【詩】 青い男
車内は怪物の腹の中みたいに沢山の人が詰め込まれていた。
そういう日に限って、電車は活発に振動する。
その振動に同調した僕の肘が
目の前の男の背中に当たった。
男はこの窮屈な車内で、わざわざ振り返って僕を睨みつけた。
その男ときたら、服もズボンも、バッグも靴も、全部青色だった。
マスクまで青かったな。
青く無い所といえば、髪の毛と肌くらい。
つまり、持って産まれた部分以外はゼンブ青で統一していたんだ。
イカれてるよな。
青色って、そんな万能じゃないんだぜ?
もちろんそんな事、口に出したりしなかったけど。
僕は『すみません』と言おうとしたけど、朝起きてから一言も発声していなかったから、口がパクパク動いただけだった。
マスクをしていたから、それすら伝わらなかったと思う。
男は飽きたように前に向き直った。
振り返ったり、向き直ったりするから、バックが周りの人に当たっていたけど、そんな事お構い無しだった。
まったく、優れた人格だと思ったね。
僕がもっと厳つくて、怖い見た目していたら、あの男の顔は真っ青になっただろうな。
そうしたら傑作だったんだけど。
そんな想像をしていると、思わず口元が緩んだ。
マスクをしていたから、それすら伝わらなかったと思うけど。
出勤時と退勤時の電車で本を読んでいます。
合計で1時間ほどでしょうか。
電車も悪くないと思っております。
先週は「キャッチャー・イン・ザ・ライ」を読んでいました。
僕の詩が、あの言い回しに影響を受けているのは明らかです。
高校生の時に1週目。大学生の時に2週目。そして社会人になって3週目。
何度読んでも面白い。あの皮肉的な言い回しが大好きなので、こうして詩の中でマネをしてみました。
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