【本のまとめ】世界2.0 メタバースの歩き方と創り方
序章 メタバースとは何か?
メタバース=インターネット上に作られた3次元の仮想空間
メタ(=概念を超える、上位概念)+ユニバース(=宇宙)を組み合わせた造語
→SF小説「スノウ・クラッシュ」の中で使われていた
「マトリックス」、「レディプレイヤー1」のような世界
2003年「セカンドライフ」
→メタバースをリリースしたが、通信速度の遅さによるフリーズやノロノロ運転が原因で流行らず
2010年代後半 PC、スマホのスペックが爆上がり
2017年「フォートナイト」
→世界中で爆発的ヒット、CEOがフォートナイトの空間をメタバースと呼んだことでバズワードに。
バズワードに対する反応
➀シニア層に多い
→「インターネット上に新たな世界ができてその世界を中心に世界が回っていくなんてあり得ない」
➁若者に多い
→「自分にとってプラスになるのであれば、新しい流れに乗って活かしてみよう。」
➂ミドル層に多い
→「一応知っているけど、どうせくだらないものでしょう。」
➁以外の選択肢に得られるものは何もない
→メタバースという新しい流れを味方につけて、自分の人生にポジティブな変化を手に入れる
テクノロジーの本質的な特徴
➀人間の拡張
→蒸気や電力:人間の手足(動力)の拡張=「動力革命」
→PC、インターネット:知能の拡張=「知能革命」
➁人間の教育
→時がたつと、人間がテクノロジーに合わせて生活スタイルを変えていくようになる。
→PCは元々大量のデータを素早く処理する計算機能がすごいだけの存在だったが、今は最も効率的なアクションを人々に「教える」ようになった。
➂掌から宇宙へ
→拡張は「身体の近く」から始まる。最初は鈍器や斧、草履だったが、今は汽車や自動車、ロケットなど物理的に遠くへと浸透していく。
浸透する順番は、
消費者→(3~5年遅れて)企業→(3~5年遅れて)行政
次にどんなテクノロジーが注目を集めるかはかなり正確に予測することができるが、「いつ」来るのかの予測は極めて難しい。
「ニコラ・テスラ」
→交流電流の発明者。100年以上前に、今のWi-Fiやスマホ、インターネットのように、無線での送電が理論上可能であることを理解していたが、あまりにも時代を先取りしすぎたがゆえに、研究途中に資金援助がなくなり、亡くなってしまう。
→それに影響を受け、商業の知識まで持たないとダメだと気付いたのが「Google」の創業者ラリーペイジ、世の中がニコラ・テスラを忘れないようにと社名をつけたのが「テスラ」の創業者イーロンマスク
メタバースは今がタイミング
技術オタク(ギーク)から一般の人に伝わるまでの、数年間の間に参入することで、世の中のメインストリームになった時に優位な立場に入れる。
自分以外の能力があると思う人が熱狂していて、テクノロジーに疎い人が理解できない、興味を示さない。
=「アタリ」の可能性が高い
生まれたときから存在しているテクノロジー
→自然な世界の一部と感じる
15~35歳の間に発明されたテクノロジー
→新しくエキサイティングなものと感じる
35歳以降になって発明されたテクノロジー
→自然に反するものと感じる
↓
15歳以下の子供たちが、どんな遊び方をしているかによって、その後の社会で何が普及してくるのかが高い確率で予測することができる。
「何もない」は最大の武器
「イノベーションのジレンマ」
=スタートアップや個人が取り組んでいるようなまったく別の新しい流れに、巨大企業がフルスイングできずに、気づいた時には市場を奪われてしまうこと。
当時世界最大のユーザー・資金・人材を抱えていた「Yahoo!」が、時代の変化に対応できずに、2人の大学院生が立ち上げた「Google」にひっくり返された。
新しいテクノロジーは何かのきっかけで急成長して、世の中に一気に普及することが多い
=予測可能な成長を期待される大企業の経営スタイルとは相性が悪い
→初期の段階では、制約が少なく、細かくスピーディーに動けるプレイヤー(=もたざる者)の方が有利。
国家戦略としてのメタバース
国家がメタバースなどの新しいテクノロジーの将来性を読み間違えると、その影響は甚大。
産業が丸ごと他国に奪われると、
・重要な人材が海外に流出
・企業が安値で買いたたかれる
・給与は上がらない
・経済成長が止まる
・先進国としての世界での影響力が低下
今回のメタバースには、日本にかなり「地の利」がある。
→「コンテンツ大国」だから。
=日常的に漫画を読み、アニメに触れて、ゲームに課金するという国は世界的に見ても珍しい。
「人材・知財・文化」の3つの観点すべてで、有利な位置にある。
・人材
→感動させるコンテンツの作り手(クリエイター)が多く、業界にノウハウも蓄積されている
・知財
→「知的財産権」のこと。コンテンツの版権。世界的に人気のあるものの知財を持っている
・文化
→ユーザー1人あたりの課金額は世界でもぶっちぎりで1位。アバターやデジタルアイテムの購入に抵抗感がない
メタバース以外の新産業
➀宇宙産業
➁IT産業
→両社とも莫大なコストがかかる。しかも現状の日本はそこに投資できていない。
メタバースの技術と日本のコンテンツを融合することで、価値を何十倍、何百倍にまで高めることができる。
=日本からコンテンツが流出すれば、大変な損失になることは間違いない。
→日本にとっての「ラストチャンス」になる。
第1章 メタバースの衝撃
人類が目指した究極の問い
メタバース=「世界を創造する」こと
そのためには、「世界とは何なのか」「世界とはどうやって動いているのか」の普遍的な法則性を理解しなくてはならない。
→歴史上の知的トップランナー(=天才)は、「世界の心理とは何なのか」という究極の問いへの答えを理解しようとしていた。
例)万有引力、相対性理論、普遍学、、、
テクノロジーの役割
=一部の階級特権だけが独占していた能力を民主化すること
インターネット→「情報」の民主化
クラウドファンディング→「金融」の民主化
検索エンジン→「知識」の民主化
仮想通貨→「お金」の民主化
テクノロジーとは「運命に抗う武器」だ
人間社会は、
➀経済、➁感情、➂テクノロジー
の3つのベクトルが引っ張り合っている
→経済によって社会は発展し、感情によって大小の共同体がつながり、テクノロジーによって社会は進化している
人脈や経験がなくても、テクノロジーがあれば世界とつながることができる。
メタバース→「神」の民主化
=世界を創造する能力を持つのは神様だけだったはずなのに、その能力を万人に向けて開放している。
アメリカ、中国の巨大IT企業
→「スマホとSNSの次の大きなイノベーションは、メタバースだ」という認識が共有されている。
ディズニーは約一日4万人程度しか入れないが、メタバース上にできれば空間に制限がなくなり、アトラクションの前で行列を作る必要もなくなる。
メタバースに関する3つの誤解
➀「コンテンツがない状態でメタバースを作ったところで失敗する。」
➁「金を稼ぎたいだけのもの。くだらない。」
➂「VR端末なんて重くて流行らない。」
メタバース革命=「インターネットの3次元化」革命
→PCの性能、通信速度、3DCG技術の3つの進化が重なって出来ている。
必ずしもVRゴーグルを被る必要はなく、2次元のインターフェースやスクリーンでも可能。
例)「Fortnite」、「Minecraft」、「Roblox」
「デバイスの普及→コンテンツの普及」
これがインターネットにおける大原則だったが、今回は例外的に崩れている。
「3DCGコンテンツの普及→VR端末などのデバイスの普及」
まずコンテンツに注力し、3~5年後を見据えてデバイスに対応していくことになる。
VRデバイスの普及までの課題
2020年の各出荷台数は、
PC→約3億台
スマホ→約12億台
VRヘッドセット→1600万台
原因は、「もともと人類にはゴーグルを被る習慣がない」ということ。
VR端末が普及するには、
➀次の世代の浸透を狙う
→子供に使ってもらって、「VRネイティブ」の登場を待つ
➁すでに定着している習慣に寄せる
→最も近いのが「めがねをかける」という習慣
➂ファッションの一部にする
→VR端末を持っている、つけていることが「クールである」と感じてもらえるようにする。
「VR酔い」
=脳の処理と身体情報のズレが起こることで、気分が悪くなったり、めまいが起きたりする。車酔いのような状態。
人の目と同レベルの超解像度を実現するVRも開発されている。
→VRゴーグルをつけても外しても、世界の見え方が変わらなくなる。
メタバースは「ゲーム」こそが入り口
ここ30年間
「入り口」ニュース・SNS→集客の場
「ゴール」ゲーム→マネタイズの場
メタバース
「入り口」ゲーム
「ゴール」そのほかのコミュニケーションやビジネス
→「Fortnite」はデジタルスキン(アバターに着せる服)だけで年間約5500億円の売上(ラグジュアリーブランドと変わらないレベル)
Fortniteの運営元である「Epic Games」の企業価値は4~5兆円を超えていると想定されており、「Google」や「Facebook(Meta)」は、メタバース領域で超えることができない。
ブロックチェーンやNFTとの相性
NFT「非代替性トークン」
=デジタルデータをグッズのように売買したり流通させるための技術(デジタル所有権)
メタバース=NFTではない。
メタバース=「相互交流できる3次元のバーチャル空間」
Web1.0
1990年代後半。個人がホームページを開設することができるようになった頃。情報発信が民主化された。
Web2.0
2000年代前半。ネット上で相互交流ができるように。SNSの始まり。GAFAやBATの時代。
Web3.0
GAFAなどが中央集権的に支配していたデータの主導権をユーザーの手に戻し、非中央集権的・分散的なインターネットを実現するという流れ。
Web3.0、メタバースの潮流の中で最も恩恵を受けられるのは、「クリエイター」
→人々が欲しがる作品をデジタルデータとしてゼロから作ることができるから
国土交通省の「PLATEAU」
「PLATEAU」=国土交通省が立ち上げたプラットフォーム。日本全国の都市データを3Dのデータにまとめ、それをネット上で無料交付している。
→「もう一つの世界」をデジタル上に作り出し、シミュレーションとして活用する。
例)自動運転、交通事故の予防など
ミレ二アル世代(=2000年代に社会人になる世代、デジタルネイティブとも呼ばれる)の主軸は、2次元のインターネットとSNS。
今後のメタバースネイティブ世代とは、明らかに違う世界観になる。
→今の世代が「老害」扱いされかねない
今後通信規格が7Gや8Gまで進化すれば、メタバースに人間が自然に没入するようになる。
さらに、小学生や10代の子たちが20歳以上になり、社会的に力を持つタイミングで、人間の習慣がガラリと変わっていく。
現実よりも魅力的なバーチャル・ディズニーランド
このまま技術が発展していけば、現実よりも美しい仮想通貨が作り出される日がくる。
→制約もないため、24時間没頭し続けることができる。
→現実世界で叶えられない夢も、仮想通貨でなら自由自在に叶えることができる。
凄まじいクオリティの3DCG作品を作る子供が増えている。
メタバース革命の主役は、今は名もなき子どもたちである。
第2章 世界の創り方【視空間】
世界とは何か?
世界=「視空間」+「生態系」
「視空間」=視認できるビジュアル
例)観光地、大自然、旅行に行ける場所など
「生態系」=社会的な機能や役割
例)国家、社会、共同体、家族、サロンなど
「視空間」
人間の目に映る視空間は、
人間(アバター)と景色(フィールド)の2つに分かれる
他の人間には関心度が高いが、世界の背景にはかなり鈍感。
「不気味の谷」現象
=人間のようなものでかなりリアルだけどなんか違う。となると親和感がかなり落ちるが、逆にどう見ても人間ではないものには、親しみや愛情を抱きやすくなる。
人間は驚くほど世界の風景を覚えていない
目印をピンポイントで「空間の要点(ランドマーク)」として把握し、他の視覚情報は削ぎ落している
→渋谷駅前のスクランブル交差点を思い浮かべてください。
と言われたときに109かスタバしか思い浮かばない。
つまり仮想空間上において、アバター以外の風景は意外と適当でも気にならない。
「日本っぽさ」「東京っぽさ」「アジアっぽさ」
・看板の文字が縦書き
・歩道の真横に樹木や生け垣が植えられている
人間は、自分が知っている経験と類似点がないと、作品を楽しんだり、没入することができない。
→漫画、映画、ゲームなどの世の中の作品は、すべて現実世界を模倣している
「現実っぽく見えるけど、この世には存在しない新しい世界」を生み出すことがメタバースの設計において大事になる。
もし町中の監視カメラやスマホが写すデータをAIが学習したら、ほぼリアルタイムで現実世界をコピーした、仮想空間をつくることができるようになる。
→シンギュラリティ(技術的特異点)
メタバースの構築には、
➀まずアバターから入り、次に仮想空間を広げていく
→GREEの子会社REALITYがアバター同士が会話したり、配信できるビデオチャットをリリースした
➁まず仮想空間を提供して、後付けでアバター作り
→「Cluster」や「VRChat」は、バーチャル空間を提供して、まず人を集める。(初期設定のアバターは非常にシンプル)
➂エンタメコンテンツ(ゲームや映像)を提供し、そこに集まる人のコミュニケーションを促進
→「Fortnite」などのキラーコンテンツや資金調達力に余裕がある企業
第3章 世界の創り方Ⅱ【生態系】
秋元康の世界のとらえ方
非凡な人
→普通の人とは「世界のとらえ方(=世界に対する解像度)」が全く違う。
世の中に対する解像度が圧倒的に高く、何をすれば何が起きるのかという法則性を他の人よりも熟知していて、それを自分なりに勝ちパターンにしている。
王道コンテンツ
→人の心に刺さる世界の「普遍性」を理解したうえで、「流行」を正確に把握している必要がある。
「生態系」としての世界と、「空間」としての世界
世界=「空間」+「生態系」
➀「空間」
目で見て、触れて五感で感じているもの
創るには、テクノロジー系の要素が強い
➁生態系
国家、社会、コミュニティなどの人間の頭の中にあるもの
自然界のような見える形の世界と、SNSのようなバーチャル空間にだけ存在する世界がある
→それが生き物のように有機的で、かつ分散的に動いている
「人間が仮想空間上に、意識的にデザインして生態系を成り立たせることができれば世界はより良いものに変わっていく」
世界を変える=新しい生態系を創ること
世界を変える=自分たちが住む生態系の構造を変える
世界を変える近道は、新しい生態系の仮説を考え、実際に成り立つことを証明すること。
=新しい生態系のモデルを考え、仮想空間(=もう一つの生態系)をが実際に成り立つということを成功させれば良い。
=メタバース上に新しい生態系を成功させ、リアルの世界に声をかけ参加者を募る。
うまく回っている生態系
➀自律的
→外部からの指示で動くのではなく、まるで集団そのものに意思があるかのように動く。
参加者が生態系内のルールを理解し、自分が何をすればよいのかをわかっている状態でないといけない。
➁有機的
→参加者がお互いに連携しながら、一つの生態系を成り立たせていくこと。
人の出入りがあったとしても各人が交流しながら、全体を形作っていく。
➂分散的
→指揮官がいなくても、動き続けること。
「自然界」が最もうまく成立している。
カリスマを中心に集団をつくるのは手っ取り早いが、長く続かせることはできない。
カリスマが急所となり、消滅に向かってしまう。
→カリスマを中心に母集団を形成した後、徐々に生態系として成り立つ集団へと移行させる。
→仕組みとして回り、参加者全員が自分で考えて行動する集団。
生態系の役割と価値の種類
生態系=「価値あるものをやり取りする環境」
社会での価値は、
➀実用的価値(儲かること、役に立つこと)
実生活で役に立つモノやサービスのこと
➁感情的価値(共感できる、ポジティブになれる)
儲かるわけでも、役に立つわけでもないが、感情にポジティブな影響を与えてくれる。
ライブや音楽鑑賞、スナック、飲食店など
➂社会的価値(世の中にとってプラスなこと)
ボランティアや寄付など
価値の大きさは、実用的>感情的>社会的
しかし、世界が豊かになっていくにつれて、
社会的>感情的>実用的
になってきている。
SDGsもこの流れによるもの。今後も社会的価値の比重が大きくなっていく可能性が高い。
上記の価値をやり取りするのは、
「生産者(価値を作る人)」と「消費者(価値を感じる人)」の2タイプに分かれる。
→生産者の数は少なく、消費者の方が多いパターンが大半を占める。
生産者と消費者はきっぱり分かれるのではなく、状況によって変わっていく。
例)仕事時は生産者、家に帰ると消費者になる。
1人の参加者が複数の役割を演じられるようになると、価値のやり取りが活発になり、生態系が強化されていく。
生態系の起点は「生産者」側にある
新しい生態系を創る最初のハードル
=価値を生み出してくれる生産者が参加してくれるかどうか
価値を創る生産者に参加してもらう→価値に引き寄せられて消費者が集まる
メタバースに生態系を構築するときは、この順番が大事。
生産者→消費者がいないとそのコミュニティにメリットを感じられないので参加してくれない
消費者→生産者がいないとそのコミュニティにメリットを感じられないので参加してくれない
このジレンマを突破する方法は、
➀自らが生産者となり消費者を呼びこむ
Amazonや任天堂のように、まずは自らが生産者となり消費者を集め、その後他の生産者に環境を開放する。
早く立ち上げられ、自社のノウハウを他人にも共有できる一方、最初の赤字に耐え、ヒット作を作る必要がある
➁生産者と消費者の両方を兼ねる存在を見つける
初期に両方を兼ねるプレイヤーが参加していると、少数でも活発な生態系が成立する。
その後、片方しか担わない参加者が現れても、双方の需要に応えることができる。
しかし、生産者側に行動な専門性や資格が求められる場合は成立しない。
例)医師など
➂生産者にとって魅力的な情報や道具を先に提供する
➀とは真逆のアプローチになる。
「自力でやるのはめんどくさい」「あったらいいな」と思うツールを無償で提供する。
例)Instagram
④ほかの生態系に「タダ乗り」する
他の生態系に便乗して、その生態系が持つメリットを享受するやり方。
他の生態系に依存状態にあるため、追い出されるとどうしようもなくなる。
生態系の設計者の仕事
生産者と消費者が価値をやり取りしてくれる場を提供するのが創業者の役割。
➀マッチングの支援
→消費者の好みに合わせて見つけやすくする(=検索性の向上)、好みに合ったものをオススメしてあげる(=レコメンデーション)が必要。
➁信用の可視化
→参加者の信用が可視化される仕組み絶対的に必要。生産者の情報や口コミ情報などで、信用情報を蓄積していけるシステムがあるとやり取りが活発化する。
➂違反者へのペナルティ
→他人に害を加える参加者を放置しておくと、善良な参加者ほどその生態系からいなくなる。
明確なルールを設けて、守らない参加者にはペナルティを科す。そうすることで生態系内の秩序を安心安全に保てる。
④自助努力できるための知見や道具の提供
→生態系の強みは、参加者が自発的に努力することによって全体が盛り上がっていくこと。そのために、成果を出しやすくする環境を整える。
向上心がある参加者には知識とノウハウを供給するプログラムを提供し、彼らの活動を後方支援してあげる。
生態系を一つの生命のようにとらえる
➀代謝構造(価値を循環させること)
→エネルギーを取り込んで循環させる仕組み
➁相互作用性(参加者同士が交流していること)
→細胞同士が作用しあうこと。参加者同士の価値のやり取りやコミュニケーション
➂恒常性(誰かが抜けても全体が変わらないこと)
→代謝し細胞が入れ替わっても同一性を保つこと。新しく参加したり、抜けても生態系は変わらず機能し続けること
④自己組織化(ルールや文化が勝手に作られること)
→情報量の増加に伴って勝手に秩序が形成されていくこと。参加者が増えると、事前に役割分担やルールも形成される。
⑤ホロニック・フラクタル(小さな集団が寄り集まって大きな集団をつくること)
→個々と全体が有機的な調和へ向かい、分解後の部品が元の個体と同じ形をしてること。マトリョーシカや、会社における課や部が集まることで会社全体を形成しているということ
⑥成長と進化(環境に適応しながら複雑化していくこと)
→価値のやり取りが繰り返されると、生態系が成熟していき、外部環境に合わせて変化していくこと
➀~⑥の特徴を持つ生命構造を「散逸構造」と呼ぶ。膨大な参加者を持つ生態系も同じ特徴を持つ。
生態系をより強固にしていくためには?
➀価値の重ね合わせ
→「実用的価値」「感情的価値」「社会的価値」のやり取りを増やすことで生態系がより強固になる。
➁コミュニケーションの促進
→参加者同士のコミュニケーションが活発であればあるほど生態系は強固になる。
設計者はコミュニケーションの場を作り、頻度を増やす工夫が必要になる。
➂ヒエラルキーの存在
→ヒエラルキーが存在することによって、コミュニケーションが取りやすくなる。それぞれの業界における特定の指標が軸になってそこから関係性が生まれている。
④流動性の確保(固定化の防止)
→評価が更新されるような流動性があると、生態系が活発化する。一度優位に立ったものがそのままだと、生態系全体が廃れていく。
⑤不確実性の担保
→不確実な環境に置かれた方が生物としての集中力が増し、活動が活発化する。何の変化もない環境では、進化することをやめてしまい、徐々に衰退がはじまる。
参加者個人を引き付ける仕掛け
➀ランダム・フィードバック
→自分のアクションに対してのフィードバックがバラバラだった時に、脳が報酬を感じる性質。3,4回に1回ぐらいの確率で成果が出るものに最もハマりやすい。
➁届きそうな目標の設定
→達成可能な目標が目の前にあると、挑戦してみたくなる習性。少し頑張れば達成できそうな目標があると継続しやすくなる。
➂難易度のエスカレーション
→目の前の作業の難易度が徐々に増していくと、熱中してしまう性質。
④社会的相互作用の可視化
→周りから見られている状態が可視化されると、意識がそこから離れなくなる習性。PV数やいいね、テスト結果の張り出しなど
⑤進歩している実感の提供
→小さな成功体験を積み重ねることで自信につながり、活動を続けやすくなる。会員向けスタンプカード、シールを集めると景品がもらえる、ログインボーナスなど
生態系が有機的に進化する瞬間
相転移=水が氷になるように、あるシステムが全く別のシステムに移り変わる現象
十分な仕組みが完成して一度生態系が回り始めると、今まで無機質だった存在がいきなり有機的な生命に変化したかのように変わる→参加者同士の自発的なやり取りが増える→指数関数的にも伸びる→信用情報が蓄積され、それがそのまま生態系の価値になる。
=ネットワーク効果
不満や需要の理解、事態とタイミングの合致も重要な要素。
最も大事なことは、いまより良い世界を創ろうとする人間の意志。
→経済合理性を超えた設計者の「意志」と、それを形にするための「知識」、成果が出なくても続ける「忍耐」が同時に求められる。
今まで→論理的思考力が最も評価された時代
これから→論理的思考力だけでは価値を発揮することができなくなる時代
=「VUCAの時代」
Volatility(不安定さ)
Uncertainty(不確実さ)
Complexity(複雑さ)
Ambiguity(不明確さ)
→強まれば強まるほど、生態系は威力を増す。
生態系を創るためには、現実世界の構造を理解したうえで、概念として同じものを再現する必要がある。(→論理的思考力の上位互換)
無数に広がる多元的な並行世界
今まで複数人が数カ月で作っていた3DCGの作品を、個人が無料で簡単に作れる日が来る
無限に広がる仮想世界を自由に創れることで、世界は何層にも重なり多元的に並行する
→今までの人類のように「土地」を奪い合う為に攻撃し合う必要がなくなる。
複数の「世界」が並行していくつも生まれ、それぞれの世界で個人が「人格」を使い分けていく。
テクノロジーの進化により、人間の想像力と創造力が無限に拡張され、今の物理世界よりも魅力的な仮想世界を創り出すことができることで、未来は大きく変わっていくかもしれない。
第4章 競争から創造の世紀へ
人間は辺境に進み続ける
人間は元々狩猟民族だったため、生命の本質は流動であり、止まることは衰退と言える。
→新しい未開のフロンティアに飛び込んでいくときに、賢く頭脳を働かせて最も高い能力を発揮できる。
今の人間に残されているフロンティア
=”宇宙空間”と”仮想空間”
仮想空間では、ゼロサムゲームで誰かとつぶし合いをする必要がない
→世界はそこに「在る」ものではなく、「自ら創るもの」に変わっていく。
→人類の間で、壮大な「パラダイムシフト(世界観の転換)」が起こる。
SNSのアカウントを開設するような手軽な感覚で、自分だけの3次元空間を創り出し、オリジナルの3次元空間と自分のアバターを当たり前に持つ時代がやってくる。
1人がアバター(人格)を使い分け、複数の仮想世界がメタバース上に無数に展開されていく。
→現実世界の価値は、今の10分の1くらいにまで下がる
ユニバース(=単一の世界)ではなく、マルチバース(多数の世界)が生まれる。複数の仮想世界が並行して膨大に存在するようになる。
多数の空間それぞれで、性格も職業も違う多様な自分(=分人)になり、マルチ人格化が加速し可視化される。
本当の自分とは?外見と内面の密接な関係
その人の性格、個性、人格は身体的な特徴と密接に結びついている。
→もし人格が身体から解放された場合に、自分がどんな人格になるのか、自分自身もわかっていない
それぞれのアバターの外見的な特徴に引っ張られた新しい人格が形成されていく。
「マルチバース・マルチアバター・マルチ人格」
異なる環境で異なる人格を使い分けること(=分人主義)は、メタバースで加速していく。
次の世代では誰しもが多重人格であり、人格を使い分けるスキルを獲得している。
=統合失調症のような精神疾患としてネガティブに捉える必要はない
「魅力的な人格を作る」というスキルが重宝されるようになり、人格も肩書きのような感覚で環境に合わせて気軽に使い分けていくようになる。
漫画などのコンテンツは、人々を惹きつけるキャラクターを生むことができれば、多少ストーリーが荒くても何とかなる。
=メタバースでも、この格差がより深いレベルで発生する。
→キャラクターは自分自身のアイデンティティと紐づいているため、努力の方向性がより難しくなる。
商業主義から価値主義への転換
「儲かること」←→「社会全体にとって価値のあること」
資本主義が成熟するに伴ってかけ離れてきている。
この乖離を是正するためにできた思想が、「SDGs」「ESG」。
「価値主義」
➀実用的な価値
→役に立つか
➁感情的な価値
→感情にポジティブな影響を与える
➂社会的な価値
→社会全体にとってプラスになる
今後は、「資本主義」から「価値主義」へ移行していく。
YouTuberの登場で、
➀時間の制約
➁空間の制約
が無くなった。
メタバースはここにプラスして、
➂身体の制約
からも解放される。
「好きなことで生きていく」から、「なりたい自分で生きていく」に変わっていく。
自分にとっての、価値・主義・理想は何なのか?
価値創造が重視される時代になる。
メタバースは、過去起きたルネッサンスの再来。
→3DCGの技術が一般的になり、それを使えば万人がものすごい映像や仮想空間が創れてしまう。
想像力と創造力が世界を包み込む時代の到来
=「ルネッサンス2.0」の黄金時代
第5章 ポストメタバースの新世界
アルゴリズム民主主義:リアルとバーチャルの逆流現象
メタバースの普及によって、データとアルゴリズムの影響力がさらに大きくなる。
特にVRデバイスが普及すると、
➀データ取得規模
→今まではいいねやクリックなどで取得していたが、視界がすべてスクリーンになるので、何を見ているか、どのように移動しているかなど極めて身体に近いデータを取得できるようになる。
➁アルゴリズムの適用範囲
→アルゴリズムは学習できるデータの量と種類が増えるほど精度を高めることができるため、目に映る情報すべてがアルゴリズムの適応になる。
が大幅に拡大される。
ユヴァル・ノア・ハラリの著書「サピエンス全史」「ホモ・デウス」
→「人間はアルゴリズムの奴隷になっていくだろう」
→人類は、「宗教」「自由」「国家」「平等」「貨幣」「法律」など自然界に存在しない人間独自の架空の「物語(虚構)」を作りそれを全員で共有することで社会を進化させた。
→この「虚構」が人類の繁栄の源泉である。
Googleマップ、Wikipediaなどもアルゴリズム
議会が作り出したアルゴリズム=「法律」
コンピュータが作り出したアルゴリズム=「AI」
アルゴリズム民主主義下のメタバースの役割
未来の社会の「実証実験」の場になる
メタバースで試験的に仮想の社会を運営してみてから、実社会にも実装されていく。
今までは、
「メタバースが、現実世界のあり方を模倣して作られる」
これからは、
「現実世界が、メタバースのあり方を模倣して作られる」
政治の仕組みが変わる=「権力」が移り変わる
政治や国家の仕組みは、「もうこれ以上は今のままの仕組みでやっていけない」となった時にやっと変わる。
→人類が作り出した問題が人類の対応できる限界を超えてしまったときに、「アルゴリズム民主主義」は具体的に議論されていく
近未来の戦争のカタチ
単一障害点(=急所)を破壊することで、国家は崩れていく。
今現在
→各国の金融システムから締め出すことで、経済制裁を与えてる。
近未来
→デジタルインフラを破壊されることが制裁につながる。
もっと進んだ近未来(=非中央集権的な国家)
→そこに参加している人間の精神を破壊すること。(=ほぼ不可能になる)
人類に残されたフロンティアは、
➀宇宙空間
→スペースX、ブルー・オリジンが先をいっている
➁仮想世界
宇宙開発と仮想空間の開発は情報技術が相互に融合し合っている。
→宇宙開発が進んで観測データが増えれば、仮想空間もデータに連動して進化する。
スペースコロニーでの生活、成層圏から飛び出る時のGのかかり具合、重力の感覚、密閉空間での自分のストレス度合い
→これらすべてがメタバースで事前にシミュレーションできる。
宇宙の本質は物質(ハード)か情報(データ)か
「宇宙の正体は情報(データ)ではないか」
という仮説にたどり着いた。
(=アインシュタインと共に相対性理論を作ったジョン・ホイーラーの自伝)
宇宙全体の情報を解析できる計算力が手に入ったら、宇宙そのものを作ることが可能になり、逆説的に物理的宇宙の正体と謎がわかるかもしれない。
量子コンピュータ
→今までのパソコンとは、全く違う原理で動くコンピュータ。世界最速のコンピュータでも1万年かかると言われている処理を200秒で処理することができるくらい。
量子コンピュータが本格的に使えるのであれば、現実世界と遜色ないクオリティの仮想空間を作って、リアルタイムで動かすことも可能になる。
テクノロジーとAIの融合
→「AIを作り出すAI」「機械を作り出す機械」が実現できる時代に突入している。
自己進化、自己再生産、自己複製を行うようになり、生命のように勝手に進化して勝手に増殖していく性質を持ち始めることもできるようになる。
YouTubeやTikTokはユーザーの好みに合わせてパーソナライズしてくれる。
→仮想空間でも同じことができ、AIの力でマルチバースが実現できるようになるかもしれない。
仮想世界は現実世界と同水準の複雑さと柔軟性をもつ生態系に進化することで、巨大な生命のような存在に近づいていく。
バーチャル・タイムトラベル
仮想空間上では、自分の行動が3D情報として記録されていく。
→YouTubeのリンクをクリックすると何年前のものであろうと自由に時間を行き来できるのと同様に、バーチャル空間で瞬時に時間を飛び越えてタイムトラベルできるようになる。
メタバースにおける「時間」とは実際に移動できる一つの「次元」もしくは「方向」を指している。
→今までブログやSNSを見て2次元のテキストで過去の人たちの経験を想像していたが、メタバースができればまるで自分がそこにいるかのように当時に戻ってスーパーリアルにタイムトラベルを楽しめる。
リアルなメタバースの実現には、脳とコンピュータを接続する「BMI(=Brain Machine Interface)」との融合が不可欠。
BMIが一般化すると、頭で念じただけでコンピュータの操作が可能になる。
→仮想空間内で走り回ったり、誰かと話す、手足が不自由な人や障害者が世界中を旅行できる。
肉体は死んでいるのに、自分の意識は仮想空間上で残り続ける(=人工意識)こともできるようになるかもしれない。
メタバースはその人次第で、ユートピアにもディストピアにもなり得る。
→インターネットによって違法薬物の取引や詐欺、ハッキング、誹謗中傷が横行しているが、テクノロジーによって人生が救われた人も多い。
使いこなす人によって、地獄から抜け出す蜘蛛の糸にも、凶器にもなり得る。
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