ランサーズの人事責任者が失敗の果てに辿り着いたこと
こんにちは、ランサーズで人事の責任者をしている宮沢(@yoyottu) と申します。私は2014年9月にランサーズに入社後、様々な部門と産休育休を経て、2019年より本格的に人事の責任者を始めました。この3年間、様々な取り組みを行ってきましたが、振り返ると思い浮かぶのは失敗したことばかり・・。ただ、某し〇じり先生のように、過去のしくじりが今につながっているとも感じます。お恥ずかしいエピソードの数々とそこから何を得たのかお伝えできればと思います。
人事のよくある失敗、大体やりました。
本当の課題にたどり着いていない
元々、人間の心の機微を察知するのが早い方だという自負があり(今考えるとなんておこがましいんだと思いますが・・)、人事になってすぐ力を入れたのがメンバーとの1on1でした。人事関連の書籍に記載されている「人事は従業員のチャンピオン」というのを強く意識しすぎたところもありました。入社3か月面談、1年面談、退職面談なの面談で上がってくる声すべてに対応。一つ一つを早めに察知してつぶしていけば会社はきっとよくなる!と信じてやっていました。しかし、一人一人が相談してくれる内容の重さや、裏でつながっている本当の課題を考えずに、ただ対処していたため、いつまでも根本的な解決にならず。ただひたすらにモグラたたきをしているだけになってしまいました。組織ビジョンが事業と紐づいていない
次におこなったのは、組織ビジョンを作ることでした。当時はフラット型でティールに近い組織が事例として取り上げられることも多く、またランサーズという会社のビジョンとも合致していたため、全社を数年後にそうする、とぶちあげました。しかし、複数事業がある中で、事業によって成熟度や適切なマネジメントの仕方が違います。それを全て無視して、私がこういう組織を作りたいんだ!という意志だけで理想の組織ビジョンを作った結果、いつまでたってもその理想像に行きつくことはできませんでした。実行可能な組織図になっていない
迷走している私を見かねた上長が、まずは3年後のビジョンと組織コンディションを描いて逆引きしてみたら?とアドバイスをくれました。3年後のビジョン、組織の人数、採用方針、などなど作り、そこから逆引きしたら来期の組織はこうだ!と作った結果、ものすごいマトリックス組織になるという・・。理想と現実のギャップがある場合、往々にしてマトリックス型になるというあれです。そんな組織実現可能なわけあるか、と丁寧に一蹴されて終わりました。周りを巻き込めていない
上場まで、少なからず成長を続けてきた当社のような会社にありがちなのかもしれませんが、「会社に蔓延する空気・カルチャー」や「リーダー層の育成」といった、経営会議で出る課題の解決部署がすべて人事部になるという時期がありました。私はそういう時、変に燃えてきてしまう性格で、1人で背負い込みすべての人事課題を一人で解決しようとガリガリ課題をつぶしこみました。その結果、経営課題のほぼ捨てを人事部で解決!!することができたのです!!しかしこれが大しくじりの元。全ての課題を解決できてしまったゆえに、「やっぱり組織で困ったらすべて人事部で解決したらいいよね」という空気が蔓延し、本来なら事業部内で解決するべきである課題も、「人のことである」という理由だけで、すぐに人事部にまわされるようになり、会社全体で課題に取り組む、という意識を逆に薄れさせてしまうことになってしまったのです。
失敗の果てに
ユーザーに価値を届ける人事でありたい
当時は、失敗・迷走のたびに人事の書籍や他社事例を見聞きし、良いところを全部取り入れていました。しかし、全く実態組織にそぐわず成果が出ないというサイクルになっていました。人事なんだからということに気負いすぎて、人事だったらこうするよねという「型」にとらわれすぎていたのです。
そこで、人事としてではなくランサーズのイチメンバーとして、「なんでもありなら理想の状態って何か」を考えてみることにしました。その時にすぐに思い浮かんだのは、ランサーズというサービスそのものに対する想いでした。始めて発注した時、本当に秒でプロが提案してくれたこと、まったく見ず知らずの私に期待値120%超で答えてくれプるプロに出会えたこと、ユーザーの皆さんと対話する中で私たちのサービスがユーザーの皆さんの家族を養っているんだと感じたことなど・・。事業部門にいた際に感じていたことを改めて思い出しました。もっとこのすばらしいサービスを世の中に知ってもらい、1人でも多くのユーザーに使ってもらいたい、それをゴールにした人事施策を行っても良いのではないかと考え、人事としてのゴールを以下のように定めました。その結果、少しずつ施策が組織にフィットする手ごたえを感じるようになりました。
サービスをもっと良いものにして、さらに多くのユーザーに価値を届けたい。
そのために人事としては、ランサーズに所属するメンバーのアウトプットを最大化する。
それを実現するには、メンバーの解像度と事業の解像度を最高にあげること。ただし200人を超えた会社の規模で、数人の人事ではできない。みんなでやる。
今、何をしているのか
福利厚生をカルチャーから考える
例えば、福利厚生について。これまで多くの意見があったものの、福利厚生はメンバーの不を解消することに重点を置きすぎて部分最適な内容が多くありました。そこで、❶福利厚生はランサーズカルチャーに従う(=カルチャーはメンバーがアウトプット最大にするために作られたもの)❷アウトラインは決めつつも人事が考えるのではなく考えたい人が考える、としました。
その結果、以下を実行しました。
オープンフラット:慶弔関連の福利厚生の前提に婚姻関係を外す。(事実婚・同性婚についても慶弔休暇・慶弔見舞金の支給対象にしました)
オールタレント:時短適応期間を小学校卒業までにする(これまで3歳までだった時短適応年齢を、小学校卒業までに引き上げました)
ファーストペンギン:チームでオフサイトmtgしやすいような予算配分に変更
よりユーザーに価値を届けられるカルチャーを作る
ランサーズメンバーは本当にユーザーに向き合ってる?そんな投げかけが、新卒メンバーからあがってきたこともありました。すぐに経営合宿で議論がなされ、代表の秋好と有志メンバーとのカルチャー委員会が立ち上がりました。約10回にも及ぶワークショップの結果、様々なルールが「良い人」であれということに解釈されているということがわかりました。
私たちは、同僚からの賞賛ではなく、ユーザーからの賞賛を得なければならない。ではどうしたらそれが浸透するのか。幾度となく代表の秋好や委員会メンバーと議論し、報酬体系の見直しや行動指針の変更に着手しています。
それは奇しくも、ユーザーに価値を届ける人事になる、と決めた道筋と似ています。全メンバーが、「ユーザーに価値を届けるプロ」になるまで、失敗を見守り、寄り添いながら、私自身もユーザー価値を最大化する人事をしていきたいと思っています。