
『内なる殺人者』を読みました。
内なる殺人者
著者:ジム・トンプスン
翻訳:村田勝彦
内容紹介
保安官補のルーはいつも丸腰で拳銃も、警棒すら持っていない。
なぜならココは事件が起きないテキサスの田舎町。
ルーはある日、保安官のメイプルズに、娼婦ジョイスの商売を辞めさせるか町から追い出すか、の判断をゆだねられる。
ジョイスに会いに行ったルーはなぜかいい仲に。
そこには、ジョイスと、ジョイスに惚れているエルマーの二人を使い、兄を殺した犯人、町を牛耳る大物チェスター・コンウェイに復讐しようというルーの企みがあったのだった。
ジム・トンプスンを知ったのは『ポップ1280』を偶然書店で見かけたからだ。
ポップ1280があまりに面白かったので、『脱落者』を購入。
色々調べてみると本書の評判がよかったので購入した。
正直な感想を言うとこの三冊、似たような主人公、似たような設定、同じような話だ。
まるであだち充のマンガは同じ野球で主人公が同じような顔をしているみたいな感じか。
脱落者の感想を書いたときに言ったが、主人公はサイコパスだ。
それも、これぞサイコパスのお手本、と言っても言い過ぎではないほど完璧なサイコパスだ。
3冊の共通点はもう一つあるの、それは突然の暴力シーンだ。
ジョイスとエルマーが痴話ケンカの果てに2人とも死んでしまった、ように見せかけるため、拳銃も警棒も持っていないルーはジェイスを殴って、殴って、殴って殴り殺すのだ。
ルーがサディストだという見方もできるかもしれないけれど、ルーにとって、あくまでも暴力や殺人も目的をなしとげるためのひとつの行為にすぎない。
2人を殺害し帰宅すると恋人のエイミーが待っていて、軽い口論の末、彼女に、
『どうしてあなたはいつも人のために尽くしてなきゃいけないの? わたしのためにはなにもしてくれないのに!』
と言われてしまう。
その時ルーは、
なるほど、それがきみの考えていることか、ハニー。でもおれだってきみのために尽くしてるんだぜ――君の頭を打ちのめさいことでね。
と思っているのだ。
これほど恐ろしい文章が、かつてあっただろうか?
あったかもしれないが、その前にひとり殴り殺しているのが非常に効果的に働いている。
しかし考えてみて欲しい。
昨今サイコパスだなんだという言葉が認知され、それはこういう人だなんだと皆知っているし、知らなくてもインターネットで調べればすぐに出てきて知識にすることが出来る。
この小説は1952年に出版されたのだ。
サイコパスというのはあくまでも名称だ。
昔からそういう人は存在していたし、今も昔も人の本質というモノは変わりないのだ。