【映画】🎬大映「ぼんち」(1960)。監督・市川崑の女優口説き法。「次、これ撮るから、出るね」と台本を置いて去る。
草笛光子は大の犬好きだ。
ラブラドール・レトリバーの「まろ」と一緒にテレビ出演したほど。
今ではそれほど犬や猫を抱いてバラエティー番組に出演する俳優も珍しくないが、草笛が草分けといえる。
2021年には、「徹子の部屋」でその「まろ」が亡くなったことを報告している。「まろ」を失って落ち込んだ草笛だが、ある日行きつけの花屋で犬を連れた人とすれ違い、その犬にひと目ぼれしてしまった。
草笛はその犬に会いたい一心で花屋で待つようになった。
そのことを知った飼い主は草笛に連絡をくれたという。
おかげで待たずに会えるようになり、心の癒やしになったとか。
どこまでも幸せな人である。
・・・
さて本題。
作曲家の芥川也寸志と結婚した1960年に公開されたのがこの「ぼんち」(市川崑監督)。
原作は「週刊新潮」に連載された山崎豊子の小説だ。
幸せの絶頂期に人生の苦悩を絵にかいたような文芸ものに出演したのも何かの縁というべきか。
裕福な家の仲居から芸者になった幾子を演じたのが草笛。
新町の花街に入りびたりになった足袋問屋河内屋の跡取り、喜久治(市川雷蔵)のことを彼女のほうから好意を持つ。
そして喜久治の子供を身ごもるが、難産の末に亡くなってしまう悲劇の役どころだ。
実は、この「ぼんち」に草笛が出演することになったのには、こんないきさつがあった。
ある日、東宝スタジオの食堂で食事をしていると、そこにふらっと顔を出したのが市川監督だった。
そして、「今度、これやるから出るね」と脚本を渡されたそうだ。
草笛にいわせると「いつも出演交渉のやり方が変わった方で、いつもひとりでいらっしゃって、出てよ、ではなく、出るね、だったんです」と、あるトークショーで笑いながら語っている。
「女優の面白さ、役の作り方を教わりました。一生懸命考えていくと必ずそれを取り上げてくださる。心の中で頭を下げていました」とも。
だからこそ、市川監督の金田一シリーズの常連となったほど。互いに信頼しあっていたからこそ可能だったことだろう。
ちなみにラスト近くの若尾文子、京マチ子、越路吹雪の入浴シーンはゴージャスでエロチックだが、カットの仕方が上品だと評判になった。
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