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「ブルーハーツ的な何か~未来人のための人生論~」【前】PTA向け講演会レポート

こんにちは!高校教員応援マガジンです。
今回は、林先生が普段、講演会でどのようなお話をしているのかをご紹介します。
教員の皆さまの日々の指導や講話など、コミュニケーションのご参考になればと思います。



PTA向け「教養講座」での講演

先日、北海道高等学校PTA連合会石狩支部「教養講座」で講演をしました。
保護者100名、管理職等先生が20名参加されました。

内容は全てお任せでしたので、何を話そうか、考えました。
PTA……PとTの共通点は「教育する」ことです。
私の経験を踏まえ、教育者としてのあり方を話すことにしました。
様々な課題や困りごとに向き合っているP&Tへの応援の気持ちを込めて
そう、教育とは激励です。

タイトルは、奇をてらいました。
「ブルーハーツ的な何か〜未来人のための人生論〜」です。

主催側の挨拶の中で、タイトルが「?」で興味をもったとおっしゃっていて、ニヤリとしました。
普段、PTAのこのようなイベントに参加しない先生やパンクロックが好きな保護者の方も参加されたと聞き、ニコリとしました。


雰囲気づくり、思考活性化に「ペアトーク」


講演や研修会では、和やかな雰囲気作りをめざし、最初に「アイスブレイク」「チェックイン」としてペアトークを行います。
1、2分の短い時間ですが、これは必ず盛り上がります。

盛り上がるので「ハイ、時間です!私が話さず、このままおしゃべりしてもらった方が、お互いに幸せかもしれませんが(笑)、そういうわけにもいかないので――」と言って区切りをつけることにしています。

その後も「このことについて、どう考えますか。隣の人と話してください」「ここまでのパートについて、近くの人と感想を伝え合ってください」など、何回もペアトークを行います。

ペアトークの良い所として、様子や聞こえた言葉から、私の話すことやスピードを調整することができます。
話の力点を動かすことが可能です。
また、私自身、講演や研修会でアウトプットする場面があると、思考がより活性化したり、ペアトークの相手から違う気づきを得ることができたりします。
「後で、アンケートで」ではなく(事後のリフレクションも必要ですが)、その場で考えを伝え合うのがよいと思い、取り入れています。

講演は、いつも自信がありません。
しかし「自信がつく日は一生来ない」と言い聞かせ、自分が本当に思っていることを、心を込めて差し出すしかないと腹をくくっています。


ここからは、講演の一部を再現してみます!


導入ペアトーク①

では、チェックインしましょう。
隣の人とおしゃべりしてもらいます。
「今日は絶対誰とも話したくない」という人は手をあげてください。
――いませんね。

では、自己紹介し、昨日の朝食のメニューを説明してください。
時間は、1分半です。ハイ、どうぞ。
(1分半後)
……ハイ、時間です。ありがとうございます。
説明できましたか? 思い出せましたか?
「昨日の」というのがポイントです。
私たちの脳は、思い出そうとすると前頭葉が活性化します。頭がよくなります。
これは脳科学者も言っていることです。
頭をよくしたければ、想起の時間を大事にしてください。

昔は振り返る時間はいくらでもあったのですが、今はスマホで時間を埋めてしまいます。
指の運動はほどほどにしましょう。

また、朝食の大切さは言わずもがなです。
子どもたちに言う以上、私たちも率先垂範しましょう。



導入ペアトーク②

では、2つ目のペアトークです。

今度は、自分の「推し」について、語り合ってください。
2分間です。ハイ、どうぞ。
(2分後)
……ハイ、そこまでです。ありがとうございます。
朝食の話以上に盛り上がっていましたね。

そうです。「推し」の方が力が入りますね。
皆さん、楽しそうでしたね。
このまま放置しようと思いましたが、そうもいきません。

「推し」とは、応援しているということです。
応援は、大事な行為です。
応援したいというのは、いい感情です。
応援の仕方はよく考えなければなりませんが、攻撃的な批判や誹謗中傷が目立つことがある世の中ですから、応援は大事にしましょう。

応援。
皆さんはもちろん、先生は生徒を、保護者は子どもを、アイドルなどよりも「推し」ていますよね?



さあ、チェックインは終わりました。
さて、今日の講演ですが、「自由に話してください」と言われました。
なかなかないことです。
自由と言っても、私の「推し」の宇多田ヒカルのことを延々と語るわけにはいきません。

PTAは子どもたちのための組織ですから、私たちの教育がどうあるべきか、教育者としてどう生きるべきかを語りたいと思いました。

かと言って、一般的な本に書いてあるような話をしても仕方がないと考え、自分の経験を踏まえ、ちょうど集中的に聞き直していたブルーハーツの曲を紹介しながら語ることにします。


本題に入る前に――

その前に、自己紹介します。
私の趣味の一つは走ることです。
朝走ります。走ると整います。
サウナよりランニングです。
心も頭も整います。また、走るときは前を向きます。
後ろ向きでも走れなくはないのですが、基本、前を向きます。
私は強い人間ではないので、形から入ります。
ルーティンに頼ります。
走るおかげで、前向きなマインドになります。

この中に、北海道マラソンを完走した人はいますか。
(2名、手を挙げてくれました)
皆さん、拍手しましょう。
(拍手)
ありがとうございます。私も完走しました。
拍手は人をよい気持ちにしてくれますね。

さて、私は1989年、平成元年に道立高校の教員になりました。
2校目で尊敬する校長に出会ってキャリア転換し、管理職となりました。

枝幸、野幌、札幌北という地域も規模も特色も異なる3校の校長を務め、豊かな教職人生を送ることができました。
苦労もありましたが、それを凌駕する喜びを味わうことができました。

校長の仕事には集会での講話がありますが、4つの同じような話を繰り返しました。

1.先手挨拶・先手拍手・先手挨拶、先手拍手。
禅宗の教えでは挨拶とはお互いの悟りを見抜く命懸けの行為。
自分から行く。自分から開く。
拍手は相手を励まし自分を励ます。先手をとれ!

2.よさと課題のない人も組織もない。
よさを磨き、広げ、深め、つなげろ。課題はスルーしない。手を打て!

3.学問せよ。「問う」を学べ。「学ぶ」を問え。
学んで、問う。問いによって、学ぶ。
問いが全て。問いの立て方を学べ。
学ぶ姿勢が全て。学びのあり方をアップデートせよ。

4.パーパスとゴールを区別せよ。
パーパス(目的)は常に「これか?」と探究すべきもの。
具体的、客観的なゴール(到達目標、手段)も追求せよ。

生徒に話すことは、自分が日常的に自分に言い聞かせていることです。
手元を見なくても、具体例とともに、いくらでも話せます。


昨年3月末に定年退職した後は、個人事業主として代々木ゼミナール教育総合研究所と契約し、現在にいたります。
代ゼミ教育総研のnoteを何人かで書いているのですが、私は、読書や不登校、面接のことなどを書いてます。
興味を持った方は、ぜひお読みください。

毎週木曜の夜9時からラジオ番組「教育の夜明け」のパーソナリティもしています。

とてもチャレンジングな札幌新陽高校や、魅力的な取り組みをしている天塩高校とも仕事をしています。

定年が近づいたとき「何とかなるかな」と今思えば甘く考えていたのですが、なかなか仕事が決まらず、就職紹介の複数のアプリに登録し、ドキドキする時期がありました。

生徒に「どの大学に行ったかではない。覚えた知識の量でもない。何ができるのかが大切だ」と言っていましたが、私自身が「何ができるか」が問われました。
教育者の言葉はブーメランのように自分に返ってくるものだと、あらためて思いました。

さらにその「何ができるか」を自分で説明しなければなりません。
遠慮している場合ではありません。
誰かがどこかで自分の能力を評価してくれるのを待っている場合ではありません。
今も「何をしたいのか」「何ができるのか」「何で食べ、社会に貢献するのか」、自問自答する毎日です。



タイトルの由来は?

さて、史上初めての不思議な(笑)タイトルの意味を説明しましょう。

まず「ブルーハーツ」というのは、好きだからです。
講演タイトルを決めるときに、ヘビロテだったからです。
軽いですね。
教育者である保護者の皆さん、先生方に教育論・人生論を語るにあたり、私の経験以外の後ろ盾があった方がよいと思ったからです。
ブルーハーツの曲を知っている人は手を挙げてください。
ハイ、ありがとうございます。

「何か」というのは、言い回しとして好きだからです。 最初から「これこれ」と言わずに、「何か」と差し出して、ともに考えてみたいからです。 この表現は、例えばフランスの映画監督ジャン・リュック=ゴダールが――
(以下、省略します。映画、札幌のミニシアター「シアターキノ」、札幌北高校OB三宅唱監督、「新渡戸の夢」、札幌遠友塾、宇多田ヒカル「Electricity」、ビートルズ「Something」、濱口竜介監督などの話をしました)

サブタイトル「未来人のための人生論」とは何か。
教育論・人生論を語るのは、私たちがどう生きるべきかという「私たち」のためであると同時に、教育の対象である子どもたちのためです。
私たち以上に、子どもたちこそが未来をつくっていきます。
また、これからこの世に生まれてくる、まさに「未来人」に対しても、私たちは責任があると思うのです。


未来のために考える

教師というのは「未来」を語ります。
「自分の力で未来を切り開いて」
「よりよい未来をつくってください」などと口にします。
校長になると、ますますそうです。

私は昨年、ローマン・クルツナリックの『グッド・アンセスター〜わたしたちは「よき祖先」になれるか〜』を読みました。
アメリカ先住民のイロコイ族は、7世代先の幸せを判断基準にし、ことを決めます。
彼は「短期思考」ではなく「長期思考」が必要ではないかと言います。
「長期」、1万年単位で、未来の世界を想像して行動することが大切ではないかと。

しかし、果たして、そんな先のことを考えることができるのか……。

その直後、足立成亮さんという木こりの方と出会いました。
森林ツアーがあり、彼がつくった林道を歩きながら、木々の説明を受けました。
「この木は50、60年前の…」「あと100年経ったら、ここにある木は…」
私は思いました。
同じ木々を見ていても、違う世界が見えている。
異なる時間スパンで現実を認識している。
1万年と聞くと、想像を超えた未来のことだが、何十年単位を足していった先に1万年がある。
すると「長期思考」も可能ではないかと。


実は、本当のことを言うと、未来をさらに真剣に考えるようになったのは、孫のお陰なのです。
写真を見てください。可愛いんです。愛おしいんです。

そして、ふと思いました。
もし、彼が中3になったときに、魅力ある高校がなかったらどうしよう。
高校教育の質が明らかに低下していたらどうしよう。
孫「じいちゃん、なんか、行きたい高校ないわ。先生も足りないんだって」
私「え、そうか……」
孫「じいちゃん、確か、高校の校長やっていたんだよね」
私「う、うん……」
孫「へえ」
という会話を夢想してしまったのです。

未来をなんとかしなければならないぞ。
そのためにはいまだ!

そう、校長になったときよりも、孫ができて、より未来を真剣に考えるようになりました。
私たちの人生論は「未来人のための」人生論でありたいと思うわけです。



講演の続きは後編へ!
近日公開予定ですので、お楽しみに。



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