トイレは便器だけじゃない。
狭いところが好きじゃない。
狭い場所は好き。でも、狭いところは好きじゃない。
なんというか、こう、内輪ネタばかりで盛り上がってる空間だったり、自分達の考え方以外は受け付けない空間だったり、精神的に狭いところは好きじゃない。
好きじゃないと言うと少し強がりになるかもしれない。自分がそういうところに入り込むのが苦手なだけ。
そんな事を考えていると、狭い場所についても考えるようになった。
一番狭くて落ち着く場所というのはどこだろうか。
うん、やはり、トイレだと思う。
トイレは汚くなんかない。私たちが汚しているだけ。
トイレは優しい。
私のピンチを何も言わず助けてくれる。
私の恥ずかしい姿を何も言わず受け入れてくれる。
本来の使い方をせず、心を落ち着かせる為だけに滞在していても、何も言わず座らせてくれる。
何も言わないのに、心地良くあたたかい。
たまに飛び跳ねてしまうほど冷たい態度を取られるけれど、それはきっと目を覚ませと言っているんだろう。
トイレは落ち着く。
お風呂場も良い。でも、やはりトイレだろう。
家族と喧嘩をして駆け込むのはトイレ。
学校や仕事に行きたくない時に籠るのもトイレ。
食べすぎた時に駆け込むのもトイレ。
飲みすぎた時に籠るのもトイレ。
トイレは私の全てを知ってくれている気がする。
ふむ。
「トイレ」というのは、何をもって「トイレ」とするのだろう。
やはり便器があることだろうか。
もちろん便器が主役であることに間違いはない。便器が無いトイレはトイレではないと言える。
もうひとつ、大切な存在があるとすれば。
トイレットペーパーホルダーではなかろうか。
これに関しては、無いトイレもある。無くてもトイレは成立する。
ただ、トイレに入ってそれが無いと判明した時、どうだろう。まるでこの世の終わりのような絶望感が生まれてこないだろうか。
それの無いトイレに入れられた時、人間は完全に無力。攻撃力も防御力もゼロ。
それが無くとも、トイレットペーパーがあれば良いじゃないか。と、思うかもしれない。
たしかに、ホルダー無しでペーパーだけ置いてあるトイレもある。
どちらも無いトイレに比べると、ペーパーだけあるトイレの安心感はえげつない。
でも、ホルダーに設置されたペーパーがあるトイレと比べると、人間のパフォーマンスが半分ほどにならないだろうか。
直置きされているトイレットペーパーも、どこか寂しそうな表情をしている気がする。
ちょっと萎びたような。ひと回り小さいような。
対して、ペーパーホルダーに設置されたトイレットペーパーは、とても自信満々でやる気満々で、いくらでもぐるぐる回してちぎってくださいよ。と、言わんばかりに胸を張っていて、心なしか光っている気すらする。
そんなトイレットペーパーに見守られていると、こちらも最高のパフォーマンスをしようと気分が上がる。
トイレットペーパーホルダーは偉大。
しかしながら、そんなトイレットペーパーホルダーにもいくつか種類があって、種類によってはこちらも少し戸惑ってしまう場合がある。
はて。
どんなトイレットペーパーホルダーがお互いにとって最高なんだろう。
今までに会ったことのあるトイレットペーパーホルダーを思い出してみることにする。
①THE トイレットペーパーホルダー
学校などでよく見かけるスタンダードなステンレスのやつ。シンプルイズベスト。
不要な部分を全て排除した、必要最小限の形。ペーパーを回す、ペーパーを切る。それ以外に何が必要だってんだ。そんな声が聞こえてきそう。
回転のスムーズさ、ペーパーの切りやすさ、どちらも満点に近いだろう。
ただひとつ難点があるとすれば、ペーパーを取り替える時に少しイライラしてしまう場合があること。
ペーパーの芯に通す軸がバネのタイプだった時。
この場合、無表情でスムーズに変えられる人は居るのだろうか。
バネをギュッとしたくてもペーパーの芯が邪魔をして、なかなか上手くギュッとできなかったり。
なんとか溝からずらせたと思ったら、バネの戻る力が大きくてビヨーンと飛んでいってしまったり。
だからだろうか。これのトイレでは、空のホルダーがあるというのに新しいペーパーをタンクの上に直置きしていることが多い。
設置した状態で満点を出す為には、その部分は我慢が必要なのかもしれない。
②シンプルでお洒落を極めすぎたトイレットペーパーホルダー
お洒落なカフェなどで見かける、ただ棒にぶら下げただけのやつ。①よりもあらゆる部分を削ぎ落とした形。
私、ミニマリストなんですぅ。そんな声が聞こえてきそう。
シンプルでお洒落。回転のスムーズさも申し分ない。そしてカラカラカラという音が鳴らない。静音。
しかも、交換がしやすい。スッと抜いてサッと装着できる。片手で簡単に。
ところがどうだろう。大事な部分まで削ぎ落としてはいないだろうか。
このペーパーホルダーに出会った時、全員が思うはず。
ペーパー切るのムズくないですか。と。
だからだろうか。これのトイレに行った時、切り口に引きちぎられた感がある事が多い。
お洒落を極めようと思うと、機能も削ぎ落とさなければいけないのかもしれない。
③とにかくストック!トイレットペーパーホルダー
あまり新しくないスーパーや商業施設で見かける、縦長で上にストックを収納できるやつ。見た目は大きくて野暮ったくてお洒落さはゼロ。
とにかく沢山ストックを入れられて、交換も簡単。
機能的ってこういうことなんですよ。そんな声が聞こえてきそう。
レバーを下げればストンと新しいペーパーがセットされる画期的なペーパーホルダー。
押すなと言われたボタンを押してみたくなるのと同じで、レバーがあれば下げてみたくなる。私を含め、多くの人がまだペーパーがある状態でレバーを下げたことだろう。
回転も申し分なければ、取り替えも楽しい。ペーパーのカットもスムーズ。
と、完璧かと思いきや、これにも落とし穴がある。
ストックを入れる時、前後反対に入れてしまっている場合。
ペーパーが反対回りになってしまって、変な切れ方をしてしまったり、引っ張り出しにくかったり、イライラしてしまう。
じゃあもう一度レバーを下げて交換すれば良いじゃないか。そう思うかもしれない。
のんのんのん。
このタイプには「使い切りロック機能」がついている。使い切らないとレバーが下がらない。
地獄。
④かたくななトイレットペーパーホルダー
最近よく見かけるようになった、上に小さな台が付いているやつ。ウッド調やステンレスのスタイリッシュな見た目が多く、①の最終形態とでもいうのだろうか。
スルッとスライドさせるだけで交換が出来るものがほとんど。
ペーパーをカットする部分もしっかりと重さがあって、ぐるぐる回してもカラカラという音があまり鳴らない。
ペーパー本体を触らなくても綺麗にカットする事が可能。
台がついているので、ちょっとしたものを置くことも。
ついに完璧のやつが出た。
でも注意してほしい。たまにかたくななヤツがいる。決して全部ではないけれど。
ペーパーをカットする部分が重い(固い?)のか、ペーパーの巻き数が多すぎるやつを設置してるのか、パツパツになっていてスムーズに回転せず、引き出そうとすると3センチくらいでちぎれてしまうことがある。
何度も引っ張って、何度もちぎれて、3センチくらいのやつが量産される。
意外とこれが一番イライラする。
それがなければ完璧かもしれない。
⑤ホッと安心なトイレットペーパーホルダー
大抵の家にあるプラスチックの白いやつ。
傷や汚れが目立つのが難点ではあるけれど、この見た目の素朴さには安心する。
おかえりなさい。そんな声が聞こえてきそう。
金属ではないから回転する時の音はカタカタするものの、カラカラよりは少し柔らかい。ペーパーをカットする部分も程よい厚みで重すぎず軽すぎず。交換する時も芯をクッと上に引き上げるだけで、自動改札機のようにパタンと軸が折れてくれる。
これが完璧なんじゃなかろうか。
ひとつ注意したいのは、パッと見いけそうな感じがしても、この上にスマホを置くと滑り落ちることが多い点。水平に見えても案外水平じゃなかったりする。
でも、これが完璧なんじゃなかろうか。
いつだって、探し物はすぐそこにあるんじゃなかろうか。
今回は代表的な5種類(個人的見解)について考えた。
いろいろ言いながらも、もちろん全てのトイレットペーパーホルダーに感謝と尊敬の気持ちを持っている。
思い返せば私はもっともっと沢山のトイレットペーパーホルダーに出会っていて、もっももっと物申したいトイレットペーパーホルダーがある。
またまとめられたらまとめてみたい。
なんの意味もないけれど。
トイレットペーパーホルダーは偉大。
でも、トイレットペーパーホルダーは絶対にそんな大きな顔をしない。
だから皆、なんの気無しに使うことができる。
今日も全国のトイレで、トイレットペーパーホルダーは何も言わずペーパーを回し続けているんだろう。
今日の一曲:明け星/LOST IN TIME
今日もすきだぞー!