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書評 『神よ、ペップを救いたまえ。』(マルティ・ペラルナウ (著), カンゼン、"The Pep Revolution”②

サッカー・ファン必読書である。今や世界で知らぬ者はいないであろう名将ペップ・グアルディオラの全貌が分かる本である。著者は、マルティ・ペラルナウ。ペップから絶大な信頼を得て、文字通りクラブ内へのフル・アクセスを許されているジャーナリストである。

さて、前回の記事からの続きである。私は、まだ2年目のリーグ戦100ポイントをあげた2017年ー2018年シーズンまでしか読めていない。楽天Koboで読んでいるのだが900ページある(2シーズンで220ページである。)

しかも、かなり戦術的な話が出てくるので1段落も読み飛ばせない。かなり、濃密な本である。しかし、これがペップの頭の中なので、ペップについて知りたければ仕方がない。例えば、ウィトゲンシュタイン哲学の概説書だと思えば納得して頂けるだろう。この本は、ペップ「哲学」の概説書である。そこで、いくつかのポイントをあげておきたい。

まず、我々はフォーメーションについて、既成概念を疑わなければならない。私は、いつも思うのだがポゼッション率の高いチームの選手のポジションは、守備セット時のポジションよりポゼッション時のポジションで表さなければならないのではないか。

ヒートマップを見るとフォーメーション図と全く違う。例えば、シティなど80%のポゼッションを示すが、90分中、4人のデフェンス・ライン(4−3−3)が形成されることはあるのであろうか?

そのことを改めて認識させられた。この本で出てくる数字の並びは、例えば4−3−3ではなく3-2-2-3や、2-3-2-3である。CB二人、"Inverted Fullback"(いわゆる偽SB)二人、ピボーテ一人、"Atacking MF"(いわゆるインサイドハーフ)二人、ウィング二人、"False Nine"(偽9番)である。そして、ペップは"Inverted Fullback"(いわゆる偽SB)をMFと呼ぶことを提案している。

ポジション名であるが、翻訳書はどのように訳しているのかは分からないが、誤解を避けるため、私はこの本で書かれている通りに訳さず書いた。釈迦に説法であろうが、説明しよう。

Inverted Fullback プレミアリーグでは「サイドバック」のことを「フルバック」と呼ぶ。「インバーテッド」とは、簡単に日本語でも使う「コンバート」と「イン」を合わせた単語と考えて欲しい。ここで重要なのが、このポジションは、「サイドバック」とは全く違うポジションであるということである。すなわち、既にミッドフィールドに「コンバート」されている、ということだ。

② Atacking MF 完全な自由を与えられているポジションである。ペップのサッカーは、必ずウィングやMFの極端なまでに横幅を取らせる。その広げたスペースを自由に動いてプレーメイクするのが、AMFの役割であるベルナルド・シルバデ・ブライネを思い浮かべて欲しい。

具体的に当時の選手で言うと、CB2枚(ストーンズ・オタメンディ)-MF3枚(ウォーカー・フェルナンジーニョ・デルフ)ーAMF2枚(ギュンドアン・シルバ)ーFW3枚(スターリング・デブライネ・サネ)である。また、1−4−5というシステムも出てくる(5−4−1ではない。)つまり、CBをストーンズ一人にする。

詳しくは、本書を読んでほしいが、バイエルン時からの変化は、"Inverted Fullback"(いわゆる偽SB)を二人にすることである。プレミアのカウンターアタックは、ブンデスリーガと比較すると、サイドからのアタックが多いため(守備時、サイドにトップを配置する)、カウンター対策としてもう一枚これを守る選手が必要になったからである。

もう一つの驚くべき「概念」は、「ボールは常に自らが所有している」という考え方である。いわゆる、「攻守の4局面というものは存在しない」という考え方である。私には、うまく解説できないので本書を読んで頂きたいが、私なりの解釈では、常にボールに対して能動的(iniciate)動くということであろうか。

我々が、サッカーを観るときの視点は両チームを行ったり来たりしていないだろうか。つまり攻撃、守備、攻撃、、、、と。これは、実況と解説がそのように喋っているので誘導されるのは仕方ないと思う。しかし、これを一選手の視点に絞るとその選手はボールに対して、攻撃・守備と頭の中で切り替えるより、一つの流れとして自分のするべきことがフローすると考える方がプレーしやすいのではないだろうか。

私は、サッカーを遊びでしかプレーしたことがないので、うまく説明できないので、申し訳ない。

以上は、ペップ2年目までである。この後、いよいよリヴァプールとの戦いとなると思う。(前回の記事を下に貼っておく)

今、調べたら翻訳書の出版が明日になったみたいだ。ぜひとも手にとって頂きたい。後半部もざっと読んだのだが、いよいよヘッドコーチが、アルテタに変わり。その後、戦術家のリージョ元神戸監督が、コーチとして加わる。
この本は、戦術等の解説は、主に「ヘッドコーチ」に質問する形になっている。そのため、ヘッドコーチの個性も一つの楽しみである。


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