「ウルトラマンティガ」。太田愛のシナリオの素晴らしさ。(2022年1月5日 追記あり)
ウルトラサブスクで『ウルトラマンティガ』 第21話 「出番だデバン!」を鑑賞。太田愛さんらしい脚本です。笑いあり、涙あり。ホッコリするいいエピソードです。
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「出番だデバン! ーエノメナ デバン登場ー」
『ウルトラマンティガ』第21話
1997年1月25日放送(第21話)
脚本 太田愛
監督・特技監督 北浦嗣巳
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デバンは、経緯不明ながら物語開始以前に地球に出現。
とある街で公演を行っていた劇団一座「ゆかいな仲間たち」と遭遇します。
一座の団長はデバンの事を当初は着ぐるみを来た入団志望者と思い、デバンをメンバーに加えた公演の後のブレークタイムで正真正銘の怪獣である事を知るも、驚きこそすれ、特にデバンの事を恐れることなく一座に迎え入れるに至ります。
一座の公演では「怪獣の郵便屋さん」を演じます。
デバンという名前は、団長に「出番だ、出番!」と呼ばれたのを覚えた事で、そのまま名前として認識したもの。
「ゆかいな仲間たち」一座に拾われた後、その存在を狙ったエノメナに付け狙われ、一座ともども函館、仙台、水戸と日本各地を転々とする。
劇中時点では東京に滞在しており、GUTSが各地に出現したエノメナの目的を調査する中で、エノメナの出現地域にデバンの姿が確認できた事からその存在をマークされることに。
遂にエノメナがデバンの前に直接出現して一座共々抹殺しようとしたところにGUTSが駆け付け、一座と共にTPCに保護。
その後本部を訪れた一座の団長はデバンと初めて出会った経緯を語り、デバンもダイゴらに可愛がられたりする一時を過ごすも、
TPCの科学者タンゴ・ユウジ博士がデバンを生化学研究所に強硬に引き取ろうとした事で一触即発の空気になってしまい、更にエノメナが市街地に出現したとの知らせが届き、緊迫した流れに。
GUTSのヤズミ隊員は、デバンを同伴してエノメナの電磁波に侵された街へ出撃する事をイルマ隊長に懇願するが、一座の団長はデバンを連れて帰ろうとします。
ヤズミは憤慨するが、団長もまた仲間であるデバンの身を重んじたが故の言動が。
ヤズミ「あなたは街の人がどうなっても構わないんですか!?」
団長「知った事か!このデバンはな、うちの一座の大事な一員なんだ。あんたらの戦いの道具にされてたまるか!」
結局、デバンは一座と共に本部から去ってしまうも、既に街はエノメナが撒き散らした怪電磁波によって理性を失い暴徒と化した人々で溢れかえっています。
一座の車両も暴徒に囲まれて立ち往生してしまい絶体絶命の状況に陥るも、あまりの惨状を前にデバンは涙を流し、車を飛び出して怪電磁波を浄化。
デバンの活躍によって人々は正気に戻ったが、なおも電磁波を撒き続けるエノメナの前に姿を現してしまった事で、エノメナの攻撃を受けて吹き飛ばされてしまいます。
しかし、それでもなお、エノメナと戦うウルトラマンティガを電磁波から救うために立ち上がり、ダメージを受けた身体で浄化を続け、遂には限界を迎えて力尽き・・・。
ティガの活躍でエノメナが倒された後、タンゴ博士はデバンの亡骸を冷淡に研究所へ持ち帰ろうとするも、結局は団長が頑なに拒んだ事で一座のもとへ引き取られることとなります。
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太田愛さんは、『ウルトラマンティガ』第21話「出番だデバン!」でテレビ脚本家としてデビューしたということ。
デビュー作でこれだけオモシロイ脚本が書けるとは恐れ入ります。
現在は、小説家として活躍されておられます。2014年、『幻夏』で第67回日本推理作家協会賞(長編および連作短編集部門)の候補に。
水谷豊主演『相棒 -劇場版IV- 首都クライシス 人質は50万人! 特命係 最後の決断』の脚本を担当。力量を発揮しています。
推理小説家としては、『天上の葦』『犯罪者 クリミナル』『幻夏』と続く、長編クライムサスペンスシリーズが推理小説ファンから評価されました。
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これからも注目していきたい作家さんです。また、特撮ドラマの脚本を書いて欲しいな。ウルトラマンダイナ「ぼくたちの地球が見たい」のようなファンタジックなジュブナイルなんかいいですね。
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(2022年1月5日 追記)
《今、苦しい立場で闘っておられる方々を傷つけたのではないかと思うと、とても申し訳なく思います。どのような場においても、社会の中で声を上げていく人々に冷笑や揶揄の目が向けられないようにと願います》
自身のブログにこうつづったのは、1月1日に放送されたドラマ『相棒 season20』(テレビ朝日系)のスペシャル版『二人』で脚本を手がけた太田愛氏。太田氏がブログで唱えた“異議“に注目が集まっている。
問題となっているのは、同回での主人公の杉下右京(水谷豊)と冠城亘(反町隆史)が捜査の一環で、駅の売店を運営する企業『デイリーハピネス』の本社に向かうシークエンス。2人が同社を出たところ、「非正規差別NG」と書かれたビラやプラカードを持つ、ピンク色の鉢巻を巻いたデモ隊が待ち構えている。
すると1人の女性が右京たちに“デイリーハピネス社の劣悪な労働環境”について唐突に話し始め、興奮気味に「同社で働く人の多くが非正規雇用で賃金は安く、15年以上働いても退職金がゼロ」と説明。さらに、デモ隊は裁判で同社を訴えることを明かした。突然の出来事に戸惑う右京たちだったが、女性らは2人を囲むと『格差をなくせ!』と拡声器を使ってシュプレヒコール。そして、右京たちは逃げるようにその場を去った。
しかし、太田氏は一連のシーンに異論を唱えた。ブログで《プラカードを掲げた人々に取り囲まれるというシーンは脚本では存在しませんでした。デイリーハピネス本社の男性平社員二名が、駅売店の店員さんたちが裁判に訴えた経緯を、思いを込めて語るシーンでした》と明かし、こう訂正した。
《非正規社員というだけで、正社員と同じ仕事をしても基本給は低いまま、退職金もゼロ。しかも店員の大半が非正規社員という状況の中、子会社の平社員達も、裁判に踏み切った店舗のおばさんたちに肩入れし、大いに応援しているという場面でした》
さらに太田氏は当事者の声を聞いたりいくつものルポを読んだりして同シーンを書き上げたといい、《訴訟を起こした当事者である非正規の店舗のおばさんたちが、あのようにいきり立ったヒステリックな人々として描かれるとは思ってもいませんでした》とし、冒頭のように“願い”をつづった。