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会社員、オールドレンズを買う(ジュピター11 13.5cm)
序文
ビートルズを知ったのはいつだったか。その正確な出会いは覚えていないが、中学生の頃に母にねだってバンドスコアを買ってもらった(現在も自室の収納にある)。両親は、直撃世代よりも少し若い。彼らが高校時代に通称“赤盤”と“青盤”のLPが発売されて、父は通学定期の代わりに後者を購入したらしい(後に行方不明)。私ことアラサー会社員は、中期から後期のビートルズが好きだ。よく聴いているアルバムの1つに『ザ・ビートルズ』がある。真っ白なジャケットから通称“ホワイト・アルバム”とも呼ぶ。その1曲目は『Back In the U.S.S.R.』から始まる。我々世代には馴染みがないが《U.S.S.R.》とは、ソビエト社会主義共和国連邦(以下:ソ連)の英語略称なのだ。私が生まれた1991年、ソ連は崩壊した。
非標準レンズ
「ライカのレンズと言えば?」とユーザーに問い掛ければ、焦点距離35mmまたは50mmのそれらが挙がるだろう。実際「初めてMシステムを購入する方は同時に50mmのレンズを購入する」とライカストアで伺ったことがある。デジタル機では特に関係ないが、M3から始まったフィルム機のファインダーなどとの兼ね合いで「結局は50mm、ちょいと広角だったら35mmが使いやすい」と落ち着いているのだと思う。とはいえ、現行品(単焦点)としては広角で21mm /望遠は135mmまでのレンズがラインナップされている。特に50mmよりも望遠のレンズについては人気がない。そう記すとかなり語弊があるが、レンジファインダーということが前提になると総じて“使いやすい”と言えないことは確かであろう。
アポ・ズミクロンと言えば35mmか50mmのみが取り上げられるが、ひっそりと75mmと90mmも製造されている。しかも、価格は先の2本に比べれば極めて安い(安くない)。他にも、遡れば木村伊兵衛が愛していたというタンバール(90mm)や、山岳エルマー(105mm)など有名な望遠レンズは幾つもあるのだ。この度、私のなかでレンズ交換式デジタルカメラの断捨離が連日連夜激しく議論されている。その延長で「Mシステムで望遠レンズを付けてみるか?」という意見が出た。それも焦点距離135mmのレンズを。ライカの純正レンズは数十万円するイメージであるが、これまで記載してきた事由によるものかそこまで高額ではない。L39マウントに至っては、純正品ながらも二足三文で販売されているほどだ。
Back In the U.S.S.R.
私が購入したのは“Jupiter-11 13.5cm F4”である。「ライカはどこへ行ったのか!」という困惑の声も聞こえてくるようだが、こちらはL39マウントの所謂“ロシアレンズ”。秋葉原の東京CAMERAさんで15,400円で売られていた物を購入した。これを選択した理由は、価格および質量と「なんか黒くてかっこいいじゃん」という部分のみだ。レンズ内にわりと大きなゴミが入っていたりクモリはあるが、試させてもらった限り問題はなかった。第二次世界大戦でドイツおよび日本は敗戦し、戦勝国となったソ連は進駐していたドイツ東部にあったカール・ツァイス(の工場)を接収したそうだ。その歴史の中で誕生したのがキエフという国営カメラブランドと、この“Jupiter:ユピテル/ジュピター”というレンズ群らしい。
ソ連が占領していた地域は東ドイツとなり1961年には東西を分断するようにベルリンの壁が造られた。さて、このロシアレンズの“沼”は意図的に調べないようにしている。当然、かなりの深さを感じているからだ。ジュピターのレンズには特徴的なマークが彫られており、その違いでどこの工場で製造されたかというのが分かる。また、シリアルナンバーの前2桁は製造年とのこと。総合して確認すると、私が購入したレンズはKMZ(クラスノゴルスク機械工場:モスクワ州)で1956年に製造された“ゾナー 13.5cm F4”のコピーのようだ。しかし、この黒い鏡筒は検索しても出てこない。購入した日に伺った近江寫眞機店さんでも「見たことがない」という話になった。いつ頃かは不明だが、リペイントされているのかも。
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これまで
価値のゆくえ
幾つかの選択肢があるなかで135mmを選んだ理由。それは“エルマー3.5cm F3.5”を購入した時に揃えたM/L変換リングが関係している。勿体ぶったが、単にそれが35mmと135mmに対応したリングだったのだ。まずはお試しとして望遠レンズが欲しかっただけなので、そこまでの金額は出したくない。レンズの状態からも清掃や研磨などを依頼しようかとも考えたが、当面はこのまま使うことにした。このレンズはジャンク認定ではなかったが、カビやクモリなどの事由によりMシステムで使える望遠レンズが数千円で売られていることもある。これをどう感じるかは人によると思うが、最高描写・性能という言葉に疲れた時は寄ってみるのも一興ではないか。決して、貴方の期待通りになることはないだろう。それでも。
(おそらくつづく)
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