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生活は続く

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哀歌

哀歌

子供を迎えることに何か(よく言われるのは自分の老後の世話とか)を期待する心が自分の中に僅かでもあったなら、もしくは今後そんな心が僅かでも芽生えそうであれば、私は迎える為の一切の選択をしないと決めている。
生まれてくれるだけで、そして生きてその人なりの幸福を求めてくれるだけで十分。私が願うとするならそれだけでありたい。

もしこれから私を親とする人(血縁も籍も関係なく)と出会えることがあったとしても

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健康な人間

健康な人間

「法則性や確かな答えを求めていくことに楽しさを感じる。文学や哲学といったものの楽しさ、何のためにそれがあるのかも俺にはわからない。君は病んでる。」

私が自分の関心や感覚を明かしてみると決まって「病んでる」と返って来る。ずいぶん昔からそうだ。
自分ではその指摘を信じようとしなかったが、本当はもっと前に適切な「治療」を受けるべきだったのかもしれない、と不意に胸の扉が揺れた5月12日の昼。
モーニング

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お前を呪っときゃよかった

お前を呪っときゃよかった

 疲れた。疲れた。
働くことが好きじゃない。世界はわからなくて怖い。
未だに中二病だよ。君の痛々しさなんてまだ序の口さ。と、15年前の私の肩を叩く。
そうあの時、そんな大人が本当は欲しかった。

 職場に鎮座する私にとっての理不尽の塊とは冷戦状態へと突入した。
基本的に誰かを嫌いとか好きとか自分から思うこともないが、自分より上の立場の人間が「尊敬に値しない」と感じるとものすごい速さでその人への感情

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こうふく論

こうふく論

 どうやら疲れているらしい。
同じ職場の人間も、上司たちも、私の業務について何とも思っていないようなのだが、これは果たして一人の新人がこなせる量と質の仕事なのだろうか。そんなこと考える余地もなく、捌ききれない仕事を前にして思うのはこうだ。

「私は普通のこともできやしない」

 若いが、若くはない。
不登校から社会に馴染めずにきた。“普通のことができない”ずっとそうだった。普通に学校へ通えなかった

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思いだした。

思いだした。

 幸せになりたいなどと、願ってはいけないんだ。時々ギュッと握り締めて、その棘で掌を血塗れにしないと忘れてしまう。そういう所まで癒えてきてしまった。死ねないのなら、癒やされて生きざるを得ないのだ。そんなことよくわかっていた。だから、食べたり眠ったり笑ったりできなくなった。死にたかった。しかし色んな人に助けられながら結局死ねずにまたこんなにまで私は私を回復してしまった。わからない。

 私は罰を受ける

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独裁者スイッチに腰掛けて

独裁者スイッチに腰掛けて

 何を信じていいのかはわからない。
ねむれない。今日は仕上げなければいけない仕事がある。今日こそはやらなければならない。休むことはできない。それどころか日が昇るより前に出社してやらないと無理かもしれない。私の出来が悪いからだ。土日結局何も手につかなかったし、後へ後へと回したツケを自分で払うことに苦しんでいるだけである。

 あの人は言った。障害が子供に遺伝するかもしれないから、と。だから…───そ

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一切皆苦。

一切皆苦。

 寝床でスマホを眺めていた。すると急にぐらぐらと揺れ始め、地震だろうかとじっと身構えて部屋の様子を見る。揺れが大きくなる気配はないがまだ揺れている……まだだ長いな………しばらくしてふと気付く。感じる揺れより激しくスマホを持つ手が震えている。そうか、揺れているのは世界じゃなくて私か。それを認識した途端ガタガタと手が震えてスマホを持っていられなくなった。そういえば、この1日半みかん1個しか食べていない

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