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ジョーダン・ピーターソン:「私がトロント大学のテニュアを辞した理由」
The appalling ideology of diversity, inclusion and equity is demolishing education and business. (多様性、包括性、公正性という恐ろしいイデオロギーが、教育やビジネスを破壊している)
「Diversity, Inclusion, and Equity(多様性・包括性・公正性)」を謳い、教育機関、企業、メディア、政府機関など、あらゆる組織の監視塔に立っている思想権力が社会を破壊する、とトロント大学の心理学教授、ジョーダン・ピーターソンは警鐘を鳴らす。
日本でもいつの間にか浸透したこれらのフレーズ、一体何が問題なのか。そして世界的に有名な教授がトロント大学での終身雇用を辞した理由とは。
今回は米国でも大反響を呼んでいる、カナダの保守派紙National Postに掲載されたジョーダン・ピーターソンの寄稿を紹介する。
まず、全くジョーダン・ピーターソンを知らない人のために少し彼について触れておこう。
英Guardian紙の邦訳を引用したCourrier Japonの記事は、彼をこう評している;
「マーシャル・マクルーハン以来、最も重要なカナダ人思想家」とも評されるトロント大学心理学教授ジョーダン・ピーターソン。現代西洋思想家にしては珍しく、聖書や神話からも人間個人の真理を説き、極左的な政治アジェンダには露骨に異を唱え、物議を醸しまくるロックな学者だ。
また「『男女の経済格差は存在しない』論者が、公開討論で圧勝してしまった事件」と題し、Business Journalもピーターソンについて報じていた;
しばらく前まで無名だったピーターソン氏が注目を集めたのは、2016年9月、ユーチューブに動画を投稿し、トランスジェンダー(出生時の性と自身の認識する性が一致しない人)をヘイトスピーチ(憎悪表現)や差別から守るというカナダの新しい法律に反対を表明してからだ。
ピーターソン氏は新法について、実際には言論統制に利用される恐れがあると指摘。それだけでなく、トランスジェンダーに対し「he(彼)」や「she(彼女)」ではなく「ze」「zir」といった男女の区別がない代名詞を使うよう強制されかねない。これは言論の自由の不当な侵害であり、政府が命じようとも自分はこれらの代名詞を使わないと述べた。
これらの引用の通り、欧米での彼の偉業は大きく二つある;
一つ目は心理学者・思想家として、世界的ベストセラー『生き抜くための12のルール:人生というカオスのための解毒剤(12 Rules for Life: An Antidote to Chaos)』などの執筆や講演活動を通じて、多くの悩める人々に手を貸している点。
二つ目は、左傾化が激しい欧米アカデミアに属しながらも、歪んだフェミニズムやジェンダー論を厳しく批判している点である。
この二つの側面から、欧米において「暴力的で有害な権力構造を社会に根付かせた絶対的強者」と一括りにレッテルを貼られ、逆に「社会的弱者」から攻撃され侮蔑され、生きにくさを感じている白人ヘテロ男性による絶大な支持を得ている。
以下の動画に多くの日本の保守派やごく普通の男性たちが共感を覚えていることからも、ピーターソンの問題提起—ラディカル・フェミニズムであれアイデンティティ・ポリティクスであれ—は決して対岸の火事ではないことがわかる。
🎞️字幕:フェミニストや社会学者が好んで使う「有害な男らしさ(toxic masculinity)」というフレーズ。
— 🇺🇸Blah (@yousayblah) December 7, 2021
ラディカルサヨクの天敵とも言われる、カナダの心理学者ジョーダン・ピーターソンが感情をあらわに語る、有名な一幕。 pic.twitter.com/Nevpsuoprg
以下、ジョーダン・ピーターソンによる寄稿。わかりにくそうな箇所は一部注釈や日本語の参考記事を付けている。
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