指圧私塾の第一歩
指圧私塾旗揚げのご報告
指圧の東洋医学的背景
七月吉日、夏らしい晴天のもと、奈良にて第一回の指圧私塾を開催いたしました。
名古屋から、うめむら指圧院長の梅村先生をお招きして、午前の部は梅村先生のInstagramでの告知に応募して下さった方を中心に、遠く神奈川、滋賀、兵庫からお集り下さいました。
今回はまず初回ということで、
「指圧ってなに?」
「現役の指圧師ってどんな施術をしているの?」
ということに、重点をおく体験会のようなつもりで私はいたのですが、さすが梅村先生は、午前の部は、鍼灸師とあマ指師がおひとりもいらっしゃらないことを鑑みて、東洋医学的背景を含めた指圧の意味をまず座学で講義してくださいました。
これ、絶対に必要でした。
私は座学的なことはオンラインでもできるし、皆さんそれぞれのご関心にしたがって、本や動画でも東洋医学的なことって学べるから、まずは体験を…とばかり思っていたのですが、やはり座学ではあっても、今から行われることの大きい流れの中の位置づけとか、何を大切にして、施術をしているのかということは、お説明があるのとないのとでは大きく違いました。
よくYouTubeで文字おこしの機械音が説明してくれる動画があって、私はそれがとても苦手なのですが、梅村先生の肉声で、体温をもった言葉が、同じ空間にいる人達に直接届いているのを後ろからみていると、言葉にも氣がこもっているかそうでないかは、一目瞭然にわかるものなんだなぁ…と感心していました。
陰陽虚実補瀉について、お子さんの寝かしつけを枕にお説明をいただいたことは、参加者の方々がそれぞれの日常に引き付けて考える上で、大変わかりやすかったと思います。
指圧って面白い!
その後2ペアに分かれて、施術を受けて頂きました。
普段の施術を梅村先生はマットレスで、私はベッドでしているので、それぞれのスタイルでいつも通りの施術です。
たぶん、連続して二人の指圧施術を受ける経験はレアなことでしょうから、同じ指圧と名乗っていても、指圧師によってこんなに違うんだ!ということはよくおわかりいただいたのではないでしょうか。
梅村先生は、やってみせて、させてみせて、体感する、肚落ちするということを大切にされた時間のようでした。(たぶん)
私は脈を診て、お腹を診て、施術の前後の違いがはっきりわかることを、体験していただきました。
あとは、気持ちよいという感覚をしっかり、ご自身のおからだで感じていただくこと。
参加者の方がどなたも氣の通りがよく、清々しい素直な氣の方ばかりだったことにも助けられて、会場は和氣藹々、とても優しい時間が流れていました。
そして、皆さん異口同音に指圧って面白い!指圧って楽しい!もっと知りたい、学びたい!と仰って下さったのが、何よりも嬉しく、指圧私塾を立ち上げた甲斐のあることでした。
鍼灸師が指圧を受けると…
午後の部は、ならまち月燈のスタッフとご縁のある学生さん、鍼灸師さんとで、ひたすら施術を受ける体験。
それぞれに多くの患者さんを抱え、臨床の場を持つ猛者たちですが、それぞれあちこちにお疲れをしっかり抱えるお年頃。
研修とは名ばかりで、ひたすら気持ちいいに身を委ねる時間だったんじゃないでしょうか。
そしてなによりも私が感じた、梅村先生の母性を皆さんしっかり感じて下さったと思います。
ならまち月燈は女性専門院ですから、当然普段接する患者さんは女性ばかりです。
女性同士というと、陰と陰の関係ながら、患者さんの陰を補うために自覚的に陽に傾いた存在であろうと恣意的にしていることがよくあります。
その結果、自分自身が陰虚になっていることもよく自覚します。
ですから上の画像の構図は、梅村先生が陰中の陽であるように見せかけながら、実は陽中の陰として、月燈スタッフの陰を満たして下さっているとみることもできるのです。
陰陽はすぐに反転します。極まって反転することもあれば、思いがけずこのタイミングで?というようなときに反転することもあり、社会的な役割、地位も含めて、陰陽の補完的な役割を自然と果たすことが、指圧の道の延長線上にあったりします。
梅村先生はとくに絶妙なバランサーですから、その場その場に、その方その方に応じた氣の補瀉を自然となさって下さいます。
月燈の先生方は、普段それぞれのご自身の流儀によって、メンテナンスには通われているはずですが、ルーティンの場から隔絶されたところで、陰分の補給を安心して受けられるのは、なかなか得難い場だったのではないでしょうか。
私には、慈雨のように梅村先生が降り注いで下さる氣を、ひたひたひた…と養分のように、先生方が吸い上げている音が聞こえました(笑)
あと、鍼灸師が指圧をうける実利的な利点は、鍼をうつ手が気にならないということがあると思います。
昔、関西伝統指圧で開業されていた先輩から、当時、鍼灸の大御所のあの先生もこの先生も、常連さんだという話を聴き、どうして?と問うと、鍼灸院に行くと、鍼を打つ手が気になってリラックスできない、そもそも弟子筋のところに行くのも弟子の手が気になるし、流派の違う鍼灸院に行くと、もっとなにか学ぼうという欲が邪魔して、自分のこころやからだから気が逸れてしまう。
結局、自分自身が自分の身体に集中して、リラックスしようと思うと、指圧してもらうのが一番楽になるんだとのこと。
その気持ちは、今となってはよくわかります。
何を目的に施術を受けにいくかによりますが、自己治癒力を発現させるためなら、自分の内部に没頭できるのが一番です。
鍼が好きで、鍼しか効かないという先生ももちろんいらっしゃるでしょうが、東洋医学的な共通認識をもつ、指圧師に施術を受けるというのは、色んな意味でとても良い選択肢であると私は思います。
というわけで、みなさんそれぞれ起き上がりたくない…、帰りたくない…状態で、私がこの何か月間か叫び続けていた梅村先生の指圧の魅力を、心の底からわかって頂けたようで、とてもよい時間でした。
これからの指圧私塾
まずは、今回なんの実績もない思いつきのような試みに、私たちを信じて参加して下さった方々に厚く御礼申し上げます。
本当に有難うございます。
特に午前の部の方たちには、言葉に表せないほど大きな気づきを頂くとともに、これから私たちが目指すべき道を照らし差し出していただいて、有難いという思いでいっぱいです。
そのうちのお一人、パーソナルトレーニングジム、Po‐Gym経営の春木一真先生が、YouTubeにご感想を上げて下さったので、ご紹介します。
すぐにこんな風に率直に感想をお聞かせいただいたこともとても有難いことですが、私自身目から鱗がポロポロ落ちる体験となりました。
春木さんは、柔整師さんですが、整骨院や接骨院ではなく、あえてPo-Gymというパーソナルトレーニングジムを開業されています。
Po-Gymのポが、心と身体がポジティブになるジムのポと知って、そのセンスに痺れましたが、noteやInstagramでの発信をよくよく遡って拝読すると、自分自身がいかに表面的な、固定概念に捕らわれていたかを感じて、が~~~~ん…という感じでした。
私は鍼灸師、あマ指師は東洋医学陣営にいて、施術方法においては大同小異あるものの、目に見えるものより、見えないもの、氣という概念については共通認識があり、柔整師さんや、理学療法士、セラピストさんといった西洋医学的な陣営の方は、数値や評価、筋肉や神経といった目に見えるものを追い、それが第一義であるために、私たちがこれから伝えようと思っていることになんて、興味がないのではないかと思っていました。
特に、柔整師さんは整骨院を開業されている方が多く、保険診療をされていることもあり、急性の疾患を治療するということに注力されているはずなので、指圧師がしていることなんて、生ぬるく思われるんじゃないかと勝手に恐れていました。
もともとあはき師は整骨院に雇われることが多く、鍼灸院に柔整師が雇われることはほとんどないため、力関係も明白で、なんとなく人種が違うような感じを、旧態依然の私の脳は偏見として持っていたんですね。
でも、それは大きな大きな間違いでした。
とても繊細で、センシティブな感性を纏った柔整師さんに、私は初めて会いましたが、きっとそういう肩書でみるのは、もうとうの昔に時代遅れなんだなあということがありありとわかりました。
クライアントが主であり、自分が従であること。
身体が変わる感動が、心を元気にすること。
そういう場所を創りたいという思いが、私の開業時と全く同じでした。
年齢も性別も資格も問わず、わかりあえる人とはわかりあえる。
共振し、共鳴した氣が広がっていく、わくわくする感じ。
そう、この感じを味わいたくて、味わってほしくて、指圧私塾を始めたんだと、しみじみ思うのでした。
海に入って、海の水を両手で囲って「これは自分の水だ」と思うとします。
でも手から放って、海に戻せば海の水だし、そもそも水が自分のものだったわけでもありません。
それを判別しようとする理性や、権利や欲を越えて、一緒に分かち合える同志とシェアしあうことが豊かであるという時代に私たちは生きています。
知識も技術も経験も囲いこむことなく、シェアすることで、私たちはもっと世の中に役立つ人間になることができます。
そういう場を創ることが、私の今の天命なのかもしれないと気づかせて頂いた、第一回指圧私塾でした。
皆さま、本当に有難うございました。
最後まで読んでくださって有難うございます。読んでくださる方がいらっしゃる方がいることが大変励みになります。また時々読みに来ていただけて、なにかのお役に立てることを見つけて頂けたら、これ以上の喜びはありません。