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過度な平等が奪うもの〜プリセールスエンジニアの成長を考える〜


はじめに

「平等」「インクルーシブ」――素晴らしい言葉です。しかし時として、これらの言葉が組織を萎縮させ、本音での議論を難しくしていることを感じます。私自身、この手の話を社内でできない雰囲気を痛感しています。ハラスメントの懸念が影を落とし、誰もが本質的な議論を避けてしまう。結果として、それは誰の成長にもつながらない状況を生んでいるのです。特にSaaS業界のプリセールスエンジニアは、製品を自分たちが開発している訳ではありません。私はここに新入社員がプリセールスエンジニアになる上での課題意識として皆が共有すべきだと感じています。



表層的な成功の誘惑

プロダクトの伝道師という幻想

確かに、SaaS製品の特性上、製品知識さえあれば一定の成果を上げることは可能です。新人でも、製品の機能を説明し、基本的な提案活動を行うことができます。時には、ベテランと同等の数字を出すこともあるでしょう。しかし、それは本当の意味での成功と言えるのでしょうか。製品知識だけを武器に得られる成果は、往々にして表層的なものに留まります。その背後には、多くの場合、見えないサポートの存在があります。
これは別のコラムでも書きました。


見えない支援の価値

新人が成果を上げる裏には、多くの場合、ベテランによる静かなサポートがあります。技術的な裏付けの確認、リスクの事前検証、そして時には直接的なフォロー。これらの支援があってこそ、安全な挑戦が可能となるのです。



真の成長機会とは

段階的な成長の重要性

プリセールスエンジニアに求められる本質的な価値は、単なる製品知識を超えたところにあります。

  • 技術の本質的な理解

  • ビジネス課題への深い洞察

  • リスクの予見と対策

  • 長期的な価値の提供

これらのスキルは、時間をかけた経験の積み重ねによってのみ獲得できます。先だってのコラムでソリューションクリエーターになって欲しいと願いを込めました。

適切な役割分担という配慮

新人に対して過度に高い期待をかけることは、時として最も重要な成長機会を奪うことになります。適切な役割分担のもと、段階的に責任と経験を積み重ねていく。それこそが、真の意味での平等な成長機会の提供ではないでしょうか。


未来への投資

深い専門性への道

表面的な成功で満足せず、より深い専門性を追求する。それは時として遠回りに見えるかもしれません。しかし、その過程で得られる経験と知見は、かけがえのない財産となります。

ベテランの存在価値

豊富な経験を持つベテランの存在は、組織にとって大きな価値があります。彼らの持つ知見は、単なる年月の積み重ねではなく、多くの試行錯誤を経て得られた叡智です。この価値を正当に評価し、次世代への継承を図ることが重要です。


真の平等とは

成長機会の平等

真の平等とは、同じ仕事を任せることではありません。それぞれの段階に応じた適切な挑戦機会を提供すること。そこにこそ、本当の意味での平等があるのではないでしょうか。

個々の成長に寄り添う

一人ひとりの成長段階や適性に応じた機会を提供する。時には遠回りも必要かもしれません。しかし、その過程こそが、真のプロフェッショナルへの道となるのです。



おわりに

過度な平等は、時として最も大切な成長機会を奪ってしまいます。しかし、それは決して悲観的な現実ではありません。むしろ、私たちはもっと自信を持って、新しい世代と向き合うべきではないでしょうか。

過度な気遣いや遠慮は、かえって相手への期待や敬意を損なうことになりかねません。私たちが積み重ねてきた経験に自信を持ち、それを次の世代に正直に、誠実に伝えていく。そして、彼らの新しい視点や発想を受け入れ、共に成長していく。

新しい世代には、目の前の成功に満足せず、より深い専門性を追求してほしい。そして私たち自身も、彼らと共により良い未来を築いていく覚悟を持ちたい。それこそが、真の意味での「インクルーシブ」な組織の姿なのではないでしょうか。

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