからないところだけど(朝倉説が出て来る本もそんなにないかもしれない)、データは色を付けることなく提供してくれているので、自分の調べたいテーマに沿った本を読むとよいと思う!

朝倉説をあまり押し出していないこともあり、日田に目が行ってしまう。
日田が日高と考えると、天皇家の祖先が名乗る日高彦とはこの地に由来するものではないのか。

しかし、日田は山に囲まれていて、都には向かない。
やっぱり朝倉なのか?

まぼろしの邪馬台国

宮崎康平の唱えた邪馬台国島原説。
宮崎康平は島原鉄道の社長だったり、作詞家だったり、多才な人だが人生半ばに失明している。後半生に捧げたのが邪馬台国探しで、その記録がまぼろしの邪馬台国という本だ。
地形から邪馬台国を探している。

この本の中に面白い記述がある。
邪馬台はヤマタイではなくヤバタと読むべきである、というものだ。

ヤバタだからといって、八幡と単純に結びつけるなと戒めているが、八幡の語源は本当に邪馬台だったのかもしれない?

日蝕と天岩戸と卑弥呼の死

高校辺りで文化人類学に興味が出て来ると、殺される王というものに目が向くようになった。

王は力を失うと殺される。

つまり卑弥呼も力を失ったから殺されたというのだ。
卑弥呼は日の巫女だから太陽の力を失うと殺される。
丁度卑弥呼の死の時期(247年から248年にかけて)、二度の日蝕がある。

1度目は247年3月24日、西の地平に。2度目は248年9月4日、東の地平に。

特に247年の日蝕がわかりやすいのだが、この日蝕は、九州でしか見ることが出来ない。
山口県東部より東は全て日没後になるのだ。

日没時の巨大な太陽が欠けていくのに古代の人々にどれだけ恐怖を与えたことだろう。

またこの時期は日蝕が少なく、これ以前100年近く日本では皆既日食が観測されていなかった。
そのことも古代の人々の恐怖に上乗せされていたかもしれない。

殺される王の説を取ると、日蝕が観測できた九州説を取らざるを得ない。

御量石

口伝によると、宇佐神宮の二之御殿の土の下には世の浮き沈みに合わせて浮き沈みする御量石というものがあるらしい。

明治の災害の時と昭和の改修工事の時に、二之御殿の社殿の下から石棺が出た。
御量石の伝説は本当だったのだ。御量石は石棺の蓋だった。

二之御殿は比売大神を祀っている。
比売大神というのは公式には宗像三女神ということになっている。

比売大神、神功皇后、応神天皇の三柱の神の総体を八幡の神と呼ぶが、そのうち比売大神が宗像三女神の総体となっている。

何故宗像三女神がここに?
何故神功皇后がここに?

謎はあるのだが、とりあえず置いておこう。
問題の二之御殿は比売大神であるので、宗像三女神の社だ。

この宗像三女神が何かと言えば私たちがよく知るのは弁天池に祀られる弁財天で、明らかに仏教の神でありながら、宗像三女神がほぼほぼ祀られている。厳島神社などは有名だ。
池や海の神なのかと言うとそれは違う。
宗像三女神は道の女神だ。道主姫とも言う。
三人の女神でそれぞれに夫や子がいるが、三女神は一体で、一人の女神の別の顔なのだ。それで三女神は常に三人一緒に語られる。
比売大神とは三人の女神が一人の姫となった時の名前なのだ。

宗像三女神が卑弥呼なのか?
それはわからないが、宇佐神宮の建つ小椋山は卑弥呼の墓と同じ大きさだ。自然の山の上に葬ったとすれば戦時下の当時でも巨大な墓を作れただろう。

根拠はそれだけなので薄いのだが、比売大神が何故宇佐に葬られたのか気になるところではある。

祇園山古墳

高良山の麓にある半ば破壊された古墳で、この古墳が卑弥呼の墓そっくりだというのだ。
高良山というのは久留米を見渡すところにあり、この平野は様々な邪馬台国と思われる怪しいものに満ちあふれている。

一時は邪馬台国かと騒がれた吉野ヶ里もこの平野部の端にあるし、ずっと東には安本先生の朝倉もある。
高良山の上には高良大社がある。
高良大社の祭神は高良玉垂命、八幡大神、住吉大神だ。
高良玉垂命は社伝によると神功皇后を住吉大神と共に助けた神らしい。
高良玉垂命とともに豊比咩が祀られている。
高良玉垂命の妃神であるとも言う。

正直、高良山に行ったときは、ここだー!
と思った。ここが邪馬台国だ!
何の根拠もないけど空気がそう言ってる。
これほど大国の都に相応しい土地もないし墓まである。

何の根拠もないのでこれもあっさり覆ることになったわけだけど。

邪馬台国阿波説

邪馬台国の諸説の中には東北だったり沖縄だったりもあるので日本全国どこでも説さえ立てれば何でもありなんじゃないか、と思わなくもないが、この阿波説は気合いが入ってる。
確かに確かにと思えるところもある。

記紀の神話で、一番最初に作られるのが淡路島で、2番目が伊予之二名島(四国)だ。大和でも九州でもない。

淡路島は阿波に行くための道で、阿波が特別な地位にあったことはわかる。
阿波には大宜都比売が与えられたが、大宜都比売は五穀と養蚕の女神で、地母神とも言える重要な女神だ。神話の中では早々に須佐之男に殺される。

その大宜都比売は阿波では八倉姫と言い、この八倉姫が卑弥呼とされる。
その他地名の類似なんかが根拠なのだが、記紀との絡みも考えると、九州・畿内の次くらいにおいてもいいかなと言うくらいには説得力はある。

様々な邪馬台国説の中でも頭1つ抜けて面白いと思う。江戸時代の創作なのかなあ?

江戸時代のものはこの他にも乙子狭姫、勘注系図等、説得力がありすぎて全て創作とは思えないものが幾つもある。
実際調べていくとそれらと古い時代の伝承の欠片はよく符合するので、江戸時代までは何らかの話が伝わっていて、それを改変しただけじゃないかなあと思いたいところではある。

これらの説を念頭に置いて、邪馬台国を解きほぐし、神話と繋げていこうと思う。

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