#41「自主性を促す指導」について考えてみる

最近はトップチームだけでなく育成年代のトレーニングに関わることが多くなってきていることから、

相手が考えられる余白を作ること(自主性を促すこと)ができる指導とはどんなものなのか?

といったことを考えながら仕事をすることが多くなりました。

そのために指導者側が配慮しておきたいことは

・信じること
・教え(過ぎ)ないこと
・見守ること

「子どもの地頭とやる気が育つおもしろい方法」篠原信(著)より

以上の3つと言われています。

「自主性を促すこと」と「放任」


先ほどあげた3つ(信じること、教え過ぎないこと、見守ること)について、

その言葉のままを実践してしまうと、ただの放任になってしまいます。

じゃあ、どこまで教えればいいのか?

と、私自身も色々考えてみたのですが、結局そこに明確な正解はありません。
それは、選手は十人十色でそれぞれ異なる性格のため、その人に合うアプローチ法も変化するからです。

とはいえ、放任にならず、信じて、教え過ぎず、見守るための具体的な基準は持っておきたいなと思っていました。

そこで、現時点で私の考える指導する際の優先順位が高いことは、

まずは型を覚えさせること

です。

例えば、
スクワットが大事だから、しっかり継続しなさい!

といったところで、誤った方法では効果が発揮されないどころではなく、怪我をしてしまうリスクがあるので、

適切なフォームで、その選手が実施している競技スポーツの特異性(競技トレーニングの負荷、日程など)や、選手自身のコンディションを加味した上でプログラムを組む必要があります。

ここで先ほどの話に戻ると、

果たして指導者としてはどこまで教えるべきなのか?

になるのですが、

基本的には全てしっかり教える必要があると思っています。

・・・あれ、自主性を促すって言っているのに全部教えるってどういうこと、、、???


と思われるかもしれませんが、

これは指導者として絶対に間違ってはいけない部分です。

もしここで、

適切なフォームは指導するけど、
どんなタイミングで、どのくらいの負荷(回数とセット数)を実施すれば良いのかについては指導しないとすると、たまたま上手くいくケースもありますが

・過負荷になり過ぎて怪我をしてしまう
・継続性がなかったり負荷が軽過ぎてトレーニングの効果が出ない

などの状況になることが予想されます。

もちろんこれは選手自身にも責任が出てくる話ではありますが、

そもそもこういった基礎的なプログラムについての知識や例、実際に継続することで得られたもの=型 を理解したり経験することができなければ、

発展的な考えを持つことは難しいです。

自由度が大きすぎること=放任 は、人にとってはストレスであり、適切な方法に辿り着くまでに多くの時間を要する可能性が増えてしまいます。

以前からこのnoteでも触れていますが、

選手の競技人生というのはとても短いもの。

その短い競技人生の中でできる限り効果的な方法で結果を出す。

そのために我々は存在します。

型をなるべく早く、安全に、適切に覚えてもらうことができることによって、その後の選手の自主性が育める期間が増やせて、結果的に成長することができると思っているので、

初めから自由度を大きくするのではなく、

専門家としての責任は十分に果たすべきだと思っています。

それでは、その自主性を促すために私が実践している・しようと心がけていることについていくつか挙げてみます

①新卒3年間はウエイトトレーニングを義務化


先ほどもスクワットを例にしましたが、

特にウエイトトレーニングについては、効果が出るまでには時間がある程度必要になります。

内容によっては、短期的に見るとむしろデメリットの方が大きい場合もあります。

よって、私はその継続期間を3年に設定しています。(高校生であれば高校の3年間)

3年経過すれば、後は選手自身の判断に委ねますが、

3年以上経っても継続している選手がほとんどです。

2〜3年が経過してくると選手によっては私が提示しているトレーニング以外についても質問が多くなったり、自主的に実践するような選手が増えてくるので、その部分に関しては特別大きなリスクがなければ積極的に促すスタンスをとっています。

実はそういった変化が出てきた選手は個人昇格しているケースが多いというデータもあります😎(鈴木調べ)

②結果ではなく、過程にフォーカスする


「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」

野村克也氏

この有名な言葉にもある通り、結果には偶然の要素が多分にあるようです。

よって、結果のみにフォーカスして褒めたり叱ったりしてしまうと、
相手は結果が出ないと褒められないと感じ、
チャレンジすること自体を放棄してしまうリスクが出てきます。

つまり、頑張っても結果が出ないことが怖くなり、そもそも結果が出せないような取り組みに逃げてしまう。ということですね。

しかし

「良い結果が出たのは、日頃からトレーニングの際に意欲的に取り組んでいたからだね」

などといった過程にフォーカスすることによって、選手自身もその過程の大切さに気づくことができるかもしれません。

そうすることによって、

自主性を促すことにつながり、偶然性の多い結果に左右されずに、トレーニングを重ねることができると思っています。


③医師のみならず我々トレーニング指導者も持っておくべきインフォームドコンセント


インフォームドコンセントとは

医師は患者に治療のメリットとデメリット、リスクと可能性、代替案などを説明して、患者が納得の上で治療に同意することが必要

ということなのですが、

これを我々のようなトレーニング指導者に置き換えると、

トレーニング指導者は選手(クライアント)にトレーニングのメリットとデメリット、リスクと可能性、代替案などを説明して、選手が納得の上でトレーニングの実施に同意することが必要

となります。

特に個人のトレーニング指導にあたる際に、この当たり前のことをせずにトレーニング指導をしてしまっている指導者の話を聞く機会がよくあります。

私自身もそうなってしまっていないか?

は定期的に振り返る必要があると感じています。

こういった義務を果たした上で、
その後を選手だけに託すのではなく、選手と一緒に考えて、
自分に依存させることなく適度な距離感を保ちながら、
より良い道を見つけていくことが大事だと思っています。


さいごに


自主性を促すことと、専門家としての責任を果たすことの2つを考えると、一見そこには矛盾があるように感じてしまいます。

それは、その2つを同じ期間の中で考えてしまうことが原因かなと思っています。

型を覚える必要がある時期

自主性を促す必要がある時期

それぞれに適した期間が存在し、

指導者としては、

今、目の前にいる選手はどのフェーズにいるのか?

を考えてみると、

接し方もみえてくるかもしれません。



昨日福島ユナイテッドFCとして、J3で100勝という節目を迎えることができました。
J3リーグでここまでの勝利を重ねるためにご尽力いただいた選手、スタッフ、サポーターの皆さんはもちろん、
J3に上がるまでに関わってくれた選手やスタッフ、サポーターの皆さんにも感謝ですね。
皆さんおめでとうございます。

そして、これからも1勝を積み重ねられるよう、微力ながら私も頑張っていきたいと思います。

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