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いろんなローカル大麻ブランドが勢揃い!

『農業館陳列品要覧』(昭和九年/神宮徴古館農業館)

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『農業館陳列品要覧』は昭和九年に神宮徴古館農業館が発行した本だ。神宮徴古館農業館に聞き覚えがなくても「伊勢神宮の」といえば何となく関心をもってもらえるだろうか。

「神宮の博物館」(http://museum.isejingu.or.jp/index.html)から引用すると神宮徴古館は「明治42年に日本で最初の私立博物館として創設された伊勢神宮の〈歴史と文化の総合博物館〉であり、神宮農業館は「天照大神と豊受大神の御神徳を広め、〈自然の産物がいかに役立つか〉をテーマとした日本で最初の産業博物館」であり、「皇室から賜った品や伊勢神宮のおまつりで神様にお供えする神饌(しんせん)を始め、明治時代の内国勧業博覧会(ないこくかんぎょうはくらんかい)などに出品された産業資料」などを展示しているようだ。

そういった意味では『農業館陳列品要覧』は、伊勢神宮が集めた明治〜昭和九年の世相が見えてくるちょっとワクワクする資料だ。(了)

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そんなわけで、神様、皇室、伊勢神宮、そして「自然の産物がいかに役に立つか」がキーワードに出てくる博物館、そして陳列品、簡単にいえばその総目録に「大麻」が無い理由はない。などさまざまな中で「靭皮繊維(じんぴせんい)」のひとつめの項目に大麻がある。例えば、〈岡地麻 竹引製 下野上都賀郡粟野産 一把〉といったように「名称」「製造法」「産地」「数量」を明記しつつ数多く掲載されている。それらを列記してみる。

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〈岡地麻 竹引製 下野上都賀郡粟野産 一把〉
〈板束麻 同製 下野上都賀郡美野産 一把〉
〈引束麻 同製 下野上都賀郡上久我産 一把〉
〈野州麻 同製 大隅肝付郡鹿屋産 一把〉
〈小入麻 同製 上野吾妻郡岩島産 一把〉
〈山束麻 同製 下野上都賀郡粟野産 一把〉
〈岡束麻 同製 下野上都賀郡南摩産 一把〉
〈永野麻 同製 下野上都賀郡永野産 一把〉
〈引田麻 同製 下野上都賀郡大盧産 一把〉
〈金引麻 越後北蒲原郡長浦産 一把〉
〈大麻 引束製、下野上都賀郡加蘇産 一把〉
〈縮麻 青金引製、信濃産 一把〉
〈扱苧 水製、豊後日田郡大山産 一把〉
〈熊苧 同製、肥後球磨郡大村産 一把〉
〈小田苧 安藝産 一把〉
〈伊北麻 水製、岩代南會津郡荒海産 一把〉

といった16種類の大麻の繊維、そして、
「大麻織物製造工程標本」(北海道産 一組)、
「蚊帳生地見本」(越前今立郡岡本産 五枚)、
「網絲」(信州鹿子麻製、野州岡地麻製 二種)、
「帳絲」(野州麻製 一玉)、
「畳絲」(信州山中麻製 一把)、
「大麻製弓弦」(名古屋産 一筋)、

「苧引板」(一個)、
「金引具」(麻扱用 一個)、
「麻引舟圖」(一枚)、
以上三点は岩代南會津郡伊北麻製造具、

「麻切包丁」(下野上都賀郡鹿沼産 一挺)とあり、それ以降は苧麻の項目へ繋がっていく。

さて、これだけを見てもさまざまなところが大麻の産地だったのだなぁ、ということはわかるし、いろいろな名前で呼ばれていたことがわかる。それらの土地土地は今でも大麻との関わりがあるのだろうか、痕跡はあるのだろうか、息遣いを感じることはできるのだろうか、、、。

そしていくつかの疑問点も出てくる。産地そのものの名称を使っているパターンと大麻の形状を名称に使っているパターンがあることはわかる。そして竹引製ってことは竹で精麻を作ったんだなぁ、青金で大麻を引くんだなぁはフワッとわかるが水製って何?あいうえお順でもイロハ順でもないこの並びは何?熊苧ってなんだっけ?などなどさまざまな疑問が湧いてくる。それらについては追々ひとつひとつ調べていくことにして、まずは一読した印象をまとめる。

「野州麻」といえば、栃木県の大麻を指し示すものだというのが2020年令和二年の現在、大麻を知る大多数の共通の認識だろう。僕にとって例えば中国産の「野州麻」などはありえないし、本書で出てくる鹿児島産の「野州麻」なんてものは詐欺以外のなにものでもないくらいのイメージがある。〈野州麻 同製 大隅肝付郡鹿屋産 一把〉ってなんだ?「大隅肝付郡鹿屋」は「おおすみ きもつきぐん かのや」と読むのだけれども、これは僕の故郷、鹿児島の地名だ。鹿屋に野州と名のつく場所は見つけられなかった。
ここではあまり触れずに別の機会にするけれども、別の資料でも栃木県鹿沼産に代表される日本産大麻の総称として「野州麻」という名称が使われていた。さまざまある大麻の中でも国産の高級大麻=野州麻という感じだ。

大麻産業の退化

本書の出た昭和九年当時、大麻は今でいう地域ブランド化が進んでいて、細分化されている。例えば「日本茶」。お茶といえばなんとなく緑茶をイメージするのだけれども、お茶にもほうじ茶や紅茶もあるだろうし烏龍茶やらプアール茶やら神目箒茶などさまざまな種類がある。その中で緑茶だけを取り出してみても静岡茶、鹿児島茶などなどさまざまだろう。さらに、例えば鹿児島茶と一言で言ってみても、そこには溝辺茶、霧島茶、知覧茶、川辺茶などなどさらに細かく分類されブランド化が進んでいる。ブランド化の進む以前は鹿児島で収穫されたお茶は日本最大の茶所である静岡に送られて、最終加工地である静岡産として全国に流通していたことは都市伝説ではない。需要と供給のバランス、消費者のニーズがなければ産業は成立しない。それは牛といえば松坂といった風にお茶といえば静岡茶が一番という時代が長く続いたのだ。産地偽装、あるいは生産地や最終加工地の問題はさまざまな産業で問題になっているのだけれどもここでは論じない。

どこでも、日本中で、というわけではないけれども、それでも本書を見るだけでも北は北海道から福島・栃木・新潟・長野・熊本・鹿児島・愛知・大分・広島など各地から大麻と大麻関連のアイテムが集まっている。

「大麻織物製造工程標本」「蚊帳生地見本」そして「麻引舟圖」は是非実物を見て他の資料と照らし合わせたい。

情報をお持ちの方は是非m(__)m

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まっつん(Yosiki Matuura)
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