川島雄三監督「特急にっぽん」を鑑賞する。東京〜大阪、6時間半の電車の旅!
新しく東宝から発売されたDVDで鑑賞しました。登場人物の大半が「関西人」という設定。もちろん主役のフランキー堺も「関西弁」。
DVDの特典音声で、本作にウエイトレス役で出演した田辺和佳子が川島雄三監督の撮影現場の思い出を語っています。田辺さんが関西出身で、川島監督との面接のときに関西弁で喋ったら、「他に人の関西弁とまったく違うね。君、他の役者たちの関西弁でおかしなところがあったらアドバイスしてやってくれ」と頼まれたそうだ。ちなみに田辺さんは、ウルトラマンの中の人・古谷敏や二瓶正也と同期なんだそうです。
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■東京〜大阪を6時間半で結ぶ特急「こだま」で起こる出来事を描くグランドホテル形式ドタバタ喜劇。
原作は獅子文六の『7時間半』(フランキー堺のファーストシーンで腹の上にあった本)だけど、映画化するまでに走行時間が1時間短縮されてしまったとのこと。(プレスシートより)
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■楽しいエピソードが散りばめられている。
キュートで庶民的なウエイトレス(団令子)と美人で元華族のスチュワーデス(白川由美)の対比が素晴らしい。この2人と主人公のコック(フランキー堺)による三角関係が羨ましい。もとい、楽しい。(この映画が制作されたころは、電車の乗務員もスチュワーデスと呼んでいたらしい)。
赤坂にレストランを出したいという白川由美のパトロンに名乗りを上げ、モノにしてしまおうというスケベ社長(小沢栄太郎)が羨ましい。もとい、小気味よい。
団令子と息子(滝田裕介)をくっつけようと画策する母親(沢村貞子)が笑える。
スリのコンビとその親分(意外な人物?!)と、彼らを追う鉄道公安官のドタバタも愉快。
得体の知れない爺さんの爆弾騒ぎにドキドキ。
などなど、いくつものエピソードが、市松模様に絡み合うシナリオを、
川島監督は軽快にテンポよく、さばいていく。
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■見事なラストシーン。
圧巻なのがラストシーン。終着駅大阪に到着した「こだま」の車内、白川由美とフランキー堺の関係についての誤解が解け、フランキー堺と団令子がヨリを戻してめでたしめでたしというハッピー・エンディングを、カメラは列車の外から窓ごしに撮影。
登場人物の動きに合わせて行ったり来たりするドリー・ショットのワン・カットで見せてしまう。
しかも登場人物は全員車内なので台詞は一切聞こえない。
つまり、パントマイム(というかサイレント映画のよう)だけで見せきってしまうのだ。
川島監督の演出手腕に恐れ入る名シーンである。
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■鉄道ファンなら必見。
最高時速110キロで走る151系の車内には、時速計あり食堂車ありビュフェあり車内電話あり、乗務員室や車内放送室の様子も描かれ、当時工事中の新丹那トンネル(東海道新幹線)もチラッと出てきたりすることにへーっと思う。
列車運行中、スチュワーデスが通路に掃除機をかけ始めることに驚きつつ、新幹線のホスピタリティは国鉄時代から受け継がれてきたモノであることに感心する。途中トラックの踏切内立ち往生によって予定ダイヤより9分遅れであることを、何度も車内アナウンスする律儀さもまた国鉄時代からの伝統であることがわかって誇らしく思う。
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■トイレも出てきます。
川島雄三監督といえば、トイレ。この映画でも、こだま号のトイレ、しっかり出てきます。ご安心ください。
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