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[ 読了 ] 下の者は貧乏をして上の者はいい車に乗る(松本清張「昭和史発掘2」文春文庫)

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天理研究会事件。

松本清張によれば,天理教の教えに「貧に落ちきれ」というものがあるらしい。天理研究会を作った大西は,その教えを実行し,全財産を教団に寄付したという。下の者は貧乏をして上の者はいい車に乗る。そして,貧に落ち切った大西は,警察に踏み込まれた際,多くの金塊とあったという。

子どもだったら,おかしいね,どうして私たちは貧乏をして,教団のひとはいい車に乗っているのと疑問に思うだろうし,大人に聞きもするだろう。しかし,大人はそれをおかしいとも思わない。なぜだろう。

わたしたち,ひとりひとりは,それぞれ自分の幸せを追求することができる。ただし,ひとに迷惑をかけない範囲で。

誰も自分の体や時間やもちものや頭のなかを,他人の勝手にはされてはいけない。わたしたちの間には,きちんと境界線が引かれている。境界線を超えて勝手にひとのところに入ってきてはいけないし,入っているのを許してもいけない。

ひとりひとりの境界線が守られないと,ひとりひとりが自分の幸せを追求することも,また,できなくなるからだ。

ひとりひとりの在り方を大切にしない組織は,宗教組織だけではなく,どんな組織でも,今後きっと存続できないだろう。

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