捨てられる銀行3 橋本卓典
以前は就職したい職業ランキングの上位であった銀行が、今年の調査ではランキング外になってしまったことや、メガバンクの大幅な人員削減など銀行にとって暗いニュースだらけであるが、普通に考えてほしい。
お客さんの望まない商品やサービスを売りつけ、相手の顔や事業を見ず、過去の利益の数字や、担保と保証協会がつくかどうかを判断基準とし、目先の利益を追い求めることを企業文化にまで昇華させた産業・企業が捨てらないわけがない。
考えなくてもこれほど答えが明白なことはないだろう。
仕事柄銀行員の方と接する機会が多々あるが、企業と積極的にかかわろうとする銀行員は皆無でマニュアル通りの対応か、愚痴を喋っている姿しか見たことがない。
銀行員諸君に伝えたいことは、このシリーズをマジで読んでほしい。
そして、銀行員のあるべき姿を見つめなおしてほしい。
自分が誰のために何を成したいのかを考えてほしい。組織に服従した所で未来が無いことは明白であるのであれば、お客さんのためになりそうな事を考えて、なにか小さな一歩を踏み出してほしい。
無能な上司の言うことを聞き続けても明るい未来は間違いなく来ないのだから。
「計測できる世界」
数字での表現はわかりやすく納得を引き出しやすいが、何故その数値になったのかを納得させ浸透させなければただの数字である。つまり意味がない。
ノルマや目標を立てるときには計測可能なものでなければいけないというのは目標管理の基本ではあるが、その数字を目的化してしまうと、ユーザーは置いてきぼりの数字追いかけ集団の出来上がりである。
数値目標と並んで重要なことがあることを仕組みや文化から変えていかなければ一生同じ過ちを繰り返すことになるのだろう。
ただ、他人ごとに思えない産業や企業は無限にあるだろう。
話題になっている携帯会社のオプションの押し売りなんて良い例である。
お客さんが望まないサービスを、理解できないことを良い事にただただ押しうる。こんな事を続けていればいずれ消費者から捨てられる日が来ると断言できる。
計測できる数値だけを追い続け、中で働く人は奴隷のようにマニュアル通りの行動と数値目標達成のための営業に全精力を注ぎ思考は止まり、普通の思考ができなくなる。
自分の首を占め続けて最後に死ぬ。どうせ死ぬならこんな産業や企業は早く死んでくれたほうが世のため人のためであるが。
最後に「スタンフォード監獄実験」「ルシファーエフェクト」について言及されていた部分の引用をして終わりにしようと思う。
善悪を分かつものはなにか、思考や感情、行動という内的要因さらには、動機、個性、遺伝子個人的な問題に結論を求めようとする。
しかしそうではなく、その場所や組織の「システム」が作り出す「状況」の力にこそ元凶がある。
人が悪なのではない、システムが悪を生産するのだ。
人は誰でも独立心を奪われ、権威に服従し、恐怖を前にして我を失い、自己弁護と正当化に埋没していく可能性を秘めている。
ありふれた普通の人が、悪を容認し、はては積極的にかかわるようになる。その過程で大きな鍵となるのは、人間性の喪失だ。
思考回路が麻痺し、他者を人間以下の存在とみなすには人間性の喪失が欠かせない。
人間と状況は相互に作用しあっている。人間は自ら創造した「任務」の遂行に自分自身が振り回され人間性を失うのだ。
食べ物が腐るのは、目の前にある食べ物に原因があるからではない。
食べ物を取り巻く、温度や湿度、最近の繁殖状況などの環境状況、システムにこそより重大な問題がある。
目に見えない問題こそ、真の問題がある。