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No.78、寝る前に読んではいけない「モンテ・クリスト伯」

アレクサンドル・デュマと言って知っているのは「三銃士」「鉄仮面」そして「モンテ・クリスト伯」(巌窟王)。

アニメ、映画、ドラマなど映像化で目にする機会は多く、オーランド・ブルーム、レオナルド・ディカプリオにディーン・フジオカ、甘いマスクが勢揃い。

なんとくあらすじは知っていても、いずれも原作を読んだことがない。

「モンテ・クリスト伯」を選んだのは、好きな作品やおすすめに挙げられているのを何度か目にして気になっていたから。

岩波文庫は7巻ある長編(岩波少年文庫で3巻)。いつか読んでみたいと思いつつ、なかなか手が出せないでいた。

(先月からプライベートの変化で、今まで同様のペースで読書&アウトプットができず。あとちょっとでフィニッシュ!という目前でピタリ止まってしまった。本作もその一つだったが、ようやく読み終えた✨)

長い物語ではあるけれど

読みやすく、かなりのスピードで進む。読み出すと止まらない。難しい内容はなかったので、寝る前に読む本にしていたのだが、寝られなくなることも何回か。

「物語」って楽しい!と改めて思わせてくれた。映画「ネバーエンディング・ストーリー」の主人公バスチアン少年が屋根裏で毛布を被りながら夢中で本を読んでいるシーンを思い出したり。

ちなみにこの映画の原作はミヒャエル・エンデ「はてしない物語」。大人になってから「モモ」と一緒に読み返したが十分面白い。気になる人は是非✨

大体こんなお話

ネタバレになるので、細かい紹介はしないでおきたい。

ーーー

主人公は船乗りエドモン・ダンテス。裕福ではなかったが、つつましくも幸せな生活を送る青年。心を通わせている女性との許嫁式で事件は起きた。

人生は急転直下。重大な政治犯の獄として使われるイフの城塞、シャトー・ディフの暗牢へ閉じ込められてしまう。

シャトー・ディフPublic domain, via Wikimedia Commons

だが、そこで運命を変える出会いが待っていた。

所々挿話を挟みながら、物語は船乗りエドモン・ダンテスから、大金持ちで変幻自在のモンテ・クリスト伯に引き継がれる。

モンテ・クリスト伯による「神の摂理」と称した復讐劇が始まる。

復讐劇だけではない

よく“復讐劇”とは称されるけれど、サスペンス的な要素はない(苦手な人も安心して読める)。むしろ、神によって作られた完璧なはずの人間が、愚かな行いをするありさま、その人間模様がありありと描かれていると思った。

愚かな人間に神の裁きを

幸せな未来が待っていたはずだった。何も思い当たる節はないのに、欲深い人間の罠に落ち、明るい人生が突然真っ暗に。

本作では、愚かな人間に裁きを与えるとして、神が多く引用される。復讐の鬼と化したモンテ・クリスト伯は、“神の摂理“において復讐を行っていく。

私は神の摂理そのものになりたい。この世において最も美しい、偉大な、崇高な事は、自分の手で賞罰を与え得ることに他ならない。

(中略あり)

無実の人間を陥れた者には、相応の罰が与えられるのは当然だと考える。復讐は正当化され、恐ろしい悲劇が次々起こる。

人間は欲のためにどこまで卑劣になれのるか。また、復讐を果たした後の虚しさまでも描かれる。

1度死んで生まれ変わる

エドモン・ダンテスはシャトー・ディフの要塞に閉じ込められ、自分の人生は終わったと絶望する。そこでの運命的な出会いが、彼の人生を大きく動かすことになるのだが。

一遍でも自分の命を投げ出してみますと、自分と他の連中と全く段違いなものになります。自分の力が10倍になり、自分の世界がぐっと開けたような気持ちになります。

(中略あり)

1度死んだものと思ってやってみる。今までの自分と決別する。何か大きなことをする、大きなものを掴む、そのためには死んでみる程の覚悟がいるのかもしれない。

待て!しかして希望せよ!

モンテ・クリスト伯の意志のこもった言葉。

この世には、幸福もあり不幸もあり、ただあるものは、1つの状態と他の状態との比較に過ぎない。極めて大きな不幸を経験したもののみ、極めて大きな幸福を感じることができる。生きることのいかに楽しいかを知るには、一度死を思ってみることが必要。

(中略あり)

いくら死を思っても死んでは何もならない。ぐっと堪える。そんな時に人を前に進めるのは希望かもしれない、そんな事を思った。

「待て!しかして希望せよ!」

力強い言葉だ。「希望」とは何か薄っぺらい、ちょっと恥ずかしいぐらいの言葉かもしれないけれど、実際「希望」がなくては心が動かない。

最近読んでいた「星の王子さま」でも実は同じようなことを思った。「1番大切な事は目に見えない」というセリフが有名だけれど、今の自分に刺さるのはこの言葉。

「人はみんなその人なりの星を持ってる」
「旅をする人なら星は案内役」
「空を見上げた時、どれか一つの星に僕(王子さま)がいると思ったら素敵でしょ」

最初の星、とは「希望」ではないだろうか。

復讐劇は読みどころの一つだが、人間とは、人生とはなど、大きな枠も描かれていると思う。

学んだ言葉

作者デュマがナポレオン黄金時代に生まれ、幼い頃からかの英雄伝説を耳にして育った事もあってか、本編は、ナポレオン派か王党派か、が序盤の重要な分れ目になっている。

ちなみに、ナポレオン栄光後、流されたエルバ島から秘密裏に脱出し、再び帝位につく。その後のわずかな支配が有名な100日天下。この辺りも物語に登場。

さて、改めて調べた言葉は次の通り。

テルミドール
・フランス革命暦(後ナポレオンが廃止)で「熱月」の意味
・ロベスピエール派に対するクーデター
・ロベスピエールは逮捕されギロチンで処刑
・実質的なフランス革命の終焉
(ご参考)スタンダール「赤と黒」


カリオストロ
・ルパンではなく、実在した稀代の詐欺師
・医師、錬金術師、山師など多くの肩書きを持つ


ユゴリノの塔(ウゴリーノの塔)
・ウゴリーノが投獄された塔、憂の牢獄
ダンテ神曲」の中で、ウゴリーノは祖国への反逆や、投獄され食糧を絶たれた後、飢えて自分の子供達を食べた悪業で罰を受けている
・上野の国立西洋美術館前、ロダン地獄の門」にも描かれる

以上、
また後日「鉄仮面」やデュマ息子作「椿姫」も読んでみたい。

岩波文庫100作チャレンジ、残り22作🌟



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