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トゥブライフ2日目

 今日は暑い!
 外にいると背中が熱い。
 天気が良い日に服や髪を洗うみたい。
 しかし洗濯物は、洗剤を落とさず絞って芝生に干している。

 汚れが落ちる仕組みとして「すすぎが必要」と言いたかったが、水が貴重とわかっているから、ただ見ていた。

 朝は相変わらずパンとミルクのバター。
 昼はお隣さんがホーショールを作ってくれた。
 そしてこれも相変わらず、ストーブの隣に羊の頭。
 洗い物は鍋などを桶代わりにして洗って拭いている。

乳を加工する様子

 ここじゃ自分は当然ながら仕事がない。
 馬の調教も車の修理も家具を作る事もできない。
 だから、やる事は子ども達と遊んだり家事を手伝ったりするぐらいで一日が長い。

 ヤンジッドルマさんが「同じ毎日で飽きるだろう」と言ってた意味がわかった。

まさに自由

 何もない草原で、子ども達は大人が廃棄した物を何でも遊び道具にする。
 何かのパイプでリンボーダンスしたり、ちぎって拡声器みたいにしたり、仔牛に繋がれたロープで縄跳びや綱引きしたり、周りにある物は何でも。

 私は精神的にはともかく年齢的には大人なので、子ども達より長く子ども時代を終えているから、当時を思い出して率先して使い方を提案した。
 一緒にいてわかったのは、子どもが子どもとすぐ仲良くなれる理由かもしれない。

 特にまだ幼い子はたくさん考えたり感じたりしてても大人に伝える語彙と手段が少ない。
 それを子ども同士は理解し合っているから、お互い大人より注意深く相手の気持ちを考えるし、根気強く相手に向き合える。その時間もある。
 だからモンゴルで幼児に等しい私は、大人より子ども達と仲良くなった。
 日本では子どもと遊ぶのは得意なわけじゃないにも関わらず…

 今日は私が持ってきたモンゴル語の本に載ってた「ザヤニハニ(運命の人)」が子ども達のキーワードになっていた。
 世界中どこでも、恋愛ネタは人をからかう良いネタになるみたい笑
 大人も子どもも目が良くて使わないから、私の眼鏡も人気の遊び道具。

 今日でやっと全員の子どもと遊べて個性を把握できた。
 モンゴル語は日本の発音にはない英語みたいなR音の他、フランス語でも苦労した空気を含んだような音がたくさんある。
 だから名前が難しすぎて、顔と性格で判別している。

 不思議な事に、自分が子どもだった頃の環境と変わらない。
 歳に関わらず男の子の方がスポーツは上手いけど、女の子の方がケンカは強い。
 運動ができるモテそうな子、ワガママだけど優しい子、すぐ泣くのにお調子者な子、イジワルだけど素直な子、面倒見がよくて明るいお姉ちゃん…
 だけどイジメはない。
 泣いたり泣かせたりしても他の子も私も入っていって、またすぐ一緒に遊ぶ。

 本当に子どもに戻ってしまったような気持ちになる。
 街では良いお兄ちゃんで、今も頼りになるガイドのチンギスもすっかり無邪気な子どもになっていて微笑ましい。
 風でドアが開いただけでも一番騒いで、フリかもしれないが怖がって、他の子にドアを閉めに行かせる。

 サッカーでは私のチームはチンギスより年下の兄と幼児の弟の兄弟、他の家の幼児の男の子とチーム。チンギスは同い年くらいのお姉ちゃんとほぼ大人のお姉ちゃんと赤ちゃんのチーム。
 私のチーム弱くない?と思ったら、遊牧民の子どもは強い。
 チンギスより年下に見えるのに、兄弟揃ってボールの扱いが上手くボールを渡さない。
 プロみたいに他の子をドリブルでかわして、兄も弟もたくさんゴールを決めていた。

 夜ごはんはアンチャイでも食べた蒸し焼きそばが出た。
 味が違って、ファミリーの物も美味しい。
 そしてこれにもケチャップ。
 やっぱりみんな味を変えたい気持ちはあるのか、いつも全ての料理にケチャップをかけている。

 乳搾りのため、子ども達と仔牛を集めに行った。
 トイレも家畜も全てが遠い。
 でも全員、それが普通みたい。

 一番お姉ちゃんな子は明るく優しい子だと思っていたけど、素が出てきたようで牛にはとてもバイオレンスだった笑
 叫びながら牛の行き先に棒を投げつけて牽制したり、普通に当てたりしている。
 みんな走って追いかけていたけど、追うと逃げるから歩いた方が良い気がした。けど、先輩達のやり方に従った。

 デールは作業服のような物なのか、乳搾りの時にみんな羽織ってくる物は酷く汚れたり破けたりしている。

 湿った風が吹いてきて雨の予感がした。
 遠くを見たら、文字通り雨が近づいて来るのが見えた。
 広いから大きな雨雲が雨を降らしているのや、大地の草が濡れて濃い緑に変わってくるのが見える。

 上着だけレインジャケットを羽織りに戻ったら、みんな雨の準備をしていた。
 暑かったからめくって風を通していたゲルの裾を戻してビニールで補強したり、子どもも屋根に登って覆いを閉めている。

 戻ったら調教師のおじさんと他の人に「雨でカッパ着るなんて日本人らしい」みたいに笑われた。
 乳搾りが終わって家に戻ったけど、子ども達は嵐の中でも外で遊ぼうと言っていて信じられない。

 それでもどんな様子か気になって外に出たら、他の家に駆け込んで行くのでついて行った。
 しばらくみんなで姉妹の家にいたけど、やっぱりモンゴルでも、夜に人の家にいるのは良くない事みたい。
 大人が戻ってくる車の音とライトで姉妹にけしかけられて、急いで自分達のゲルに戻った。

⬆️金沢のモンゴル料理店AnnChai⬆️


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