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【追悼・宝田明】川島雄三監督「接吻泥棒」を鑑賞す。

宝田明演じる女にだらしないボクサーの男(役名が高田明・笑)と4人の女が巻き起こすドタバタラブコメディ。日本では珍しいスクリューボールコメディーかな。監督:川島雄三。原作:石原慎太郎。脚本:松山善三。

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■1人の男をめぐるハーレム的な作品

宝田明は3人の女性とつきあっているモテモテのプロボクサー。ある日、交通事故に巻き込まれ、事故った車に乗っていた女子高生の団令子を救おうと、口移しで水を飲ませる。その様子をフリーカメラマンの中谷一郎(風車の弥七)が撮影する。そこへ、何故か、原作者の石原慎太郎が登場して、「おっ。接吻泥棒だね」。で、タイトルがドーンと出る。非常にテンポが良い。

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■アクの強い「4人の女たち」が宝田明の恋人

団令子
父親が宝田明のタイトルマッチのスポンサーをする関係を利用して付きまとう、お嬢様だけどおてんばな役。関西弁でよく喋る。家族全員で東京へ引っ越してきたのか、両親も弟も関西弁で喋りまくる。そのテンポの良さは、大阪が生んだ鬼才「織田作之助」の親友であった川島監督ならではのものか。団は酔って吐くシーンもあったりする。お堅いキリスト系のお嬢様学校に通っている。ゆえに宝田明とキスした写真がゴシップ雑誌の表紙に載ったもんだから、学校内では大騒ぎ。なぜか、有島一郎扮する教師ひとりが団令子に理解を示す。

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新珠三千代
バーのマダム、ある社長の妾であるがパパが寛容なので結構好き放題してる。セスナ機を操縦するなどアグレッシブな女性。でも、和服でセスナを操縦するのは・・・横山やすしもビックリである。

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草笛光子
洋服のデザイナー兼デザインブランドの社長。部下も数人いるが、さも自分がデザインしたように見せて、フランスなどのデザインのまんまパクリ行為をしている。

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北あけみ
激しい踊りを得意とするナイトクラブのダンサー。ゴリラの気ぐるみをきた男性ダンサーとジャングル・ダンス(!)を踊るシーンは大胆素敵。私は、北あけみという女優をこの映画で初めて知った。クレイジー作品や若大将シリーズに出演していたらしい。更に調べると、「海底軍艦」の水着撮影のシーンに登場していたとか。ということは、私、観たことがあるはずです。「海底軍艦」は十回ぐらい観たことがありますので。

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■川島雄三版「あしたのジョー」(?)

クライマックスのボクシングシーンが、なかなかうまく撮れている。石原慎太郎の原作は実在したボクサーをモデルにしているらしいです。

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■ラストにも登場する石原慎太郎。これは「メタフィクション」だ!

最後。三人の女性と無事、別れることが出来た宝田明が、団令子と一緒に「ヘビ料理店」(!)の近くまでいく。すると、中から、冒頭と同じように突然、原作者の石原慎太郎が登場する。

宝田明「ねえ、あなた、原作者でしょ。このあと、どうなるんですか。この子と一緒になっていいんですか?

慎太郎「いやあ、その子は気が強いよぉ

宝田明「じゃあ、どうすればいいんですか。原作者だから考えてくださいよ

団令子「いいかげんなことしちゃ、ゆるさないわよ!

慎太郎は「うへぇ〜」と、へび料理店へ逃げ込む。そして、

慎太郎「オレには女は書けねぇ!

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こういう終わり方を観て、「幕末太陽傳」で川島雄三がやりたかった、フランキー堺が撮影所の外へ飛び出し、カメラがそれを追いかけていくという、当時の映画のセオリーをぶち破る「メタ演出」を少しだけだが、やり遂げたような気がします。

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宝田明さんと石原慎太郎さんのご冥福をお祈り申し上げます。

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