蝶野正洋

『自叙伝 蝶野正洋 -I am CHONO- 』を読みました。


自叙伝 蝶野正洋 -I am CHONO-

著者:蝶野正洋


内容紹介
すべてを語る“時は来た!”
「黒のカリスマ」初自伝!
白と黒、表と裏…今明かされる真実

カリスマプロレスラー・蝶野正洋が56年間の人生を綴る初の自伝本が登場。
生い立ちから始まり、プロレス界に身を投じ、トップを極めるまで、そしてレスラー休業中の現在の心境まで、過去・現在・未来の全てを語りつくしたファン待望の一冊。
35年間に及ぶレスラー生活から、芸能活動、アパレル経営、プライベートまでありのままの姿を告白。
今明かされる「黒のカリスマ」の実像!


以前、蝶野正洋と三沢光晴の試合を観た(一から最後まで見たわけではなくダイジェスト)とき、

「蝶野って受けの上手いレスラーじゃないのか?」
っと思ったことがあった。

その時の疑問が、この本で解消された。

そもそも、新日本プロレスは『攻めのプロレス』、全日本は『受けのプロレス』とも言われていたし、攻めのプロレスが時代的に主流だったころ、時代に逆らっても受けのプロレスをしようとしたのだ。
受けのプロレスといっても、別に相手の技を派手に受ける、という話ではない。

相手の技を受けて受けて、何度倒れても、倒されても、それでも立ち上がる、そこにこそプレロスの醍醐味があるというものだろう。
会社の意向によって結成させられた闘魂三銃士(武藤敬司、蝶野正洋、橋本真也)の中でも、蝶野はどうも出遅れているイメージがあった、と聞く。

それもそのはずで、他の二人に対し、中堅レスラーでいいや的な、志が熱くなかったようなのだ。

それが跳ねたのは第1回G1(AブロックBブッロクに別れ、シングル総当たり戦をおこない、得点の高い2名の代表選手を決め、決勝戦をおこない優勝者を決める大会。現在まで続く真夏の祭典(今年は東京オリンピック開催のため、秋に開催))で、大方の武藤敬司優勝予想を覆し、蝶野が優勝したときだろう。

そしてなにより、連覇からの第4回目優勝からのヒールターン、その後の『nWo』だろう。
驚いたのはnWo加入からのヒールターンはなく、このまま惰性で生きていっていいのかという不安と選手会長としての気苦労。打開するために、フリーランスになろうとするも拒否されたりとかの会社の対する不満。
これらを打開するには、とりあえずマスコミの前で既成事実を作ってやろうとG1優勝後に反体制をアピールしたのだ。

したのはいいがその後のことはなにも考えていないのに、マスコミにはヒールタンを書かれ、そこに偶然ハルク・ホーガンのヒールタンからのnWoがあり、nWo入りがあったという、ほとんど無計画だったのには驚いたというか、面白いというか。

武藤敬司は元々柔道でオリンピックの強化選手にまでなった実力者で、は海外遠征でアメリカに行き活躍した(グレート・ムタで)。
散々ガチンコの世界に身をおいていた武藤にとって、ガチンコの強さの必要性は必要がなく、道場で一番ガチンコが強いとかどうした、道場なんかはせいぜい20人ほどだ、そのなかで一番だからといって何の意味がある?
上には上がいるというのを、武藤が柔道をやっていた時代に嫌というほど経験していたのだ。

更にアメリカプロレスは年功序列ではなく実力の世界。
この選手が試合に出るから客が来る。
ドル箱レスラーになればなるほどギャラが上がる。

そんな世界を経験して、見てきたからこそ、新日の暗黒期と言われる、格闘技路線に嫌気がさして全日本に移ったのだ。

海外遠征先が欧州だった蝶野も武藤の考えと近い、同じだったとは知らなかった。

nWo加入にしろ、先見の明があったのだ。

首の故障。
開店休業状態のプロレスラーとしての気構え。
年末の『ビンタおじさん』や番組の司会者をやる理由。

読む、めくるページを止めることができず、一晩で読んでしまった。

プロレスラーとしての蝶野正洋を知らない人にも、是非手にとて欲しいところである。

思っていることは言わないと何も起きない。

それが会社にとって反会社の発言であっても。

その辺りは、いわゆる「キャラ変」した内藤哲也にも通ずるところではある。(二冠取ったしな)


なお、『時は来た』『1・4事変』『猪木問答』にも触れられていて、最後に特に爆笑してしまった『時は来た』についての説明だはしておきたい。

1990年2月10日、東京ドームで橋本真也と君で、アントニオ猪木と坂口征二と試合をすることになった。

試合前の楽屋にテレビのレポーターがコメントをとりにきた際、

『もし負けるということがあると……』
と言ったレポーターに対し、

『でる前に負けること考えるバカがいるかよ!』
と言って猪木がレポーターをビンタし、楽屋から追い出したのだ。

次に対戦側の蝶野・橋本組の楽屋コメントになり、蝶野は、

『潰すよ、今日は。オラ! 見とけよ。オラ!』
と気合い十分。

そしてマイクを向けられた橋本は、

『時は来た。それだけだ』

と言いはなったのだ。

その橋本のコメントに蝶野が思わず笑ってしまい手で口元を隠しごまかした、ように見えた、
いや、確実に笑っていた。

このときの現場からの第一証言に、さすがに声に出して笑ってしまったのでぜひその目で確かめて欲しい。

本書で蝶野は、闘魂三銃士は、武藤が長男、蝶野が次男で橋本が三男と表現していた。

蝶野から見た橋本は、どこまでも無邪気で少年心を失ってしない男のように思えた。



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