学校特有の「校務分掌」「命課」知っていますか?人が社会の中で真に仕事をするために大切な"何か"を教育現場から考える
任命するということ
神奈川県鎌倉市教育長・高橋洋平さん、石川県加賀市教育長・島谷千春さん。全国的に注目されている2人の若き教育長の対談を紹介します。
40代で「若き」と言うのは、教育長で50代未満は0.3%だからです。
▼「叱られるから」ではなく主体的な学びへ 若手教育長が明かす「学びの転換」の現在地(Yahoo/AERA・12/6)
島谷さんによると、教育長の人選の鍵を握るのは、首長の教育への思い。
加賀市長は「地方創生を果たすためには産業構造を変えていかなければならない。そのためには、遠回りだけど人材育成が最優先」と言っています。
お2人は、教育長に必要なことを次のように挙げています。
島谷さんは「BE THE PLAYER」というビジョンを掲げています。受け身ではない学びや行動を重視します。
高橋さんは「炭火」をキーワードにし、外発的ではなく、内発的な学びをめざしています。
お2人ともに、理想に燃え、対話を重視しながら、「学習者中心の学び」への転換を推進しています。
▼加賀市教育長・島谷千春、脱一斉型で「子ども主体の授業」じわじわ増やす仕掛け(東洋経済 2023.6)
▼鎌倉市の「教育」を一歩先へ|鎌倉市 教育委員会が、外部人材「公募プロジェクト」を実施(AMBI 2024.4)
💡研究員はこう考える
ウェブ上の情報が全てではないとは言え、話題になる教育長は数えるほどしかいません。
教育委員会に限らず、トップのリーダーシップは組織の命運を握ります。
不登校、いじめ、GIGAスクール構想、教員不足など、社会の教育への関心は極めて大きくなっています。
様々なイシューについて、首長と教育長が何を考え、どのような組織マネジメントを行なっているかが住民にわかりやすく伝わるとよいです。
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▷全ては、教育長の任命から始まります。
地方自治体の長が任命しますが、その際、なぜその人を選んだのか、何を期待しているのかが説明されているでしょうか。
任命。組織の中の役を命じること。これをお読みの皆さんの組織では、どのように行われていますか。
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▷学校現場では、校長のアイメッセージが肝要です。
学校では、トップの校長の職務が「校務を司り、所属職員を監督する」となっています。
(参考)
▼校長の職務とは?教員の職務とは?そもそも教員とはどの先生のことをさしているのか?(学校管理職試験研修所:教育法規超基礎講座)
校長が業務を1人でこなすことは不可能ですから、教職員の役割分担を決めます。
年度当初に、校務分掌を決めることを「命課」と言います。
▼今更聞けない…けれどポイントは押さえておきたい!学校ワードQ&A “校務分掌”編(光文書院)
一般的に、全員の希望を聞いた上で、適材適所や適材育成を心がけ、短中長期的な観点に立ち、決めます。
校務分掌は校長の権限ですが、対話なしには決めません。校長の意図や方針を十分理解した副校長や教頭が、教員一人ひとりと面談します。
本人の希望どおりか否かにかかわりません。希望で決まるのではなく、希望を聴き取った上で、校長が判断するからです。
したがって、校長が何を望んでいるか、どのような役割と責任が求められているかということを最大限に理解、納得してもらう必要があります。
「言わなくてもわかるだろう」
「このポジションにつけたということで、伝わるだろう」
「私の期待がわからないのか」
などと思うのは、時代錯誤に他なりません。
価値観が多様化し、課題が山積したVUCAの社会にあっては、地道に対話を重ね、共通理解に努めなければなりません。
とりわけ、その人の1年間の仕事の目的や使命を定める大事な局面においては、「なんとなく」「以心伝心」「阿吽の呼吸」「流れで」は禁物です。
「みんなが適任だと言っている」などもあり得ません。
校長自身がどう考えているか、すなわち、アイメッセージを伝えるべきです。
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▷教育長と校長の関係についてはどうでしょうか。
北海道の道立高校においては、2020年度から校長公募制度が始まりました。「庁内」公募であり、民間人校長のことではありません。
▼地域とつながる道立高校魅力化推進校長(自己推薦校長)(北海道教育委員会9
2024年度現在、9名が公募(自己推薦)校長です。
通常、校長は2〜3年で異動しますが、公募であれば、最大5年務めることができます。
短いスパンのメリット・デメリットはありますが、長ければ、より腰を据えて課題解決に取り組み、学校の魅力化・活性化を図ることができます。
導入の前年度に、当時の佐藤嘉大教育長(2020年4月4日急逝)は、制度決定に先立ち、私を含む校長協会の役員に目的や骨格を説明してくれました。
私は「面白い」と思いました。赴任先を指示されるのではなく、自分で行きたい学校、やりたいことをプレゼンし、選抜される。これは燃えます。
その上で、他の役員と申し上げました。
すると、佐藤教育長は仰りました。
「なんだ、そうだったのか。あなたたちの言うとおりだ。次は、私を含め道教委の幹部から伝えよう。ただ校名を告げるのではなく」
翌3月。私の校長としての最後の異動の際に、佐藤教育長から電話で、期待と激励の言葉をいただきました。
本当にそうしてくれた。有言実行です。私は感激しました。
定年退職までの3年間、故佐藤教育長の生き方・在り方に支えられました。
今も支えられています。
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▷任命する、役割と責任を与えるということ。
校長と教員。
教育長と校長。
首長と教育長。
任命する、役割と責任を与えるということは、形式的なことではなく、人が社会の中で真に仕事をするために大切な何かだと思います。
任命は、学校、教育の組織に限ったことではありません。社会の様々な組織において、さらには、家庭を含む、人生の様々な場面において、任命、ないし、任命的な何かがあるのではないでしょうか。
役割と責任を与える、与えられるということです。
任命に際し、どのような評価を踏まえているかが、相手にも伝わっているか。
任命されたことをどう感じ、考えているかを伝える場があるか。
そして、任命の「後」、実際にどう進んでいるか。
皆さん、任命の力について、あらためて考えてみませんか。
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