読んでくれる人がいる③(文学フリマ東京37)
昨日に引き続き、作品を買ってくださった方とのやりとりや感想を紹介していく。
14人目
16時35分。二人組の方が「絵がかわいい」と言ってゆったり見たあと、一旦は何も買わずに無料配布物や栞を持って行かれたが(それだけでも純粋にうれしい)、そのうちのお一人がなんと戻ってきて『使いどころなさそうでややある話』をお買い上げ!
なんてことのない場面かもしれないが、ブースの中にいる自分からするとかなり胸がじーんとする瞬間だった。その方は私には知りえない「何か」を考えて、買うという行為を選んでくださったのだ。うれしさがうろたえに変換されて、おつりを間違えてしまったら(お相手にプラスになっていたにもかかわらず)丁寧に教えていただいた。それでさらに恐縮してしまい照れながらぺこぺこと見送った。
15人目
16時41分。別の出店者さんがブースに目を留めていたのですかさずお声がけしたところ、うれしそうに(おこがましくもそう見えた)近寄ってきて見本誌を手に取り、しばし読んだのちにセットで購入くださる。終始にこにこと明るい印象の方で、ああ、楽しんでくれたらいいな…と願いを込めて見送った。
16人目
16時46分。見本誌や無料配布物を少し遠くから見ている方がいたので「よかったらぜひ、サンプル読んでみてください」とお声がけ。少しの立ち読みのあと、『使いどころなさそうでややある話』をご購入! 終了間際で会場を去る方も増えており、もうそろそろ打ち止めかなと思っていたのでうれしい。
17人目
16時58分。なんと隣のブース(F-33)の方々が声をかけてくださる。一人の方は私の接客をちょいちょい耳に挟むうちに本の内容に興味がわいたとのこと。
さらにもう一人の方は以前から私のnoteを読んでくださっていたらしい。出店に際して参考にしたこともあると聞いて、できれば両手で握手を交わしたかった(人見知りなのでもちろんできず)。
私も一番はじめに「本を作って文学フリマに出そう!」と思ったとき、文字通りゼロからのスタートだったにもかかわらず、いろいろな書き手の方々がnoteでシェアして下さっていた情報のおかげで本当に助けられた。
だから、まわりまわって自分の発信も少しだけ誰かのお役に立てたのだと知れて、それはそれはうれしかったのだ。
当日の状況をその方目線で振り返るnoteも見つけて、ほほえましく拝読した。
ここでタイムアップ。この日、既刊『使いどころなさそうでややある話』は15冊、新刊『つぶつぶ10年』は11冊売れた。前回の文学フリマ、そしてこの間に本屋さんの棚借りなどで扱っていただいたりしてちまちまと販売した数も含めると、累計75冊くらい売れたと思う。
半ば衝動的にチャレンジした本作り。刷りたてのそれを初めて目にした瞬間は取り返しのつかないことをしてしまったような気持ちになった。(こんな得体のしれない人間の本が売れるか…?)と恐ろしくなったものだ。
しかし活動を続けるなかで「読んでくれる人がいるんだ」との実感を一つひとつ掴むことができ、そのたびに励まされてきた。
ふと一方で、いつまでも励まされているだけでいいのだろうか?とも思い始めた。もう少し。今はまだぼんやりとして自分でもよく見えないが、もう少し頑張って、新しいものも書いていきたい。そんな意欲もわいてきた、かもしれない(言い切ることができない小心者)。これは今までになかった心の動きで、自分でも驚いている。
実は来年、短期の文章教室にも通ってみようと計画している。まだまだ書きたいことがある、でもまだまだ自分の常識や居心地から抜け出せていないような気もする。頭の使い方、言葉の使い方が固まってきてしまっているというか。
読んでくれる人がいる、そのことを意識しながら、これからもっと自由にいろんなことを書き続けていきたい。
おまけ(購入には至らなかったが印象的だったお客さん)
①今年6月から棚借りをしていた機械書房さんで本を見かけていたらしく、「ご本人ですか?」とお声がけいただく。「そうです!」と応えると、なぜか若干うろたえている様子(に見えた)。曰く「男性だと思っていました」。
私は、文章の内容によっては性別などの属性を明かすが、必要なければあえて書かないことが多いので、なんとなくうれしかった。その方はうろたえた感じのまま去っていかれた。
②二人組。ブースを興味深そうに眺めていたので本の趣旨を説明。「『つぶつぶ10年』は、私が10年間Twitterをしてきたんですが、そのダイジェストみたいな感じです、Twitter日記みたいな」。
「へえ~」と言いながら見本誌を手に取ってぺらぺらとページをめくる。少しして「Twitterだ! Twitterがここにある!」と楽しそうに笑ってくださったのがうれしかった(『使いどころなさそうでややある話』も立ち読みし、こちらは「長めのTwitterだ!」との感想をゲット)。
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※ちなみに現在、機械書房さんでは棚借りではなく店頭で取り扱っていただいている。ついでに12月からは神奈川県小田原市にある本屋「南十字」さんで一箱本棚を始め、そこでも販売開始。近くにお住まいで興味を持たれた方はぜひ手に取ってみてください!(セールス)
振り返り最後の回は想定以上に長くなってしまった。本日は以上です。
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