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喫茶ぼん

高校二年の夏、「ミュージシャンに俺はなる!」と決心した。
それはそれは強い決心だった。
そこで早速行動に移した。
俺はせっかちなのだ。

ミュージシャンになるのに必要なもの、それは楽器だ。
隣町の楽器屋にケッタマシーン(愛知県の方言で自転車のこと)をぶっ飛ばして行き、ギターの値段に驚愕した。
そのタイミングで同級生キンヤが「アニキの高級ギターを二万で売るよ」と言ったので「それ、とっとけよ」と言っておいた。

バイトをせねば

日曜日以外は9時間授業という鬼の特別進学クラスにいたため、日曜しかバイトが出来ない。
日曜日だけバイトが出来るという条件で探したのが、隣町のデパートの西館と東館の連絡通路手前にある「喫茶ぼん」という喫茶店。

早速面接に行き、即日OK。
履歴書なんか無し。

時給450円で昼飯付き。

エプロンに「よっちゃん」という缶バッヂの名札を付けさせられ、リーゼントのウエイターがホールデビューした。
…が、あまりの愛想の悪さに、すぐに皿洗いに転向させられる。

店内には有線放送がかかっているのだが、当時は工藤静香の「MUGO・ん…色っぽい」が大ヒットしていて、一日中かかっていた。

2か月ほどバイトして目標金額を達成し、キンヤからギターを譲ってもらった。
後で判明したが、ノーブランドの超安物ギターで、しかもアニキに内緒で俺に売ったらしい。

俺は思い切りキンヤを殴った。

その後、ギターは早々に挫折したが、ミュージシャンはギタリストだけではない。
他の楽器でも何でもいいのだ。
とにかく「ミュージシャンに俺はなる!」と決めたのだ。

そして俺はミュージシャンになった。

その間の話はまたいずれ。

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黒柳 能生 公式note
みなさんのお気持ちは毛玉と俺の健全な育成のために使われます。