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パスタ屋さんの智恵プリン

フードロスの問題は注視されて久しいが、いろんな仕組み上根本的な解決はやはりまだ難しくずっと存在し続けてるのが実情だと思う。
わたし個人としてできることは限られているが、食べ物を残さないとか買いすぎて腐らせたりとかを極力避けながら生活している。

ここで個人的に大切にしてるのは義務化や無理をせず楽しむことだ。「残してはいけない」「腐らせてはいけない」、出発点はそうだったとしても繰り返し意識するうち小さな呪いのようになって嫌になってしまう。それよりかは「美味しいからせっかくなので全部食べる」「買った食材はしっかり使い切って栄養を余さず摂取する」というような心構えの方がなんとなく楽しくて好きだ。

さらに言うならりフードロスに限らずこれらの問題に対してポジティブな空気感を伴って解決を提案するやりかたに出会うと心躍る。大小さまざまの課題解決に特化したデザインやプロジェクトがある中でも理に適っていてポップなやつがたまらない。わかりやすいところで言うと廃棄キャベツを害獣化してしまったウニに与えて問題解決しながら美味しく育てる神奈川県水産技術センターのやつとかたまらなく好きだった。全方位WINWINな上にとても可愛い。

個人的な話として最近好きだったのは、先日伺ったとあるパスタ屋さんのプリンだ。

そのパスタ屋さんではクリーム系トマト系問わず美味しいパスタをたくさん出してくださるが、デザートメニューは色々ある中でもプリンを超絶パワープッシュしている。どれくらいのパワーかと言うとメニューに大きく載ってるのは序の口で、パンとプリンをつけられるセットがメニューにあり、単体で頼むよりもはやお手頃なレベル。

もうめちゃくちゃ推されちゃって気になっちゃって頼んじゃったが、これが大正解!シンプルだけど上質な材料で構成されているのが一口でわかるくらいの美味しさ。全体的な印象としてはいわゆる固めなんだけど、こっくりもったりの舌触りもあり苦すぎないカラメルと融け合う。なんておいしいの、これは推すよね〜と思ったのだが、ハタと気がついた。

プリンの基本的な材料は、卵、生クリーム、牛乳。いずれもこだわればこだわるほど味わいの良さに直結しつつお店の味の個性にも繋がる。卸のことは詳しくないが、他の素材と大きく違わずある程度の量で買う方が効率的だろう。
けれど残念ながら日持ちしない。

もしかして…
クリームパスタの材料の有効活用なのでは!?
だからこんなにも美味しいし、日持ちもしないから推しがいもあるのか…!?

憶測に過ぎないし実情はフードロス解決とかではない可能性もあるけれど、もしかして…と思ったらとても好きになってしまった。食材の食べ方を一つに絞らず別のおいしさを提案しながらロス削減にもつながる、これはまさに智恵だ。智恵プリンなのだ。

AIの台頭もそれはそれはホットな話題だけど、私はあまり悲観していない。知識の応用と展開という意味においては速度やクオリティについて人間はいろんな観点からの選択を迫られるかもしれない。けど、生身の肉体とそこに近い事象の価値はむしろある期間を経たのちは上がると思っている。こんなにサンプリング音源が発達してなお生演奏の需要と価値がある。それに近い世の中になっていくんじゃないだろうか。 

そして肉体に近しい知識というか、智恵、もっと平たく言うとおばあちゃんの知恵袋的なやつも同様に評価は高くなるだろう。世界中に散らばるより良く生きるためのローカルなヒントが、1人の人間という凝縮された世界を救ったことは少なくないんじゃないだろうか。

そういった意味で、私はあのプリンを美味しかったなと話題に出す時「智恵プリン」と愛を込めて呼ぶ。食べ物と未来を愛する人の、素晴らしく美味しい挑戦かもと思いながら、想いを馳せるのだ。

某パスタ店のプリン、大好き。

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