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税込8,980円のレンジファインダー機(後編)

2024年7月にコンパクトフィルムカメラ“ペンタックス17”が発売された。予約開始からすぐに受付が終了するほどの人気で、約2ヶ月が経過した現在でも簡単には購入が出来ないのではないかと思う。おそらく生産数も多くない中、それ以上の注文数が来たということなのだろう。どの辺りが購入者たちの心を揺さぶったのかは、私ことアラサー会社員には分からない。ただ、2024年に発売された最新のコンパクトフィルムカメラというのは大きな魅力だったのかもしれない。日本のメーカーは、世界中で“名機”とされているようなフィルムカメラを作ってきた。しかし、それも遠い“過去”になりつつある。17はその中に射す光かもしれない。一方、私はその過去の光を磨いてみたいと思う。



フィート

1979年に発売された“オリンパス XA”を8,980円で手に入れた私。某フリマアプリを介して届いた個体は、バリア上部に《JCII 16 PASSED JMDC》という金色?のシールが貼ってあった(雑に扱いすぎて今や消えかかっている)。広大なインターネッツで調べてみると、“JCII”は財団法人日本写真機光学機器検査協会(現・一般財団法人日本カメラ財団)の英語略称のようだ。ここは以前に記事にした日本カメラ博物館を運営している財団法人である。一方、“JMDC”は1959年に設立された財団法人日本機械デザインセンター(当時)の英語略称だそう。どうやら海外への輸出時に「しっかりと日本で検査した品ですよ」というような意味合いで貼っていたらしい。なお、これは1992年まで続いたとのこと。

すると、我が家のXAは逆輸入された個体なのだろうか。それとも、その予定だったが国内にまわされた在庫なのかは定かではない。関係するかは謎だが、我が家のXAの距離計表記はフィート(ft)になっている。最短撮影距離は2.8ftなので、センチメートルに直すと85cm程度。こちらも調べてみると他の記事ではメートル表記と思われる個体もあったので、輸出用というのはあながち間違いではないかもしれない(本当に海外へ渡ったかは別として)。そうしたわけで、フィートに慣れない私としてはファインダーを覗いて薄い二重像を合わせることで撮影している。また、XAは“絞り優先AE”なのでラフに撮影したい場合はパンフォーカス的な絞りにしておけばノールックでも安心して撮影は出来るだろう。

ニューエラ的なシール
よく見るとフィート表記
別売りのフラッシュユニットを使う場合は“Flash”の位置にバーをスライドさせる

小さくて大きな問題

ボロボロになったモルトは、京都のホテルの一室で貼り替えられた。その後に装填したフィルムも問題なく現像から上がってきて一安心。しかし、手のひらに収まる221gのボディ(フィルム未装填時)だが1つ困ったことがある。それは「持つところが少ない!」ということだ。グリップもないので右手でガシッと握ると、ちょうどシャッターボタンの位置に人差し指が掛かる。設計としては完璧だ。ただ、前編に綴ったようにバリアが開いているとシャッターが切れる状態になる。しかも、そのシャッターがゆるゆるなので意図しないショットが生成されてしまうのだ。そこでストラップを付けようと思ったのだが、ここに大きな問題があった。これがまったく見たことのない形状になっているのだ。

愛用しているピークデザインのアンカーも入らないし、他の金具やストラップも付けられない。どうやら純正ストラップしか付けられない雰囲気で、このジャンク品に付属しているわけもなく(絶望)。ライカでは何かと「あれもこれも別売りにしすぎだ!」と憤慨されているSNSの投稿を見かけることがあるが、この時代のカメラも“大概”なのかもしれない。奇跡的に富士越カメラさんに純正ストラップの中古品があったので、すぐに新橋へと向かって無事にゲット。XAの購入を検討されている方は、この辺りのアクセサリー(有無)も確認しておくのが良いだろう。さて「それで、結局このカメラはどうなんだ?」と問われれば「見た目のチープさからは想像出来ない写真が出てくる」とお応えしたい。

赤い丸で示した箇所がストラップを付ける部分
純正ストラップ
いやいや、見たことありませんけど??
油断するとこういうことになる(in 京都)

FUJIFILM FUJICOLOR 100
FUJIFILM FUJICOLOR 100
FUJIFILM FUJICOLOR 100
FUJIFILM FUJICOLOR 100
FUJIFILM FUJICOLOR 100
CineStill 800T
CineStill 800T
CineStill 800T
CineStill 800T
CineStill 800T

これまで

顛末

コンパクトフィルムカメラゆえ、フルマニュアルのカメラよりかは良くも悪くも簡素化されている。それでも、フィルム装填時や巻き戻し時は手動だったりと“普通”で、十分にフィルムカメラの所作は味わえる気がした。このサイズでありながら、ハーフサイズ(フォーマット)ではないというのも愛らしい。私はライカMDaの不在を埋める存在として迎え入れたが、使ってみるとサブという位置付けでは勿体無いと思うほどによく出来ていると感じた。ちなみに、ボディ側面に接続して使うフラッシュユニット“A11”も存在している。税込8,980円で付属しているわけがないので私は所有していないが、完全体で売られている個体も見かけた。より幅広く楽しむとしたら、フラッシュ付きも良いかもしれない。

結果論として、今回はジャンク品でもまだどうにかなるレベルだった。ただし、それは運が良かっただけで皆様に推奨することはまったくない。加えて記載すると、約1ヶ月ほど使用してレンズの絞り(羽根?)がおかしくなっている気がしている。よって、現在は修理やメンテナンスをしてくださる場所を探している私だ。最終的には購入した以上の修理費用が掛かるかもしれない。それにしても、こんなにも面白くて良いカメラが埋もれていくのは勿体無い気がする。以前も引用した「(99年に発売された曲がなぜ時代を超えて愛される?という問いに)新譜かどうかという意識はなく、その人がその曲に出会った時が新譜」という宇多田ヒカル様の言葉を思い返す。過去のものにするのはその人の都合か。

フラッシュユニット接続面
オリンパスXA

付録(RETO AMBER T200, AMBER D400)

RETO AMBER T200
RETO AMBER T200
RETO AMBER T200
RETO AMBER D400
RETO AMBER D400
RETO AMBER D400

(おわり:たぶん)

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