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ぼくのポエム

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自分で書いた詩をまとめました。 過去作も含みます。 下書き的な側面もあります。 最後の方にその詩を書いた経緯なども載っています
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#電車

【詩】 仕分ける

昼過ぎに電車に乗って
スーツを着ていない社会人と非社会人を勝手に仕分ける

鞄を右肩に食い込ませ
左半身を庇っているあの男性は前者

沢山の色を取り寄せて
複雑に編み込まれた服を着たあの女性は後者

前かがみで
ゆったり頁をめくっている初老は前者で
必死に液晶画面をなぞっている少年は後者

車内の振動に抗わずに壁に身体をぶつけ
自分を罰する術を探している彼は前者

彼の直ぐ側に腰掛けて
顰め面で彼

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【詩】 人喰い駅

赤坂駅で
他人の不幸自慢を一通り聞いて
僕は電車に飛び乗った

静止から抜け出す車内で僕の意識は足元を貫通し
線路上にある己の肉片に手を伸ばした。

かつての肌色は
内側から押し寄せた赤と混じり合い
かつての体温は
摩擦熱と鉄の冷たさに上書きされ
かつての輪郭は
内部から荒々しく食い破られた。

継ぎ目と呼ぶにはいささか乱暴な断面から
微かに漏れ出すものは
身体の内側に溜め込んでいた生命活動の名残

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