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2023年6月 信州温泉逍遥2023④【上諏訪 大和温泉】
前回
6/5 長野県諏訪市~帰還
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朝起きて窓を開けた
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露天風呂でシャキッと目を覚まして朝餉。時間の指定は特にされていなかったが、7時半過ぎには広間が賑わい始めたので自分も向かった。健康的な睡眠と健康的な朝餉でコンディションが整った
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チェックアウト時もご主人が応対してくれた。
「良いカメラで、良い画素?…で撮っていただいてありがとうございました」
と笑顔で主人が仰ってくれた。諏訪は幾つも好きな宿が有るのだが、ここも定宿にしたいなと強く思った。
なお、こちらは1泊2食付きで6,700円という驚愕の価格設定。安過ぎる。精算時にもこの価格を提示され、夕飯時の飲み物代が含まれていない旨を申し出たところ
「ラガー大瓶…………
あ そうでした………いやすみません」
最後までらしさ全開の主人であった。せめて飲み物代で儲けてください……
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「民宿 すわ湖」を出立し、この日のお目当ての温泉へ。駐車場が無いことはリサーチ済だったので、適当に見つけた有料駐車場「大手レイクパーク」に車を駐めた
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なかなか年季が入っている。Google Mapsでも出てこない
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街並みを撮りながら徒歩で温泉へ向かう。スナックべろんべろんでべろんべろんになりてえ
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場末感満載のスナック街
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てくてく
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なんとなく近くまで来たかなと思って周りを見渡したらすぐ右にあった。お目当ての「大和温泉」に到着
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うなぎの寝床のような入口には注意書きの貼り紙。先へ進むと民家の縁側にしか見えない帳場に主人が立っていた。
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主人から入浴の決まり事が書かれた規約を提示される。身体を必ず洗うよう言われたので、宿の朝風呂で洗ってきたことを申し出ると
「そうでしたか、それなら構わない」
とのこと。地元民以外の客は500円とのことで、湯銭を支払い浴室へと向かった
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某ウイルスの影響で長らく地元民しか受け入れていなかったこの大和温泉。4月より外来受付を再開したとの報せを受け、待望の訪問であった
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グリーンを基調としたこれまたうなぎの寝床のような浴室。主人曰くタイル目地の床下が相当ボロボロになっているようで、
「かけ湯は床に負荷がかからないよう慎重にお願いします。基礎がもうダメになってて、例えるなら高野豆腐の上にタイルを接着しているようなものです」
とのことだった。実際タイルには複数の段差が生じている上に、窓枠も歪んで沈下しており、目に見えて建物が劣化していた
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鼻腔をくすぐる硫黄の香りに心が昂るのを感じた。美しい翠色の湯が湛えられるのは細長いステンレス製の浴槽。もともとはほぼ正方形に近い浴槽だったが、男女別の浴槽にする為に中央から壁で二分したのでこのような形状なのだそう
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かけ湯はこちらから。浴槽は湯量だけで温度の調整をしているので、お湯の出しっぱなしで激熱になってしまわぬよう、使用後は必ず栓を閉めましょう。
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成分表
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終浴し外へ出ると、主人が珈琲を豆から挽いてご馳走してくれた。各地の温泉を泉質重視で巡っていることを主人に伝えると、色々な苦労話を話してくれた。
Google Mapsにはこちらの主人に対する辛辣なクチコミが散見される。
「監視されているようで気味が悪い」「高圧的に入浴法を指南してきて鬱陶しい」「先代がやってる時の方が良かった」etc…
実際に会って話を聞いてみると、常識を弁えた温泉愛好者にとっては至極当たり前の入浴マナーを説いているだけで、自分は特に窮屈に感じることはなかった。
彼奴等は己のマナーの悪さを顧みず、「不快な思いをした」という怒りに任せ、眉唾が過ぎる誇大表現でクチコミを書いているだけなのだと思う。
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「このくらい溜めただけでも色が分かるんですよ。冷めててもはっきり硫黄の香りがするでしょう」
洗面ボウルに溜まった湯を挟んで、暫し入浴マナーについての意見交換をした。
「『温まった気がしない』と言ってザーザーと源泉栓を開けて激熱にしたり、湯船の中でガリガリと身体を擦ったり、飛沫防止に協力してくれと言ってるのにガヤガヤ騒いだりタオル振り回したり…」
「それで注意しに行くと逆上する客もいるし、ふてくされて話も聞かずにそっぽ向いて生返事する客もいます。なかなか真意をわかってもらえることが少ない」
それでもなお狼藉を働く連中に対しては、湯銭を返金し退店してもらうという。
「上諏訪駅の観光案内所のスタッフにも、観光客からお薦めの共同浴場を聞かれたら
『大和温泉は外来受付してるけど、ボロいし使い勝手悪いし色々決まり事があるから、そういうのが嫌な人にはおすすめしません』
って観光客にアナウンスするようお願いしてる。ただの珍しいもの好きの物見遊山の人はそこで篩に掛けてる感じ」
ここまで書くとどうしても神経質な印象は受けるだろうが、面と向かって話をしていると、良質な源泉を良いコンディションで楽しんでもらいたいという思いが根底にあることがひしひしと伝わってきた。あとなるべく施設を傷めずに使ってほしいという思いも……
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一気に心を開いてくれた主人が、周辺の温泉関連施設を案内してくれた。
有料駐車場に車を駐めてきたことを話すと、隣の「湯小路いきいき元気館」の東側駐車場ならどこでも使って良いですよと言われた。主人とこちらの館長さんが仲が良いらしく、了承を得ているとのこと。車移動勢にはうれしい
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いきいき館の向かいにある地元民専用の「平温泉」。テルマエ・ロマエⅡの予告編の撮影に使用されたとのこと
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大和温泉から100mも離れていない湯小路源湯。こちらから側溝に沿って配湯管が伸びている
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大和温泉の貯湯タンクは硫黄成分でガビガビになっていた。主人曰く、大和温泉に初めて来て入口がどこか分からず、隣の家の庭に侵入し窓から浴室に入ろうとした不届き者も居たらしい。それはもうマナーの良し悪し云々じゃないのでは…
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別れ際、写真を撮りながら温泉旅行記を書いていることを伝えると
「私がマナーに対してあれこれ客に言って嫌な思いをさせてしまう機会が減るかもしれないから、是非詳しく書いてもらって広めてほしい。今日はお兄さんみたいな話のわかる人が来てくれて良かった。顔も覚えたよ。また来てね」
と手を振ってくれた。自分の拙い文章表現だけでは、取っ付き難そうな印象を拭うには限界があるかもしれないが、この記事を見て大和温泉に行こうと思った方が居れば筆者冥利に尽きますし、結果的にどんな形でも主人の一助になれば幸いです
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有料駐車場にもどり料金を精算。アナログな精算機だねえ…
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多分200円だろうなと思って100円玉2枚を投入したらお釣りが出てこなかったので多分200円だったんだと思う
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湖岸通りの「くらすわ」で土産物を調達し、諏訪市湖畔公園の日時計モニュメントへ。時刻は正午を示していた
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防災無線から流れるエーデルワイスのチャイムをベンチに座りながら聴いた。大好きな街です
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車山肩まで登り、「ころぼっくるひゅって」にて昼餉とした
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人気の高い山小屋カフェ。店内は空いていたが、テラス席は登山帰りの客でごった返していた
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「ゆるキャン△」1巻で志摩リンが訪問したことで特定の界隈ではあまりにも有名。自分は実に5年ぶりの訪問となった
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席を確保し、前払い制でオーダーする。料理が出来次第名前で呼ばれます
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ボルシチセット(アイスコーヒー)1400円。金はあるんや
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志摩リンと同じ席でランチを楽しみました。俺が志摩リンだ
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前日に通過した際はツーリング勢で混雑していたが、この日のビーナスラインは交通量も穏やかで走りやすかった
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R254を抜けて群馬県へ突入。下道レーシングがてら未訪問の道の駅スタンプを回収し、吉井ICから高速に乗った
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ノンストップで白河へ帰還。白河市「いげたや」のワンタンメンで恒例の夕餉
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帰還。人との触れ合いで心身が浄化されたとてもよい信州温泉逍遥でした。また次回
今回初めて訪問した道の駅
【群馬県】
道の駅 しもにた (下仁田町)
道の駅 甘楽 (甘楽町)
完