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素焼きナッツもキラキラのことも何も知らない

「シンプルな服装のときはアクセサリーをつければ、それだけでサボり感がなくなります!」

といった言説をファッション誌で見かけたときの、あの衝撃。

えっ…なるほど…!?アクセサリーつける選択肢を持ててるってだけで何ひとつサボってないんだが…というか「シンプルな服」は「シンプルな服」でありサボっていないんや、なぜならサボり枠の服というのは別途存在していて…

といった調子で、まぁ衝撃の言語化を試みる脳の動きが止まらなかった。
雑誌側は、要は考えて選んで着替えるだけで偉いが、アクセサリーをつけるとよりその一連の行為が素敵になります、という趣旨のレベルアップ方法を伝授してくださっていたわけだが、まぁ何というか私にとっては図星だったのだろう。へへっ。生きてるだけで偉いのにシンプルな服にアクセサリーなんて合わせた日にゃもう宇宙大統領っすわ(?)

ところで、ここのところ素焼きナッツがめちゃんこ好きなのである。
塩やキャラメルなどの風味があるものたちもおいしいが、素焼きが好き。ナッツの味って200通りあんねんじゃないが、それぞれの味わいがしっかりと感じられてさながらマイルドな万華鏡を食べてるみたいな気持ちになる。

そのまま食べても本当においしいが、栄養価に期待しつつヨーグルトにアマニ油と蜂蜜をかけたものに素焼きナッツをゴロゴロ入れたものがもっぱら今週の朝食のスタンダードだった。うーん、今朝も食べたがこれを書いてる今もう食べたい。素焼きナッツはヨーグルトだけでなく、サラダに乗せれば美味しい上にオシャレっぽく見えるし、ひき肉を使ったカレーに入れれば食感のおもしろおかしさがより一層増す。アイスクリームに振ったって美味しい。

そこでようやく気づいたのだ。
シンプルな服にアクセサリー、は、なくてもちゃんと美味しい食べ物に素焼きナッツを付与した状態なのだと。
さらに美味しく楽しく魅力的になる術として、ナッツとアクセサリーは私の中でとても近い。ア〜そうだったのかと思って、ちょっと大ぶりのイヤリングをつけてみた。アイロンをしっかり当てた白いブラウスに生成りのパンツ。そこにゴールドのキラキラが足されて、宇宙大統領にはならなかったが、夏が嬉しいひとみたいでとても良かった。

裏の表記を見てみる。なんとなく癖でいつもそうするが、食品の正体が気になるというよりも活字が好きなんだろうと思う。原産地は一箇所ではなかった。それぞれの種類によってアメリカ、フィリピン、ブラジル、などなど。「カシューナッツはウルシ科の植物のため時々香りの強いものがありますが品質に問題ありません。」そうなんだ。

知らない世界だ、と思う。
私は素焼きナッツが素焼きのナッツであるということ以上の何も知らないなと思う。どうやって生えてるのか、どうやって収穫されるのか、選別や洗浄、運輸、パッケージング、小売、そこに関わる方々のお姿。何も知らないで、けれど美味しくいただいている。アクセサリーもそうだ。地金が18金で、バネで着脱できるイヤリング。しかしバネの規格も素材の変遷もわからない。どう磨いたら金属がキラキラになるのかも知らない。
(最近読んでる本で『知ってるつもり 無知の科学』というものがあるのだが、まさにこんな感じのことを書いてあり面白かった)

思えば、めちゃくちゃ服装が特徴的というわけじゃないが妙にオシャレ、という現象の正体も知らなかった。もちろんアクセサリーの有無だけではないがたくさんある要素のうちのひとつではあるのだろう。思いつかなかったことに驚いて、そこから先に拒絶してしまったら一生実感できない。全てを受け入れることが善とは言わないが、素焼きナッツをかけるように、シンプルな服にキラキラを足すように、新しい何かを知ってみようとしていくのは良いことなのかもしれない。

素焼きナッツ、大好き。

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