理系の好奇心を刺激する夜話 ~詩的なエッセンスを添えて~【先生のための本棚】
高校支援チームのSです。
今回も理系に関係のある本をご紹介いたします。
先日、子どもを連れて科学館へ行きました。
そこで久しぶりにプラネタリウムを見ました。
ドーム型の天井に投影される宇宙に関するお話をみて、解説員さんによる季節の星の話が聞けるプラネタリウム。解説員さんの問い掛けにドームのあちらこちらから、子どもたちの声が答えます。
大人数が隣り合って天井を見上げ知的好奇心を満たしていくのは、スマホでの調べものや読書ともまた違って、とても心地よいものでした。
さて、前回の「先生のための本棚」では宇宙兄弟が紹介されていました。
なんだか宇宙関係の出会いが多いな、と思っている中、こんな本を見かけました。
まるで童話の挿絵のような素敵な装丁画。
サブタイトルにも惹かれます。
「銀河の片隅で科学夜話」
物理学者が語る、すばらしく不思議で美しい この世界の小さな驚異
(「すばらしく不思議で美しい」に「驚異」ですよ!まさに、科学の世界を的確に表現していると感じました。)
これは何か縁があるかもと手に取ってみたら……
様々な科学者にまつわるエッセイが22話も詰まっていました。
誰が読んでも楽しめますが、ふと、これは理系を進路に考えている高校生におすすめしてほしいと思ったので、今回、ご紹介することにしました。
この本が進路選択にどう役立てられそうかというと、
「理系科目、好きだな。
大学もそっちをめざしてみようかな。
でも、理系のなかで自分に合うのは、どの学部・学科をなんだろう?」
こんな疑問が出てくる学生の皆さんに読んでほしいのです。
学校の授業では数学のほか、物理・化学・生物・地学が主な理系科目として選択できますが、大学はもっと様々な学部・学科があります。
広い視野・興味で学ぶことも大切ですが、自分の中で「これは!」という領域を見つけておくことは、進路選択への道しるべになるでしょう。
はてさて、自分は理系のどの分野に興味があるんだろう?
22のエッセイが5編にまとめられている本書。
著者の全 卓樹さんは現役の物理学教授なので、内容も物理学がメイン…かと思いきや、触れらている分野はざっとみても――
などなど、多岐に渡ります。
著者曰く、”「化学エッセイ」と一般名称で呼ぶ以外ない、何か雑多なもの”だそうですが、私はそんな本を求めていました。
広くかいつまんで、でもどの話からも著者の感じる科学の面白さがにじみだしてくる文章。
しかも読みやすい。
高校の教科書に載っているような基礎的な知識も交じえつつ、そこから発展して今はこんな研究がされていたのか、と知ることができます。
自力で論文にアクセスして読みこむのは、かなりハードルが高いですよね。
本書では筆者が問いから答えまで分かりやすい文章で語ってくれますので、すんなりと、でもしっかりと知的好奇心が満たせます。
特に心に残ったのが、第16夜「トロッコ問題の射程」。
有名な「トロッコ問題」。
イヤド・ラハワン博士率いるグループの調査では、インターネットを介すことで全世界100万人から4000万もの回答データを取ることができたそうです。
そこから見えてくる世界的な倫理学の方向性、そしてAIによる自動運転など未来への活用法について綴ってあります。
つい科学と哲学は遠い存在のように思ってしまいますが、学問というものは繋がっている、という意味でもなかなか興味深い内容でした。
あっという間に22夜を読み終わり、もっと、もっと知識を…!となったので、続編も読んでみました。
これまた良いサブタイトルです。
「渡り鳥たちが語る科学夜話」
不在の月とブラックホール、魔物の心臓から最初の詩までの物語
「不在の月」「ブラックホール」「魔物の心臓」「最初の詩」…すべての語句、学生時代ならハンドルネーム(古いですね)にしたいくらい良いです。
皆さんも1日1話ずつ、寝る前に読んでみてください。
さて、1冊(または2冊)読み終えたとき、あなたはどの話が心に残りましたか?
どの話をもっと知りたくなりましたか?
P.S.
どちらの本も「はじまり」「参考文献」は必ず読んでくださいね。
著者の科学への思い、読者への心づかいがとても嬉しい部分です。
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