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おすすめの詩

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noteで見かけたおすすめの詩を取り上げて、勝手に感想を書かせて頂いてます。
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2022年6月の記事一覧

おすすめnote詩「レタス」

タイトルは「レタス」だけど、たぶん主題は「レタス」ではないのだと思います。

「レタス」→「死」→「ドライブ」→「独白」のように話が展開されています。まるで関連があるようにスムーズに進むのですが、こうしてみるとあまり関連はないような気もします。

スムーズに感じるのは、詩全体が作者の一人語りだからなんでしょうか。作者と作者の自意識の会話と感じるところもあります。

文章は所々に、念押し、繰り返し、

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おすすめnote詩「ちょうどいい抱擁」

全部で六連からなっている。
文章や文節(?)はいくつかの似たパターンに分けられそう。

「吸殻と地平線と柔肌」
「靴紐と月極駐車場と砂浜」

「このまんまじゃ遅刻するかな」
「ちょうどいい憂鬱ってあるかな」

「だれかの痰と濡れた紫陽花」
「おりたたみ傘とリストカットの跡」

一連目から四連目までは単語の組み合わせが文章を作っていて、五連目から最終連は文章が長くなる。詩の全体の構成はそういう感じ。

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おすすめnote詩「遠くて近くて、やっぱり遠い」

一連目と二連目は対になっているようです。助詞の使い方や過去形の使い方が似ていてリズム良くテンポ良く読めました。

三連目。一連目と二連目が対であり、その説明が書かれています。でもここではまだ本当に伝えたいことは抑えられていて静かに進みます。

最終連。単文で言葉短く、本当は言いたかったことが打ち明けられます。前半部は布石で最終連で鮮やかに現実をひっくり返しているように読みました。

ここまでが自分

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おすすめnote詩「それから」

各行が題名の「そ」「れ」「か」「ら」から始まっています。

一連目。
「羅針盤は今を指さない」にはっとします。羅針盤が何かを指し示しているとき、それは何を指してるのかな。矢印の元に勝手に自分を置いてしまうのは、そこが出発地点で「今」だと錯覚してしまうから。示しているのは自分がいるだろう未来ではなくて、示しているのは時間のない方向だけなのかもしれない。

二連目。
「連日積み重なる 哀しみから顔

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おすすめnote詩「一期一会」

情景が目に浮かびました。ハッシュタグにある通り「何気ない日常」の描写です。きっと誰にでも有り得る瞬間、今日でさえ起きた瞬間かもしれない瞬間、そんな風に思った瞬間があったと錯覚もできる、そんな日常の風景。

最終連の一文「明日にはきっと忘れている 違うことを考えている」そんなよくある日常がいつもより特別な意味を持つ瞬間がたしかにある。

どうして明日には忘れてしまうのだろう、どうして明日には違う

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おすすめnote詩「羊飼いの朝」

まずは一連目。羊飼いの夢の中にいることが示唆されています。続いて二連目。「目覚める」と書いてあるけどこれは夢から覚めたのかな。あるいは夢の中で目が覚めたのかな、どちらだろう。

ここにこだわるのには理由があって、それは三連目の「境界はどこにあるのだろう?」という一文がこの詩の核なんじゃないかな、って思うから。

夢と現実、朝(再生)と夜(死)、お伽噺(フィクション)とノンフィクション、無意識と意識

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おすすめnote詩「ひっそりと」

おそらく現実にあった話、それか現実にあった話をもとに書かれた詩なのかな、とイメージしました。

「てしっ」「ふそっ」の音が見慣れない平仮名の組み合わせになっているのが面白い。音をどのように聴いているのか、あるいは、音はどのように聴かれてるのか。自分たちにはそれを平仮名の組み合わせで表す自由があるのを思いだしました。

また、それぞれの音の前の言葉に「キーボード」があるせいかローマ字入力を連想する。

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おすすめnote詩「夜を追う」

一連目。
「川を遡るように視線を泳がせる」
過去に遡る、とは書かずに「川を遡る」となっていて、それは「泳がせる」と呼応している。さらに一連目の後半部、「思い出す」「ヒグラシ」のイメージへの入口になっている。「それに救われるひともいるから」も素敵な文章で惹かれます。

二連目。
「線を引くたび」から始まる文章の発想がすごい。何かのメタファーなのかもしれない。どうしたらこういう発想にたどり着けるのだろ

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おすすめnote詩「深夜の冷蔵庫」

「自分の膝小僧のにおいをかぐと なぜか落ち着く」

「夏の麦茶の美味しさとかで思い出してくれたらうれしいな」

この二文に特に惹かれました。全体として文体が自然で何回も読みたくなり、また何回読んでも疲れませんでした。飾りたてた比喩表現は抑えられていて、さらりと書いてあるからだと思いました。

各々の連が、大事なこと、核心に繋がっていきそうな導入から、するりと別の展開に切り替わっている。意図的にし

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おすすめnote詩「373」

最初の数行ですっかり惹き込まれました。「何気ない毎日でも なんとなく思うことはあって」そうだよなあ、と思う。今日も色々とあったわけだけど、その都度色んな想念が浮かんではいて、でも一日の終わりにはすっかりと消えてしまっている。

言葉、想い、を発すること。あるいは書くこと。それはとても大事だと思っている。自分の内部だけの言葉はぐるぐると回るだけで、どこにも辿り着かない。でも何らかの形で発すること

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おすすめnote詩「うさぎさん」

聖書については詳しくないけど、この詩を読んで旧約聖書の「知恵の実=りんご」を思いだした。諸説あるのだろうけれど、私はアダムとイブがりんごを食べたことにより自意識が産まれた、という説がとても腑に落ちている。

「ぼく」はりんごを齧る。そのとき自意識が産まれたはずだった。でも、彼は「何もなかったことにした」。つまり自意識が産まれたことを「知らないふりをした」。なぜなら「こどものまま大人になりたい」から

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